マスカレード・ホテル
東野圭吾のミステリー小説「マスカレード・ホテル」。ホテルマンに扮装して潜入捜査をする刑事と、現場での立ち居振る舞いを教育する女性フロントマネージャーのやりとりを軸に描く。
ホテルでの人間模様が興味深く描写され、石ノ森章太郎の「HOTEL」のような連作短編を思わせる。
ストーリーテリングの冴えをみせる、エンターテイメント小説の良作。
マスカレード・ホテル (集英社文庫)
東野 圭吾
東野圭吾のミステリー小説「マスカレード・ホテル」。ホテルマンに扮装して潜入捜査をする刑事と、現場での立ち居振る舞いを教育する女性フロントマネージャーのやりとりを軸に描く。
ホテルでの人間模様が興味深く描写され、石ノ森章太郎の「HOTEL」のような連作短編を思わせる。
ストーリーテリングの冴えをみせる、エンターテイメント小説の良作。
マスカレード・ホテル (集英社文庫)
東野 圭吾
アガサ・クリスティの推理小説「ゴルフ場殺人事件」は、エルキュール・ポワロのライバルが登場したり、助手のヘイスティングスのロマンスがあったりと、変化に富む展開。
クリスティの筆運びが生き生きとしている、初期の快作。
ゴルフ場殺人事件 (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)
アガサ クリスティー
向田邦子原作の映画「あ・うん」。高倉健演じる社長と板東英二による万年サラリーマン、富司純子演じる妻が織りなす人間模様を描く。高倉健の笑顔やはにかんだ様が格別に良い。
昭和初期の空気が、ひとびとの温かい生き様をふわりと包む。人情の機微がそれぞれの台詞とともに印象に残る日本映画。
「包丁人味平」は最もわくわくした漫画のひとつ。1973年から1977年に週刊少年ジャンプに連載された作品であり、子どもの頃、その単行本の発売が待ち遠しくてしょうがなかった。
日本料理人の息子「味平」が成長していく物語である。まだ「グルメ」という言葉すら日本に存在していなかった時代、様々な料理や料理人の姿が描かれていた。
小さな洋食料理店の修行に始まり、「包丁試し」「点心礼勝負」といった料理の対決が繰り広げられる。また、デパート間の経営上の威信をかけた「カレー戦争」など、組織としての対決も見られた。
そこでは大小の料理に関する蘊蓄が繰り広げられる。原作者牛次郎お得意の大風呂敷のものもあるが、それはそれでまことに楽しい物語であった。
料理の多様さと料理人の矜持を、昭和の熱気の中に描く「包丁人味平」は、職業漫画のルーツであり、日本漫画界のエポックメイキングとも言える名作である。
アニメ「食戟のソーマ」第1話から第3話は、定食屋の息子、幸平創真が名門料理学園に編入学し、料理を試されるまでを描く。
食材や料理の描写に力が入っている。キャラクターも一人一人実に個性豊かで、楽しませてくれる。極上のグルメ・エンターテイメント・アニメ。
「おあがりよ!」
トルストイの「アンナ・カレーニナ」下巻は、社会、芸術、宗教などいくつもの思想を登場人物のやりとりの中で敷衍しつつ、人々の運命をからませていく。
誠実な愛情が激しいゆえに破局に向かっていく。アンナの道すがらの描写は迫力に満ち、読むものを惹き付けて止まない。
幸福と不幸、愛情と憎悪、実直と欺瞞、理想と現実、幾多の対比を透徹したリアリズムの内に描く。その充実した読後感は、他の書物では得られない芳醇な味わいがある。人の営みが凝縮された不朽の名作。
2組の男女の恋愛を軸としながら、多彩な人間模様で展開される、「アンナ・カレーニナ」中巻。
幾多の人物の中には、感情移入できる人もいれば、嫌悪をいだく者もいる。その多様さが、この物語の魅力といえる。
華やかなかに欺瞞と冷徹がうずまく社交界と、農村の素朴な描写を織り交ぜながら、滔々たる大河のように物語りは進んでいく。豊穣な読書体験を与えてくれる文学作品。
「幸福な家庭はすべて互いに似かよったものであり、不幸な家庭はどこもその不幸のおもむきが異なっているものである。」
トルストイの代表作「アンナ・カレーニナ」。この長大な作品は、冒頭である家族の不倫の話で興味を惹き付けつつ、悠然とした歩みを見せる。主人公であるアンナは、100ページ読んでも現れない。しかし、この序盤の描写は、すべて後の布石となるのであった。
構成感豊かな、トルストイ渾身の文学。
「私はいま,宇宙の最も原始的な姿,人間の最も素朴な強さを,より鮮明に捉えられないかと,ぼんやりと考えています.人間の持つ醍醐味は,その個性や自我,喜怒哀楽,その限界……から離れたところにも広々と存在すると思う.-その,言葉にならない魅力を,ゆっくりと知ってはいけないものでしょうか.」
日本評論社の雑誌「数学セミナー」の別冊創刊号「ζの世界」は、1997年6月に刊行された。ζ(ゼータ)関数についての文章がまとめられた、極めて密度の濃い冊子である。
執筆者として、数学者に交じって、フェリス女学院高校3年の中島さち子の文章が収められている。「ゼータの世界を眺めて」というタイトルで、数論のいくつかのトピックスをちりばめ、自らの抱負を語っている。知的好奇心に満ちた、きらきらと輝く少女の姿が眼にうかぶ、生き生きとした文である。内容については、高校生がここまでレベルの高い数学を理解し感銘を受けているのかと、圧巻の思いであった。まさしく、真の才媛である。
中島さちこTRIOの音楽は、前向きな明るさに満ちている。それは、学問の深さとその豊かさを充分に知り、人生の素晴らしさを実感しているからこそ生まれる音楽なのであろう。
REJOICE
中島さち子TRIO
ゼータの世界
梅田 亨 若山 正人 黒川 信重 中島 さち子
オールスターキャストで描くパニック映画「新幹線大爆破」。新幹線に爆弾を仕掛け、乗客の身代金を要求する犯人と当局とのスリリングな駆け引きを描く。
時速80km以下になると爆発する設定は、「スピード」「エアポート2001」など他の映画で模倣されている。
脚本がよく練られており、次々と予期せぬ事態が勃発し、最後まで惹き付ける。犯人側の事情も日本映画ならではの哀感がある。
高倉健、千葉真一、宇津井健を始め、錚々たる俳優が名を連ねる。北大路欣也、田中邦衛がチョイ役で出るという贅沢ぶり。
日本が世界に誇るパニック映画の超大作。
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