模倣犯

 非情な殺人犯と、その被害者側双方が実に丁寧に描かれている。文庫本5巻に及ぶ大作だが、時間を忘れて読むことに没頭した。
 第1部の緊迫感で作品にぐっとひきこまれる。第2部では、視点は違うが、曾野綾子の「天上の青」を彷彿させるものがある。第3部では、至る所に張られた伏線の妙を味わえる。冒頭からラストまで、様々な人物を彩なしていく巧みな筋運びは、まさに職人芸。
 個人的には、豆腐屋のご主人や、ソバ屋の旦那さんの描写がいいと感じた。あまりに凶悪な殺人を描いているが、それに関わる人々を描く筆致に暖かさがあり、その対比の鮮やかさがこの作品に魅力を与えている。



ロッキー

 シルベスター・スタローン自身が脚本を書き、渾身の力をこめて挑んだ映画「ロッキー」。
 アメリカン・ドリームを体現したこの映画は、陰鬱なアメリカン・ニューシネマの終焉を告げ、高々とファンファーレを響かせた。
 試合前に撮されるフィラデルフィアの朝のランニングシーンには、最高の高揚感がある。

ロッキー〈特別編〉 [DVD]

ドラマCD ひぐらしのなく頃に解 目明し編

 パソコンソフトでヒットした「ひぐらしのなく頃に」のシナリオを、豪華声優陣が競演するドラマCD。その中でも、「ひぐらしのなく頃に解 目明し編」は、6枚組とボリュームがあるが、一聴の価値がある。
 特に、雪野五月の演技があまりに凄い。その鬼気迫る声には、鳥肌が立つほど。骨太のシナリオと絶妙の効果音と音楽、魂のこもった声優の熱演が見事に物語を綾なし、聴き手の心を揺さぶる。

ドラマCD ひぐらしのなく頃に解 目明し編
雪野五月 斎賀みつき 保志総一朗 中原麻衣 かないみか 田村ゆかり 茶風林 関俊彦 大川透 伊藤美紀

エアポート'77

 エアポートシリーズの中で、最も派手な設定である「エアポート'77」。ボーイング747がバミューダ海域に突っ込み、大規模な救出劇が展開される。
 ジャック・レモン、 ジェームズ・スチュアート、リー・グラント、ジョゼフ・コットン、クリストファー・リーなど、オールスターキャストで繰り広げられるパニック大作。

エアポート'77 バミューダからの脱出 [DVD]

エアポート'75

 名画「大空港」の流れを継ぐ「エアポート'75」。機長を事故で失ったジャンボ機の操縦が、カレン・ブラック演じる客室乗務員に委ねられる。

エアポート'75 [DVD]

人間の建設

 評論家、小林秀雄と数学者、岡潔の対談「人間の建設」。芸術や文学、数学と幅広い分野に話は及ぶ。知性と知性の出会いが、雑談に普遍的な精神のダイナミズムを与える。
 「素読教育の必要性」の中で、丸暗記の重要性、「すがた」に親しませることが必要と語っているが、この部分は現在の教育にとって重要な提言と感じられた。
 知的なことにふれる醍醐味を与えてくれる希有の対談。

人間の建設 (新潮文庫)
小林 秀雄 岡 潔

鈴木邦彦作品集

 「恋のハレルヤ」「天使の誘惑」「長い髪の少女」「トンネル天国」「さらば涙といおう」「薔薇の鎖」「情熱の嵐」「北国行きで」「酒場にて」
 今なお歌われる数々の名曲を生み出す鈴木邦彦の作品集。歌い手の魅力を最大限に引き出す曲の力には、あらためて凄いと感じる。

天使の誘惑~鈴木邦彦作品集

白雪姫

 1937年に公開された、世界初のカラー長編アニメーション「白雪姫」。今見ても実に素晴らしい。太平洋戦争前の時代にこの作品が作られたことには、驚嘆を禁じ得ない。
 動物やこびとの動きのなめらかさが、名曲に完全に同期して動く様は何度みても引き込まれる。
 夢の世界に誘う永遠の名作。

夜と霧

 アウシュビッツの強制収容所という、死と隣り合わせの極限状況の中で、「夜と霧」の著者フランクルは人々の心理を冷静に見つめる。その真摯さが、人間に対する敬意と希望を与えてくれる。
 何度読んでも感銘を受け、自らの生きる意味を考えさせてくれる。
 人類の重き遺産ともいうべき、名著中の名著。

名探偵の掟

 「密室殺人」「閉ざされた空間の殺人」「童謡殺人」「時刻表トリック」「ダイイングメッセージ」など、推理小説の「お約束」をネタに、名探偵とダメ警部が掛け合いを演じる東野圭吾の連作ミステリー。力の抜けた文章で、推理小説の登場人物の悲哀をも感じさせるシニカルなメッセージに溢れた作品。
 パロディであり、まったく期待しないで読んだほうがいいが、「アンフェアの見本」などなかなか侮れない短編もある。

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