クイック・データアナリシス

 今日、30名ほどの人々に基礎的なデータ処理の話をする。標準偏差、相関係数、正規分布、推定、検定などの内容について、Excelとプリントを利用しながら、2時間半でエッセンスを伝える。
 話の最後に紹介したJavaScript-STARには、簡便に結果が出るため、特に皆が関心を持ってくれたようだ。JavaScript-STARは、特別な数式を使うことなく、枠に数字を入力するだけで検定結果が出る優れたフリーソフト。Web上からも入力でき、結果がすぐに返ってくる。
 「クイック・データアナリシス」はJavaScript-STARの様々な活用例が載っている。ユニークな例題とノリのいい文体で、楽しくラクにデータ解析が体験できるポップな統計書。
 

クイック・データアナリシス―10秒でできる実践データ解析法
田中 敏 中野 博幸
4788509199

統計のはなし

 大村平氏の数学の本は、本当に分かりやすい。様々なたとえを用いて、丁寧に数学の考え方を語りかけてくれる。
 この「統計のはなし」は、やや難解な統計の手法をも、ユーモアとこなれた言葉でナットクさせ、至芸といってもいい名調子。
 実験計画法や品質管理など、著者の専門を背景に語られる箇所もあり、親しみやすい割に内容は濃い。
 ごく一般的な統計の本を読んで、どうもよく分からないという箇所が、この本で氷解した部分もある。分かりにくいところをどう教えるかを、著者は相当深く考えたに違いない。幅広い教養と深い体験、そして教育への情熱があって初めて著しえる本だと思った。
 統計を学び始めた人はもちろん、統計を教える人も、必ず参考になるだろう。

統計のはなし―基礎・応用・娯楽
大村 平
4817180102

推計学のすすめ

 昭和の時代に買った本で、全体が茶色くなっていた。データ処理の講義のために紐解いてみると、本当によく書けている本だ。「パン屋のインチキをあばく話」「ショウジョウバエが酒を鑑定する話」「美人コンテストの審査員の話」など、興味深い話題から具体的に推計の手法を解説している。
 昭和43年初版であり、講談社ブルーバックスの古典といってもいい本であるが、今なお推計学の基礎をこれほど分かりやすく書いてある本は少なく、統計関係の良書と言える。

推計学のすすめ―決定と計画の科学
佐藤 信
4061177168

ゼロから学ぶ統計解析

 『数十分のテストで成績を付ける。
  数ヶ月のお付きあいで結婚を決意する。
 おかみさんは、味噌汁を作るとき、よくかき混ぜてから、ほんの一口の味見で、味噌汁の味を決めています。このように、
     一部から全体を推し測る
こと、これこそが、統計学の任務なのです。』

 平治親分の語りはホントうまいなあと、感心してしまう(著者の小寺平治氏は、自分で愛称平治親分と言っている)。具体例を基に、数式もきちんと入れて統計処理の考え方と技法を語っている。そう、天下り的な説明ではなく、「語り」に近いのだ。理論と思想をきちんと踏まえた上で、具体的な例から語れる人は、数学では本当に貴重だと思う。それができる教育者を増やすことが、今の日本ではとても大事な課題だ。

ゼロから学ぶ統計解析
小寺 平治
4061546562

3日でわかる確率・統計

 3日でわかるかどうかは別にして、確率・統計の考え方が具体的によくまとめられている。2ページを基本として、ポイントを押さえてかみ砕いて説明されている。
 著者の小林道正氏は、大学の先生だが、分かりやすい本を多方面にわたり数多く書いており、文章もこなれていて読みやすい。
 数学と社会を結ぶ実例として、また、実際に身につけるべき内容として、確率・統計はもっと学校教育でも比重を増すべきだ。

 3日でわかる確率・統計
小林 道正
4478820074

初めて学ぶ統計学

 データ処理を理解してもらうための本を探したが、なかなかこれという本が見つからなかった。統計についての本は、数式が多く難しい割に具体例が少ないか、逆にコンピュータでExcelなど表計算ソフトに数値を入力してインスタントに結果を得る方法が説明してあるが、数学の裏付けにあまり触れていないかの、どちらかに偏っていることが多い。

 書店の本棚にあった統計学の本を手当たり次第にめくっているうちに、一冊、いい本に巡り会えた。書名は、現代数学社の「初めて学ぶ統計学」。

 数式を掲げた後に、それを用いた具体例が載っており、バランスのとれた本である。考え方やポイントがよくまとまっており、学習者への配慮がよくなされている。データ処理の基本を学ぶには、好適な一冊。

初めて学ぶ統計学

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割り算

 今、小学校2年生の息子に4年生の算数ドリルをさせている。やはり、4年生の算数は、小学校での大きなポイントとなる。warizan001

 特に、「2桁で割る割り算」が大きな意味を持っている。筆算の過程で足し算、引き算、掛け算と、今まで習った全ての計算を使う。889÷28 の筆算を例にとると、まず 88÷28 を考えるのだが、ここで、8÷2の経験から、4を立てて進めると引き算が出来なくなるので、3を立てる。28×3=84 を88から引いた4の横に、889の9をおろし、49÷28を行う。このように、「立てる→掛ける→引く→おろす」という、いままでより複雑な手順を踏むことと、機械的に答えるのみでなく試行錯誤が必要となることが、同時に出てくる場面である。ここを乗り越えることで、総合的な計算力が身につくと共に、自信を持つことができる。逆に、ここでつまずく可能性も大いにあるのだ。

 他にも、このドリルでは、100マス計算、商と余りの計算(1ページに50問)、3桁×3桁の計算、4桁÷2桁の割り算、小数の計算、何兆何億という大きな数の扱いなど、多彩な内容がある。本当にやり甲斐のあるドリルだが、なんとかゴールが見えたところだ。

新課程学力ドリル計算 (小学4年生)
前田 昌彦
4883133257

ドナルドのさんすうマジック

 ディズニーのおなじみキャラクター、ドナルド・ダックが数学の不思議を紹介する短編映画「ドナルドのさんすうマジック」。黄金比が、建築物や音楽、自然界に溢れていることを紹介する部分は、アニメーションのプロの技をもってすると、数学がこんなに生き生きと描かれるのかと感嘆した。

 数学というと、一般には、なんだか構えてしまう雰囲気がある。もっと自然に、数学が社会とかわっていることが様々な場面で示されるといいのだが。

とっておきの物語 / ドナルドのさんすうマジック

MuPAD

 MuPAD について最初に知ったのは、土基善文氏の「xのx乗のはなし」という本であった。現代数学社の「理系への数学」誌に書評を載せるために読んだのだが、その中にMuPADの図が描かれていた。教育関係であればフリーに使えるということに惹かれた。自分は、Mathematicaを10万円以上出して買ったため、同様の機能があってフリーというのは、いろんな意味でたいへんなことであった。
sinrot  MuPADは、優れた数式処理システムであり、フリーのLight版は、インターフェースこそ貧弱であるが充分利用価値のあるソフトである。
 MuPADを解説した日本語の書籍は、1年前までは赤間世紀氏の「はじめてのMuPAD―MuPAD Pro2.0 for Windows」しかなかったが、昨年末に、生越茂樹氏の「基礎からのMuPAD」が出版された。同氏のサイト「高校生のためのMuPAD」が基になっている。例題も豊富で、数学に興味を持つ高校生にとっても、刺激を受ける部分が多いと思う。プログラミングは、おそらくスペースの関係で掲載できなかったのであろうが、その入り口でも触れてあれば、よりベターかと感じた。
 数式処理を手だてとして、数学で様々な表現を試みる環境ができ、数学に関心を持つ層が厚くなっていくことを切望している。

4777510840 基礎からのMuPAD
生越 茂樹

453560844Xxのx乗のはなし
土基 善文

数式処理

logob  高等学校の先生を対象に、数式処理の講義を行う。まず、日本語版LOGOである「ロゴ坊」を紹介する。

 くりかえせ 4 「まえへ 100 みぎへ 90」

で四角が書ける。同様に、三角形など、他の図形を書くことを試みてもらう。そして、円は、どうすれば書けるかを考えてもらう。

 くりかえせ 360 「まえへ 1 みぎへ 1」

のような命令で描けることを、こちらから教えるのではなく、子供たちが自分で考えていくことが重要である。自分で描き方が見つかれば、円は正多角形の極限であることが自然と捉えられるであろう。また、タートルは常にその瞬間に向かう方向を示している。円が描けた後で、前に進ませれば、それは接線の方向を表している。つまり、タートルの存在そのものが微分概念を内包しているのだ。このように、LOGOは、数学の概念形成につながることを伝える。

 次に、数式処理ソフトの紹介をする。
   factor(a^2-b^2)
と命令すると、aの2乗マイナスbの2乗を因数分解し、
   (a-b)(a+b)
と出力してくれる。

 以前、自分はMathematicaを用いて高校数学を学ぶ本「Mathematicaでトライ! 試して分かる高校数学」を現代数学社から出版し、その内容を高校の授業で実践したことがある。

 今回は、教育機関では無料で利用できる数式処理ソフトMuPADを用いて、試行錯誤的に数学を学ぶ課程を、高校の先生方に体験してもらった。自ら数式処理という新しい内容を、テキストに沿って個別に学ぶことで、従来の例題の解法を示し類題を解かせるという形とは違った方法を体験し、それを授業づくりに生かしてもらうことにした。試行錯誤を取り入れた数学の授業の指導案を作成してもらい、1日の講義と演習を終えた。
 各人ごとに課題を持ち、探求していけることが、数式処理ソフトのよさだ。

試して分かる高校数学―Mathematicaでトライ!
大塚 道明
4768702872

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