基礎がため100%中1数学(計算編)

 小学校から中学校に上がった段階で、学習につまずいたり、学校に適応できなくなる生徒が増える「中一ギャップ」が盛んに言われるようになった。特に、中学校数学についてはギャップを感じる児童生徒が多いようだ。小学校6年生まで算数が好きである児童の割合と、中学1年生になって数学が好きである生徒の割合を比較すると、急激に落ち込むことが示されている。
 ひとつには、文字式の扱いなど、いままでより抽象的な思考が求められ、それになかなか習熟できない生徒が増えることも一因だろう。長男に取り組ませてみたところ、正・負の計算、文字式の計算には、慣れるまでかなりの時間がかかった。正・負の計算では、小学校で習った分数・小数の計算がいっぺんに登場するため、その定着がはかられていない場合には、相当苦労することが感じ取れた。文字式の計算になると、さらに複雑さが増していく。「マイナス符号に注意」「文字をつけ忘れない」このことを何度繰返し言っても、なかなか身に付かない。2ヶ月かかって一次方程式を応用も含めて一通りこなし、120ページの計算編を一冊終える頃になり、ようやくミスがなくなってきた。とにかく、中一数学の習熟には練習がかなり必要であることをまざまざと感じた。
 取り組ませるにあたり様々な問題集を比較したが、「くもんの中1数学計算編」は、スモール・ステップで問題が配列されており、基礎を固めるには適していると感じた。

くもんの中学基礎がため100%中1数学 (計算編)
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Mathematica 方法と応用

 数式処理ソフトMathematicaの解説書として、不動の地位を占める著作。Mathematicaの柔軟性と適用の広さを豊富な事例で示し、数学を体験的に学ぶ書ともなっている。入門から熟練者まで、それぞれの段階で役に立つ。
 訳者の思い入れのあるあとがきも、この書の重さを物語っている。
 「本書は計算機科学の本として、第一級の本となってしまった。」

Mathematica 方法と応用
J.W. グレイ John W. Gray 時田 節
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算数文章題ドリル

 小学6年生の算数文章題ドリルを息子がやり終える。小学5年生、小学6年生のドリルに、それぞれ2ヶ月間を費やした。
 小学5年生の算数では、「小数の掛け算・割り算」、「割合と百分率」が大きなポイントである。
 「定価3600円の品物を2割5分安くしてもらいました。いくら安くしてもらったのでしょう。」
など、日常生活に直接関わる内容だが、習熟をするためにかなりの時間を割く必要がある。息子が取り組んだドリルは、比較的やさしく、分量も多くない。それでも、一冊の内容にはかなりのボリュームを感じた。
 小学6年生の算数では、通分が必要な「分数の足し算・引き算」、「単位あたりの大きさ」「速さ」などがポイントで、この部分が定着していないと、中学の数学で苦労するだろう。
 ドリルでは、「単位あたりの大きさ」を例にとると、
「ノート3さつを330円で買いました。1さつあたりいくらでしょう。」
から始まり、
「江戸時代のある年の米の生産高は約27億6900万kgでした。人口は約2500万人でした。同じように分けたとしたら、1人あたり何kgになるでしょう。3けたのがいすうで表わしましょう。」
といった問題まで、段階をふんでおり、バラエティに富んでいる。
 5年・6年を通して、「単位あたりの量」の考え方がずっと底に流れており、繰返し現れる。基準を何に据えるかということは、文・理を問わずあらゆることに繋がる。その意味でも、算数のこの部分は極めて重要である。
 また、小学5・6年生の算数は、理科や社会との関わりを持たせることで、かなり広がりのある学習になるのではないか。

新課程 学力ドリル
算数文章題 小学5年生

桝谷 雄三
488313332X
新課程 学力ドリル
算数文章題 小学6年生

桝谷 雄三
4883133338

博士の愛した数式

 80分しか記憶がもたない博士と、世話をする家政婦、その息子の交流を描く小川洋子の小説「博士の愛した数式」。博士が示す数の持つ美しい性質を軸に、静かな筆致で三人のやりとりが綴られる。
 記憶を失う運命を背負いながらも、数論に向き合い、子どもに愛情を注ぐ博士の純粋さに、清廉な暖かみを感じる。
 推理小説などに、数学の問題や数式が現れることがあるが、とってつけたような形になることが多い。しかし、この小説では完全数やオイラーの公式などが必然であるかのように登場し、文学との整合性を欠くどころか、味わいのある文脈の中に取り込まれている。
 人々のやさしさと数式との幸せな出会いにふれ、読後も清々しさが残った。

博士の愛した数式
小川 洋子
4101215235

偶数+偶数

 小3の息子がやっている算数ドリルで、「2+5=7」などの式があり、それぞれの数の下にある( )に偶数か奇数を書き入れる問題があった。「偶数+奇数=奇数」などを意識させる問いだ。偶数、奇数は、余りに着目して整数を分類する、「剰余類」という大事な概念にふれる内容だ。
 息子は、この問題をやった後、
「五千の偶数と五千の偶数を足すと何になる?」
ときいてくる。
「…それはやっぱり、偶数になるんじゃない。」
と答えると、息子が言うには、
「…万偶数(マングース)…」
「ムキャー!!(のだめ調)」

授業研究に学ぶ高校新数学の在り方

 高校数学の問題や課題について、数学教育者、数学者それぞれの立場で述べられた本。授業の実践事例が、検討会の様子もふまえて載せられており、参考になる部分も多い。
 高校数学については、目先の問題をどう解かせるかに汲々として、授業の方法を突き詰める場面が小中学校に比べて少ないように思う。授業研究を通して、高校数学教育の在り方がもっと討議されることが必要と感じる。何のために数学を教えるのか、その原点を改めて考えるよいきっかけとなった。

授業研究に学ぶ高校新数学科の在り方
長崎 栄三 吉田 明史 渡辺 公夫
4185086180

GRAPES

 “GRAPES” 、一粒一粒がつややかに実った葡萄のように、作者が慈しみながら育てあげてきた思いが伝わるソフトである。インターネットに公開されているフリーソフトで、容量は本体とサンプルで1枚のフロッピィデスクに収まる大きさ。実際に操作し、サンプルを見ることで、サイズは小粒ながら意外な広がりを持ったソフトだと納得できるだろう。

X2bx  例えば、「陽関数」の「作成」ボタンを押し,x^2+bx と入力するだけで、パラメータbを表す欄が自動的に作成される。このbの値はマウスでクリックして増減させることができ、それに伴ってx^2+bxのグラフも移動していく。式を入れるだけでパラメータをすぐに操作でき、グラフがすっと動く軽快さが心地よい。

Trochoid  描いたグラフの拡大・縮小・移動なども任意の範囲を指定して手軽にできる。陽関数以外にも陰関数や、極座標関数、図形など、様々な対象を描画できる。また、簡単なプログラミングができ、関数を用いたアニメーションを効果的に見せる表現力も豊かである。これだけの機能を持ったソフトを無償で提供している友田勝久氏に敬意を表したい。

 昨日、パイオニアのプラズマ電子情報ボードを使って、GRAPESを利用した数学の模擬授業を行った。指で画面をなぞるだけで、座標の移動や拡大・縮小がいとも手軽にできることを生かし、2次関数と微分について動的に提示した。
 GRAPES+電子情報ボードが、数学の授業を柔軟かつダイナミックに展開する優れた組合せであることを実感した。

GRAPES

1÷3

 小学校2年生の長男に、冬休みに入ってから分数の計算を教える。新課程学力ドリル算数 (小学5年生)に沿って学習してきたが、分数を小数に直す箇所で、待望の「1÷3」の計算ができる。小数の計算について、多くの筆算練習を経て、ようやくここにたどり着いた。
1div3

 「1割る3を筆算でやってごらん。」というと、息子はひたすら筆算を進め、16桁まで計算したところで、筆算がノートの端に来てしまった。ここで、ようやく顔をあげ、
 「ずっと続くんだね。」
と言う。無限を自ら感じとれた瞬間である。
  1/3=0.33333333…
「ずっと続く小数の値でも、分数ならはっきりとした形で表せるし、いろいろと計算もできるね。」と、分数の役割を伝える。
1div7

 次に、1÷7の筆算をさせる。
  1/7=0.14285714…
ここまで計算して、息子は、「一週したね。」と言う。循環することが分かったようだ。さすがにこのときは、本当に嬉しかった。

 循環小数は、無限を定式的に捉えることの入り口となる。分数を学ぶことは、多様な数の世界に一歩足を踏み入れたことである。計算の習熟と共に、折りにふれて、そのことの素晴らしさを伝えていきたい。

理数セミナー

 理科・数学の授業でコンピュータを活用するセミナーを行う。午前中、Logoや数式処理ソフトMuPADについて、その背景と授業への利用について話し、実際に体験してもらう。午後は、理科や数学のソフトについて紹介する。今後、主流となるであろうソフトウェアの配信サービスについても触れる。学校においても、ソフトウェアをパッケージで買うのではなく、1年契約でソフトをWeb上から使う形が増えていくであろう。
 理科や社会などの資料的なコンテンツは充実してきている。しかし、ソフトを試用してみると、勘違いしているのではないかと思われるものも多い。ただキャラクターが面白おかしく話をして、問題を出していくソフトが目につくが、どうも本質から逸脱している。目先の楽しさでなく、学ぶこと本来の良さや、学問の素晴らしさを伝えるソフトには、なかなか出会えない。
 コンテンツでは、ブリタニカ・サイエンスのクリップのような、密度のあるものには好感がもてる。多くのソフトでは、「詰め込み」を忌避するあまり、「中身の濃さ」がおろそかにされていないか。
 それにしても、市販の数学ソフトの状況はお寒い限りである。相変わらず電子問題集的なものが多い。もっと、「数学は素晴らしい」と、グッと迫ってくれるものはないものか。
 Logoのように、試行錯誤をするなかで概念形成をはかるようなソフトにもっと目を向けてもらいたい。
 1986年の本だが、佐伯胖著、岩波新書の「コンピュータと教育」に掲げられた戸塚滝登氏のLogoを用いた実践は、20年を経た今でも新鮮であり、教育におけるコンピュータ活用の方向を示しているように思う。

コンピュータと教育
佐伯 胖
4004203325

電卓

 7.8×3.9    600×25.5
などの小数の計算を息子にドリルでさせている。
答え合わせは、電卓を使って問題を入力させ、結果を声に出して読ませている。それにより、電卓の扱いと数字の読み方を学習できるし、何より自分で計算した結果が客観的に確認できることにより、満足感が得られる。

 計算練習の後、息子が、「ルートって何?」と、電卓のボタンにある”√”の記号を指して言う。なぜ読めたのか分からないが、おおかたゲームか漫画に出てきたのだろう。
「3×3=9 のとき、√9 は3 のように、2回同じ数字をかけた結果に対して、もとになる数のことだよ。では、√4 はいくつ?」
「2」
「それじゃあ、√25 は?」
 すぐには分からなかったようなので、1×1 2×2 3×3 4×4 と順に計算をさせ、√25=5 を分からせ、ついでに電卓で確認させる。

 その後、息子は勝手に電卓に√77など押して遊んでいた。
 √77 = 8.774964387
「なんか変な数になるね。」
「ここに出ている数字は、もっとずっと続いていくんだよ。」
「隣のときちゃんのおうちに当たるくらい続くのかな。」
「月の先の先、ずっと続くんだよ。」

 √は、ほとんどの電卓にある記号で、子供にとっても身近に感じさせることのできる演算である。なじめば、非線形であることは常識となり、
√2+√3 = √5
とする大学生も減るだろう。

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