カフカ 田舎医者
フランツ・カフカの「田舎医者」を原作とする、山村浩二のアニメーション。21分の短編ながら、強烈な印象を残す。手書きのアニメーションにより醸される独特な空気感と変幻自在の歪みが、不条理な作品世界に否応なく引きずり込む。
フランツ・カフカの「田舎医者」を原作とする、山村浩二のアニメーション。21分の短編ながら、強烈な印象を残す。手書きのアニメーションにより醸される独特な空気感と変幻自在の歪みが、不条理な作品世界に否応なく引きずり込む。
チャン・イーモウ監督の「LOVERS」は、金城武、アンディ・ラウ、チャン・ツィイーが共演する映画。色彩美溢れる映像で、唐代の中国を舞台にした華麗なアクションが繰り広げられる。
イーモウ監督の「英雄 ~HERO~ 」が、時代の雰囲気をじっくり伝える重厚な作りだったのに対し、今回の作品は美意識が先行しストーリーは二の次という感じで、その点はやや残念。しかし、映像美を堪能するには良い作品。
チャン・イーモウ監督が、中国の春秋戦国時代を舞台に描いた映画「英雄 ~HERO~」。後に始皇帝となる秦王に謁見を許された男の語りから紡がれる壮大なストーリー。
ワイヤー・アクションは華麗であり、ワダエミが担当した色鮮やかなシーンの数々が美しい。
何より、秦王の居城の重厚さや、無数の弓矢が飛び交うシーンは、当時の雰囲気を説得力をもって伝えてくれた。美術・脚本ともに素晴らしい歴史ロマン。
1979年公開の映画「エイリアン」。今見てもその鮮烈な映像は色あせない。
異星の独特の雰囲気や、強烈な酸の血液を持ち驚異的な成長スピードを持つエイリアンの造形が、この作品の地位を決定づけた。巧みなプロットにも感心する。SFホラー映画の名作。
「パプリカ」は、今敏監督が生涯モチーフとした「イマジネーションと現実の融合」が見事に表現されたアニメーション。原作は筒井康隆。細部にわたって描き込まれた緻密なアニメーションには圧倒される。同時に、女性の独特の色気もこの監督ならではの持ち味。背景も実に丁寧に描かれている。今監督の集大成的作品。
今敏は、2010年8月24日に、膵臓癌で亡くなる。46歳の若さであった。日本のアニメーション界において、実に惜しい人を失った。
今敏による第一回監督映画「パーフェクトブルー」を見る。1998年に制作され、インターネット、ストーカー等の要素を取り入れたサイコ・スリラーをアニメで表現した意欲的な作品。絵や演出のクオリティが高く、特に風景の描写が素晴らしい。
今見てもまったく色あせることのないSF映画「2001年宇宙の旅」。人類が月に行く前に作られたとは信じがたいほどのクオリティがある。
道具を使い始めた猿人の映像から、宇宙船に一気に飛ぶ時間。これほど長い時間の跳躍を、一瞬のうちにこうまで鮮やかに描いた作品は空前絶後であろう。そして、なにより美しい宇宙船の映像。完成途上の宇宙ステーションとのドッキングのシーンは何度見ても感銘を受ける。
音もなく月面を滑り行く探査船のリアリティ。コンピュータHALの存在感。木星に近づくディスカバリー号の神々しいまでの姿。どの映像も、心の深層に訴える力をたたえている。
キューブリック監督の美学と技術が結晶した、SF映画における不滅の金字塔。
子どもたちと「天空の城ラピュタ」を見る。ストーリーの見事さ、徹底して描き込まれた背景、壮大な世界観、音楽のすばらしさ、すべてが最上のアニメ。見るたびにすごいと感じさせられる。メッセージもダイレクトに胸に響く。
「映画を作っているときは、時たま幸せだ。映画を作っていないときは間違いなく不幸せだ。」
「2001年宇宙の旅」「時計じかけのオレンジ」「シャイニング」など、こだわり抜いた名作を世に送り出したスタンリー・キューブリック監督の本格的な評伝。
写真に熱中した少年時代から始まり、映画を作り始めた頃のエピソードなども綴られている。「突撃」「スパルタカス」でのカーク・ダグラスとの出会いと決裂などもじっくりと記述されている。ピーター・セラーズ主演の「ロリータ」「博士の異常な愛情」も当時関わった人々からの丹念な取材で制作の雰囲気が浮かび上がる。
圧巻は、「2001年宇宙の旅」の章。およそ全てのSF映画を見て、宇宙や科学に関するありとあらゆる本を読破し、NASAの関係者や原作者アーサー・C・クラークとの対話を重ね、イメージを膨らませていく。撮影の過程の記述も、実に興味深い。SF映画の不滅の金字塔の地位は、今後も不動であると納得できる。
「時計じかけのオレンジ」「バリー・リンドン」「シャイニング」の撮影、美術、音楽へのこだわりが多彩なエピソードから伝わってくる。
キューブリック監督の実像に迫る気迫に満ちた労作。
映画監督 スタンリー・キューブリック
ヴィンセント・ロブロット 浜野 保樹
「幽霊という概念はとても楽観的なものだと思わないか」
スタンリー・キューブリック監督の「シャイニング」は、外界と閉ざされた冬のホテルに、管理人として住み込んだ一家を襲う運命を描いた映画。原作は、スティーヴン・キング。冒頭の言葉は、キューブリックがキングに初めてかけた電話の第一声。
ホテルの内装の美的センスに目を瞠る。ブルーレイディスクでは、さらにその美しさが際立つ。すべて一から作ったことが信じられないほど見事なセットである。
徐々に狂気を帯びていくジャック・ニコルソンの演技が凄い。キューブリック監督が何度も撮り直すため、実際に精神的に追いつめられていく女優シェリー・デュヴァルの表情が深く印象に残る。
優れたカメラワークと構図に裏打ちされた映像で、深層にじわじわと食い込む恐怖を与える。観る者を最後までとらえて放さない、第一級のホラー映画。
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