基礎がため100%中1数学(関数・図形編)

 「くもんの中学基礎がため100%中1数学 (関数・図形編)」は、同じシリーズの「計算編」とセットになっている中学1年数学のドリル。「比例・反比例」「図形の性質」「立体図形の体積・表面積」 などが扱われる。
 中1ギャップの最たるものは、「数学」であると言われる。まず、「正・負の数」でマイナスを含む加減乗除が登場する。次に、文字式が登場し、それに分数・小数が混じって扱われ、さらに当然のごとく習ったばかりのマイナスを含む文字計算となる。続いて一次方程式が登場する。次々と、小学生のときにはなかった抽象的な概念が現れる。それも、小学校での小数・分数の計算が完璧に理解されていることを前提としている。そのため、この時点で小数の計算や分数の通分に習熟していなければならない。
 文章題も、文字式に落とし込む感覚を身につけなければならず、食塩水の問題など、割合の概念がきちんと捉えられていないと難しい。

 それら、多くの新出事項を経た後に登場するのが、二変数の関係を扱った「比例・反比例」である。今までのように、答えがいくつと出るのではなく、「関係」を捉える内容である。その感覚がうまくつかめず、難しい印象を持つと、高校まで尾をひく。特に丁寧な指導が必要な箇所である。
 その後も「x=8,y=4 のとき、y=a x の比例定数 a の値はいくつか。」のように様々な問題のヴァリエーションが現れる。一次方程式に習熟していることも求められるのである。
 「関数」と聞くだけで、「難しい」「分からない」と拒絶反応を示す高校生が多い。その原因は、正負の計算、文字式の計算、一次方程式、文章問題と新しい概念や解法が矢継ぎ早に出てきた後の、「比例・反比例」の場面で苦手意識を持ってしまうことにあるのではないか。

 その他、作図、扇形の面積、円錐の表面積など、難関がいくつかある。それらは、前の事項を踏まえて解く内容であり、その繋がりこそが数学の醍醐味であるが、習熟が図られていないとただただ面倒な内容と感じてしまうであろう。
 三角形の3つの内角の二等分線は一点で交わり、それが外接円の中心となるなどの事実を作図で確認し、興味が持てれば、後の図形の学習にはずみがつく。数学が好きになるか嫌いになるか、中学1年の数学は、教える側の力量が大きく問われる。

 このように、中学1年の数学は、たいへんに中身が濃く、かつ、ほとんどがその後に直接繋がる内容である。そのため、家庭学習で定着をはかる努力が欠かせない。
 ドリル「基礎がため100%中1数学 (関数・図形編)」は、内容豊富なこの箇所の数学について、段階を踏んで問題が配置されている。スモール・ステップの問題を解いていくことにより、どこが分かりづらかったのかを確認することにも役立つであろう。

くもんの中学基礎がため100%中1数学―新学習指導要領対応版 (関数・図形編)
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ガリレオ

 「振子の等時性」「落体の運動」など、物理学上の大発見を成し遂げ、自ら望遠鏡を作って天体を観測し、数々の偉業を残したガリレオ=ガリレイ。すべてのものは観察と実験によって真理をつきとめることができる、ということを身をもって実行した「近代科学の父」。その生涯を、息子の音読でたどり、親子共に感慨を得ることができた。

 特に、望遠鏡で初めて月を覗いたときの描写は、こちらも興奮してくるほどであった。著者の草下英明氏は、五島プラネタリウムの解説員をしていた。そのため、近代天体学の出発点となったガリレオの観測に、深く心を寄せて書いていったのであろう。

 ガリレオは晩年、著書「天文対話」などで地動説を広めたことにより、ローマ法王庁によって宗教裁判にかけられる。「それでも地球は動く」と言ったことで有名な史実である。伝記によって生涯をたどることにより、地動説を誤りと認めることがガリレオにとってどんなに悔しいことであったかが、心に迫ってくる。

 伝記の最後に、1992年にローマ法王ヨハネ=パウロ二世の発表によって、ガリレオのローマ=カトリック教会からの破門は誤りだったとして、ガリレオが359年ぶりに破門を解かれて名誉を回復したことが付記されている。伝記の著者、草下氏が亡くなった翌年のことであった。

ガリレオ―それでも地球は動く
草下 英明
4061475290

一休

 「有漏路より無漏路に帰る一休み
   雨ふらばふれ風ふかばふけ」

 一休の伝記を、息子の音読と共にたどる。争いの絶えない下克上の世に生まれ、人々の幸せを願い自然を愛する一休の様々なエピソードが綴られていた。あるときはとんちで上下隔てなく打ち負かし、ある時はとぼけた問答をし、またあるときは市井の人々と共に過ごす。それら一話一話が、やや苦みを帯びた清涼剤のような不思議な味があった。
 自然体で生き、「真実一路」をあゆむ一休を描く筆者は、武者小路実篤。平明な文体で深みのある一休の言行が語られる。この伝記に息子と向き合った時は、凡百の書を読むよりはるかに貴重なひとときであった。

一休―とんち小僧から名僧に
武者小路 実篤
4061475061

驚異の小宇宙 人体 Vol.3「消化吸収の妙~胃・腸~」

 1989年にNHKスペシャルとして放送された「驚異の小宇宙 人体」。鮮明な顕微鏡映像と、CGを駆使した解説で、人体の精巧な仕組みに驚きを覚えた。
 子どもが体の仕組みに興味を持ちはじめたので、図書館からビデオを借りて久しぶりに見る。第3回、胃腸の消化吸収をとりあげた内容だが、CGよりも実写の胃の内部がすごい。泉のようにわき出る強烈な酸を持つ胃液。その酸で胃そのものが壊れないのは、胃壁を守る粘膜細胞が絶妙な働きをするからであった。
 アルコールによって、胃液を出す細胞と粘膜細胞のバランスが崩れ、胃壁がズタズタになった映像を見て、「飲み過ぎは恐ろしい!」と、その時は思った。だがすぐ、胃の再生機能にたよってしまう…。

NHKスペシャル 驚異の小宇宙 人体 Vol.3「消化吸収の妙~胃・腸~」
久石譲 タモリ 小出五郎
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腹十二分目

 小学4年生の長男は、体は小さいがよく食べる。今日も食卓に好物のネギトロが出たので、ペロリと平らげ、おかわりもしてお腹がパンパンに膨れていた。それでもまだ食べたそうであった。私のネギトロとご飯を少し分けてやってから、
「腹八分目というでしょう。それくらい食べれば今日はいいんじゃない。」
と言うと、小学1年生の次男が、
「お兄ちゃんのおなかは、腹十二分目だよね。」
と言う。
 ああ、この感覚は大事だなと思った。「腹八分目」は10を基準として-2の数を使っている。それに対し、+2をした数は、「十二分」である。次男は格別プラス・マイナスを意識していたわけではないだろうが、12という数が出てくる感覚はいいなあと思った。実際、満足をした状態を、「十二分に」というではないか。
 割合の計算は、算数の授業で重要なポイントであり、この部分の習熟が、中学・高校の数学、ひいては社会生活で大きな影響をもたらす。その意味でも、割合の感覚を日常の中で触れていくことは、たいへん大事だと次男の言葉から気づかされた。

働くひとのためのキャリア・デザイン

 入社や転勤、昇進、転職など、働く上での節目をどう迎えるか。
 「働くひとのためのキャリア・デザイン」には、仕事の中で成長するためのヒントが数多く盛り込まれている。
 途中では様々な「ドリフト」があってもいいが、節目ではじっくりとキャリアについて考える必要がある。本書では、生き方・在り方を節目で見つめるキャリア・デザインについて、学問的な背景をもとに、豊富なたとえとリズミカルな文章で生き生きと語られている。

働くひとのためのキャリア・デザイン
金井 壽宏
456961941X

21世紀 知の挑戦

 TBSで1999年と2000に放送された「ヒトの旅、ヒトへの旅-世紀末・人類最先端スペシャル」は、20世紀がどのような時代であったかをふりかえり、21世紀がどのような時代になろうとしているかを展望する大型番組であった。立花隆は、この番組のために、現代の科学技術の最先端を様々な角度から取材した。本書は、それらをもとに考察されたものであり、バイオ関連の話題がたいへん多い。
 また、「ツングースカ大爆発」の謎に関する記述は興味深い。
 最終章の「21世紀 若者たちへのメッセージ」では、日本の教育に対して切実な警鐘を鳴らしている。

21世紀 知の挑戦
立花 隆
4167330121

フェルマーの最終定理

「3 以上の自然数 n について、xn + yn = zn となる 0 でない自然数 (x, y, z) の組み合わせは存在しない。」

 サイモン・シンの「フェルマーの最終定理」は、この一見単純な定理に挑戦した様々な人々のドラマを描いている。
「フェルマーの最終定理は数学のセイレーンなのだ。天才たちを魅惑の声で誘っては、その希望を打ち砕く。」
 この書では、数学者ワイルズの完全証明に至る苦難が後半のテーマであるが、特筆すべきは、証明に大きく貢献した「谷山=志村予想」という日本人による理論が取り上げられている点である。数学者谷山豊と志村五郎の物語は、たいへん胸を打たれる箇所であった。
 フェルマーの定理を軸としながら、様々な数学にまつわるエピソードを積み重ね、ドラマチックなうねりをつくりだす筆力には圧倒された。日本の理数教育に求められるのは、このように大所から捉え、具体的に分かりやすい形で学問を示す人材の層の厚さかもしれない。

フェルマーの最終定理
サイモン シン Simon Singh 青木 薫
4102159711

基礎がため100%中1数学(計算編)

 小学校から中学校に上がった段階で、学習につまずいたり、学校に適応できなくなる生徒が増える「中一ギャップ」が盛んに言われるようになった。特に、中学校数学についてはギャップを感じる児童生徒が多いようだ。小学校6年生まで算数が好きである児童の割合と、中学1年生になって数学が好きである生徒の割合を比較すると、急激に落ち込むことが示されている。
 ひとつには、文字式の扱いなど、いままでより抽象的な思考が求められ、それになかなか習熟できない生徒が増えることも一因だろう。長男に取り組ませてみたところ、正・負の計算、文字式の計算には、慣れるまでかなりの時間がかかった。正・負の計算では、小学校で習った分数・小数の計算がいっぺんに登場するため、その定着がはかられていない場合には、相当苦労することが感じ取れた。文字式の計算になると、さらに複雑さが増していく。「マイナス符号に注意」「文字をつけ忘れない」このことを何度繰返し言っても、なかなか身に付かない。2ヶ月かかって一次方程式を応用も含めて一通りこなし、120ページの計算編を一冊終える頃になり、ようやくミスがなくなってきた。とにかく、中一数学の習熟には練習がかなり必要であることをまざまざと感じた。
 取り組ませるにあたり様々な問題集を比較したが、「くもんの中1数学計算編」は、スモール・ステップで問題が配列されており、基礎を固めるには適していると感じた。

くもんの中学基礎がため100%中1数学 (計算編)
4774305855

爆笑問題のニッポンの教養

 昨年「爆笑問題×東大 東大の教養」が放映され、興味を持ってみた。爆笑問題は、居並ぶ東大の教授陣に対し、「もっと日常をひきずりこまなければ」と提起した。爆笑問題が名実を伴った最高学府にズバリと切り込む様は、だいぶ反響があったようだ。
 それを受け、具体的な領域に爆笑問題が分け入る「ニッポンの教養」の放送が始まった。第1回は、発生生物学の浅島誠教授の研究室探訪。浅島教授は、再生医療の道筋を示し、最もノーベル賞に近い科学者とも言われている。番組では、イモリやカエルの受精卵を取り出し、心臓などの器官を作り出すことが紹介されていた。爆笑問題は、歯に衣着せぬ物言いで、「先生のやったことで後に引けなくなっているんじゃないんですか。」など、科学と倫理の問題にまで踏み込んだ発言をしていた。
 30分では内容に消化不良の感もあったが、知的興奮を与えてくれる番組だった。このような、学問を身近に捉えさせてくれる番組は、もっとあっていい。

爆笑問題のニッポンの教養

爆笑問題×東大 東大の教養
爆笑問題
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