宇野誠一郎 作品集 II

 「ねえ!ムーミン」「小さなバイキングビッケ」など、絵と共にテーマ曲がすっと浮かんでくる。これら円熟期のアニメ音楽の他、「作品集 II」には、宇野誠一郎が手がけた多彩な作品が収められている。
 「ブンとフン」「ひょっこりひょうたん島」「ネコジャラ市の11人」「船乗りクプクプの冒険」といった、井上ひさしとの関わりで作曲された音楽には、実験的な要素が多く楽しめる。
 「東風」「アイアイ」「いちめんのなのはな」のように独特の叙情を醸す音楽、「アイム・ショックド」「新女大学」の実験精神が横溢した曲など、その多彩さに圧倒される。
 解説書の文章も極めて密度が濃い。甘美さと毒が渾然一体となった広大な宇野ワールド。滑稽・奇抜でありながら叙情を漂わせるその音楽は人生の折々にふと浮き上がる煌めきをもっている。

宇野誠一郎 作品集 II

宇野誠一郎 作品集 Ⅰ

 『アニメのキャラクターというのは、絵そのものだけでは立体感を作り得ていない、不完全な存在なんです。だから、そこには言葉や動き、効果音などの、彼らに欠けた要素を補ってやる必要がある。アニメに音楽を付けるということは、いわば生命を吹き込むのにも等しい行為なんですよ。』

 「ふしぎなメルモ」「一休さん」など、印象に残るアニメ音楽を数多く作曲した宇野誠一郎。2枚の作品集に収められた曲からは、音楽への飽くなき探求が伝わってくる。
 「山ねずみロッキーチャック」「さるとびエッちゃん」のように、その曲はそこはかとない抒情に溢れており聴き手に印象を残すが、作曲者本人は解説書の中で物足りないと語っている。
 「W3」「悟空の大冒険」など、手塚治虫のアニメーションに関しては、実験精神が大いに発揮され、躍動感に満ちた魅力溢れる音楽が生み出された。
 「なぞなぞ」「まんがこども文庫」など、中山千夏、堀江美都子などの歌唱の魅力をうまく引き出している。
 色彩感あふれるその音楽は、時代を超えて聴き手を魅了する。

宇野誠一郎 作品集

中坊公平・私の事件簿

 「森永ヒ素ミルク中毒事件」「豊田商事事件」「住専処理」など、中坊公平が自ら関わった14の事件を辿った書。
 森永のミルクに製造過程でヒ素が混入し、多くの乳幼児が障害をかかえることになる事件の章には、とりわけ熱い思いが語られている。特に、裁判での冒頭陳述には深い感銘を受けた。
 数多くの社会事象へ真摯に取り組む姿勢に頭が下がる。

中坊公平・私の事件簿 (集英社新書)

ラストエンペラー

 清朝最後の皇帝、愛新覚羅溥儀の生涯を描いた映画「ラストエンペラー」。清朝末期の動乱から文化大革命に至る歴史のうねりで翻弄される皇帝溥儀の姿を、絢爛たる映像美で綴る歴史大作。
 特に、実際の紫禁城で撮影された即位式のシーンは圧巻。ベルナルド・ベルトルッチ監督の美意識が光る。
 音楽プロデューサーである坂本龍一が、満州国の皇帝を操る人物甘粕正彦をストイックに演じる。
 フラッシュバックの手法でテンポ良く描写され、大作であるが最後まで惹き付ける魅力を持っている。
 1987年度のアカデミー賞9部門(作品賞、監督賞、撮影賞、脚色賞、編集賞、録音賞、衣裳デザイン賞、美術賞、作曲賞)受賞作品。

ラストエンペラー ディレクターズ・カット [DVD]

昔昔亭桃太郎 唄入りぜんざい公社 御見合中

 昔昔亭桃太郎のベテランの味わいがじわっと広がる2席。「唄入りぜんざい公社」は、マクラといい、本筋のくすぐりのうまさといい、まさしく名品。最初から最後まで笑いっぱなしである。ある意味、凄い落語である。
 「御見合中」は赤塚不二夫的ギャグが満載された落語。マクラの人形町末廣のエピソードが貴重な一席。
 落語の存在意義を笑い飛ばしながらも、聴き手には深く印象づけるとてつもないCD。

昔昔亭桃太郎3

切腹

 仲代達矢主演の映画「切腹」は、小林正樹監督の日本の美意識と斬新なダイナミズムにあふれたカメラワーク、橋下忍の綿密な脚本、武満徹の深層に訴える音楽が渾然一体となった、凄まじい求心力をもった映画である。
 最初から最後まで異様な緊迫感があり、深く印象に残る。仲代達矢の鬼気迫る演技は圧巻。日本映画の大傑作。

あの頃映画 「切腹」 [DVD]

網走番外地

 若き高倉健の魅力が横溢する「網走番外地」。1965年、石井輝男監督作品。
 南原宏治、安部徹、田中邦衛などが網走刑務所でギラギラした個性を光らせる。特に、嵐寛寿郎の演技はふるえがくるほど見事であった。
 昭和の映画史に残るアクション・ムービーの傑作。

網走番外地 [DVD]

ハンナ・バーベラ同窓会

 「トムとジェリー」「宇宙怪人ゴースト」「スーパースリー」「大魔王シャザーン」「怪獣王ターガン」「チキチキマシン猛レース」「スカイキッドブラック魔王」「ラムヂーちゃん」「ドラドラ子猫とチャカチャカ娘」など、ハンナ・バーベラ・アニメの日本語版主題歌を集めたCD。
 子供の頃に何度も耳にし、心の奥底にとどまっていた音楽は、聴き出すとすぐに浮き上がってくる。単純で一気に作った音楽のようであるが、それゆえストレートに入り、印象に残る。
 思わず口ずさんでしまう貴重なオリジナル音源。 

ハンナ・バーベラ同窓会[トムとジェリー~チキチキマシン猛レース]
テレビ主題歌 レッドストーン ケーシー浅沼 大塚周夫 フォーリーブス 灘康次 鈴木やすし 小原乃梨子 ウイルビーズ ザ・ラニアルズ 相模太郎

こころ

 夏目漱石の「こころ」を、遅ればせながら全て読む。
 国語の教科書に、最後の部分が載っているが、あれでは推理小説の犯人を知らせてしまっているようなものではないか。もっとも、結末が分かっていてもたいへんに面白い。わくわくしながら読むことができる。新聞小説として発表されたものなので、区切りにリズムがあり読みやすい。読書の楽しみを与えてくれる本であった。

こころ (新潮文庫)
夏目 漱石

杉の柩

 アガサ・クリスティーのミステリー「杉の柩」。女性の細やかな心理描写が秀逸で、トリックにもうならされる部分があった。
 読後感の良い、印象に残る作品。

杉の柩 (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)
アガサ・クリスティー 恩地 三保子

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