一休
「有漏路より無漏路に帰る一休み
雨ふらばふれ風ふかばふけ」
一休の伝記を、息子の音読と共にたどる。争いの絶えない下克上の世に生まれ、人々の幸せを願い自然を愛する一休の様々なエピソードが綴られていた。あるときはとんちで上下隔てなく打ち負かし、ある時はとぼけた問答をし、またあるときは市井の人々と共に過ごす。それら一話一話が、やや苦みを帯びた清涼剤のような不思議な味があった。
自然体で生き、「真実一路」をあゆむ一休を描く筆者は、武者小路実篤。平明な文体で深みのある一休の言行が語られる。この伝記に息子と向き合った時は、凡百の書を読むよりはるかに貴重なひとときであった。
一休―とんち小僧から名僧に
武者小路 実篤
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