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一夢庵風流記

 隆慶一郎の小説「一夢庵風流記」。時代小説でカタルシスが得られる本といえば、真っ先にこれを推したい。
 戦国末期、天下の傾奇者(かぶきもの)として知られた前田慶次郎の一代記である。その生き様は自由闊達、苛烈にして粋、ほれぼれするほど見事である。
 慶次郎は剛毅な戦びとと風流な雅人の両面を備え、付け狙う殺し屋すらもその魅力に屈してしまうほどである。主人公はもちろん、とりまく人々の造形描写と物語への配し方が巧みで、どのエピソードも、こころにぐっと迫ってくる。
 何より、緩急自在の文章が素晴らしい。武人を描いているのに、爽やかさの残るユーモアを感じるのは、フランス文学に造詣が深い著者ならではの味わいか。
 奔放にして優雅、痛快無比の歴史小説。 

一夢庵風流記 (集英社文庫)
隆 慶一郎
4087498778

プロフェッショナル 仕事の流儀 柳家小三治

 「笑わせるもんじゃない つい笑ってしまうもの これが芸だと思うんですね」

 プロフェッショナル「仕事の流儀」第100回は、落語家、柳家小三治の仕事ぶりが描かれる。
 その悠揚たる話しぶりからは想像もつかないが、普段は苦虫をかみつぶしたような顔で、ほとんど笑わないようだ。
 かつて、師匠の五代目小さんから、お前の噺(はなし)は面白くないと言われ、深く悩んだ。「面白い」とはなにかを常に考える。求道する人生である。

「一番下からものを見るということができないと落語はできないなということも知った」

 笑わせない芸を目指し、「小さく小さく」演じる。小三治の落語は、無駄をそぎ落とす。そこから、落語そのものの面白さ、人の営みの豊かさが自然にじみでる。魅力の真髄はそこにある。

プロフェッショナル 仕事の流儀 第V期 噺(はなし) 家 柳家小三治の仕事 [DVD]

柳家小三治 百川/厄払い

 柳家小三治の落語「百川」「厄払い」が収められたCDを聴く。
 「百川」では、田舎者の百兵衛、「厄払い」の与太郎と、ともに社会の弱者であり、ともすると暗い話になりがちである。しかし、小三治が演じると生き生きと精彩を放ち、言動が明るい笑いに変わる。
 小三治ならではの名人芸が堪能できる落語。

落語名人会(31)~柳家小三治7 百川/厄払い

柳家小三治 味噌蔵/小言念仏

 柳家小三治の落語「味噌蔵」「小言念仏」が収録されたCDを聴く。  「味噌蔵」は、けちな旦那が出かけた留守に奉公人たちが宴会を開く噺だが、この宴会が実に楽しそうで、それも、前半のケチぶりが徹底して描かれているが故である。緩急の妙が効いた構成感のある落語。
 「小言念仏」は、話し手によってまったく面白くなくなってしまう噺。小三治の闊達な話しぶりが、この難しい演目を生気溢れるエンターテイメントに昇華させている。

落語名人会(38)~柳家小三治14 味噌蔵/小言念仏

WISH II

 「ユー・レイズ・ミー・アップ」「ホエア・ドゥ・ウィー・ゴー」「カノン」「ラ・カンパネラ」「幻想のアプサラ」「光の記憶」…

 一流のアーティストによる、美しい音楽を集めたコンピレーション・アルバム。静かな癒しの気がただよう曲が20曲収録されている。

WISHII
東儀秀樹 オムニバス ハイリゲンクロイツ修道院シトー会修道士 アレッド・ジョーンズ キャサリン・ジェンキンス シークレット・ガーデン
B001VA1138

ドラマ 下町ロケット 2

 TBS「下町ロケット」第2話。下町の工場、佃製作所が特許を巡る裁判で争う。原作にない場面を丁寧に加え、ドラマを盛り上げる。特に、ものづくりへの夢と気概をぶつける阿部寛演じる社長の裁判でのスピーチは素晴らしかった。久しぶりにカタルシスの得られるドラマであった

TBS 下町ロケット

下町ロケット (小学館文庫)
池井戸 潤
4094088962

花燃ゆ 43

 NHK大河ドラマ「花燃ゆ」の第43回は、「萩の乱に誓う」。
 群馬の教育振興に力を尽くす楫取素彦と美和の姿と、萩の乱が描かれる。萩の乱の責任をとって自害する玉木文之進の姿が、唯一大河ドラマらしい場面であった。
 奥田瑛二演じる玉木文之進の気迫は、第一話では素晴らしかったが、中盤に脚本家のぶれによって情けないことになってしまった。しかし、最期は名優の力によって大河の雰囲気を感じることができた。

NHK大河ドラマ「花燃ゆ」

花燃ゆ 完結編 (NHK大河ドラマ・ストーリー)
NHK出版
4149233705

映画 悪の教典

 貴志祐介の小説「悪の教典」を、三池崇史監督が映画化。上下二巻にわたる原作をざっくりとまとめ、テンポ良い作品に仕上げている。
 後半の惨劇シーンは、三池監督ならではの描写。しかし、こだわりは暴力シーンのみでなく、2羽のカラスになぞらえた映像など、原作への思い入れが感じられる絵作りが随所になされている。

悪の教典 DVD スタンダード・エディション
B00BHAOBES

悪の教典〈下〉

 貴志祐介の小説は、話が進むほどに面白さが増していく。「悪の教典」も、後半の疾駆感が半端ではない。非情な殺人鬼を描いて余すところのないサイコ・サスペンス。

悪の教典〈下〉 (文春文庫)
貴志 祐介
4167839024

悪の教典〈上〉

 貴志祐介が学園を舞台にして描くピカレスク・ロマン「悪の教典」。教師の描き方はロクでもないが、主人公蓮見聖司の人物設定には感心した。

悪の教典〈上〉 (文春文庫)
貴志 祐介
4167839016

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