柳家小三治 らくだ
柳家小三治の落語「らくだ」のCDを聴く。
小三治は弱者の描写が実にうまいが、この落語でらくだの兄貴分にこき使われるクズ屋も絶妙の味わいがある。
70分に及ぶ大ネタであるが、徐々に熱気が高まっていき、どんどん引き込まれていく。一期一会の名口演。
柳家小三治の落語「らくだ」のCDを聴く。
小三治は弱者の描写が実にうまいが、この落語でらくだの兄貴分にこき使われるクズ屋も絶妙の味わいがある。
70分に及ぶ大ネタであるが、徐々に熱気が高まっていき、どんどん引き込まれていく。一期一会の名口演。
舞台を作り上げようとする人々の奮闘を描いたアメリカのミュージカル映画「バンド・ワゴン」。フレッド・アステア、シド・チャリシー主演のヴィンセント・ミネリ監督作品。
1953年公開の映画だが、数々のミュージカル・ナンバーと踊りに彩られ実に楽しめる。当時の映画界の熱気と勢いを感じさせるまさにザッツ・エンターテイメント。
志の輔の落語「みどりの窓口」は、何度聴いても面白い。みどりの窓口に訪れる人々の描写が秀逸で、笑いと共にサービス業の悲哀を感じさせる。
「しじみ売り」は澄んだ冷気の中でしんみりと語られる場の雰囲気が巧みに醸され、味わいがある人情噺。
「包丁人味平」は最もわくわくした漫画のひとつ。1973年から1977年に週刊少年ジャンプに連載された作品であり、子どもの頃、その単行本の発売が待ち遠しくてしょうがなかった。
日本料理人の息子「味平」が成長していく物語である。まだ「グルメ」という言葉すら日本に存在していなかった時代、様々な料理や料理人の姿が描かれていた。
小さな洋食料理店の修行に始まり、「包丁試し」「点心礼勝負」といった料理の対決が繰り広げられる。また、デパート間の経営上の威信をかけた「カレー戦争」など、組織としての対決も見られた。
そこでは大小の料理に関する蘊蓄が繰り広げられる。原作者牛次郎お得意の大風呂敷のものもあるが、それはそれでまことに楽しい物語であった。
料理の多様さと料理人の矜持を、昭和の熱気の中に描く「包丁人味平」は、職業漫画のルーツであり、日本漫画界のエポックメイキングとも言える名作である。
コンピュータ、量子力学、ゲーム理論、天気予報など、現代社会を支える理論を数多く構築した天才フォン・ノイマン。本書は、その生涯と関わった人々を描きながら、ノイマンの思想の根底に迫っている。
ノイマンの圧巻の才能に驚かされるが、関わった数学者や物理学者の略歴も紹介され、実に興味深い。ノイマンは多くの分野に関わったため、現代数学や科学を概観する内容にもなっている。
特に、第二次世界大戦と科学者たちとの関わりは、原子爆弾開発の史実とあいまって重みをもって読み手にせまってくる。
1900年代にいかに科学が多様な広がりをもち、実社会への応用がなされた時代であるかを如実に伝えるとともに、私生活が絶妙のタイミングで記載され独特のユーモアをも放ち読み手を飽きさせない。
真の天才の生涯を通し、現代科学の礎を俯瞰する密度の濃い良書。
道尾秀介の連作短編集「光媒の花」。花や虫をモチーフにした6編の物語。各話は、ゆるやかにつながりひとつの世界を形作っている。
読み手に深い哀切と癒やしを与えてくれる珠玉の作品。
突如飛来した宇宙船をめぐるSF映画「メッセージ」。エイミー・アダムス主演、2016年公開のドゥニ・ヴィルヌーヴ監督作品。
世界各地に宇宙船が現れ、上空に停止する。軍は様々な学者を集め、調査を依頼する。言語学者ルイーズは、地球外生命体の発する言語を必死に解明しようとするが…。
幻想的な宇宙船と、それに対峙する人々の圧巻のリアリティによりぐいぐいと惹きつけられる。主人公が言語学者という設定のため、知的な雰囲気をもち、映画のクオリティを高めている。
ハードな設定とヒューマンなストーリーが融合した、SF映画の傑作。
「あいつのは親も師匠もいない。あいつは自分一人で強くなった。強くなってしまったんだ。それがあいつの才能であり不幸だ。」
「意味は自分で見つけろってこと?」
「そう…。一理あると思ってな。」
細田守監督長編アニメーション「バケモノの子」。身寄りをなくした少年蓮は、渋谷の裏通りを彷徨ううちにバケモノの世界「渋天街」に迷いこむ。そこで、乱暴な武術家、熊徹と出会い、成り行きでその弟子となる。
テンポよく進むアニメーションと、美しい背景、明るさのある絵柄、そして、深みのあるキャラクター、含蓄のある台詞。どれもが愛おしく感じる。
やはり日本のアニメーションは楽しい。
身寄りの無い女子学生花は、大学で男性と知り合い恋をする。相手がオオカミであると知りつつ二人の子をなす。男性を失った後、花は田舎の古民家で二人の子どもを育てるが…。
花のけなげな姿に心うたれる。自然描写があまりに美しく、この作品を何度も見たいと思わせてくれる。
細田守監督畢生の、魂のこもったアニメーション。
ネット上の仮想世界から引き起こされた混乱に、大家族が立ち向かう映画。細田守監督が、上田にある奥さんの親類の絆に感銘を受け、日本の原風景を描くことに力点が置かれている。そのため、バーチャルの緻密な描写と、家族の細やかな情感の描写がコントラストをなし、独特の感興がある。
雲や風景など自然の描写に対する監督のこだわりが良い方に作用し、爽やかな作品に仕上がっている。
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