勝海舟
幕末から明治にかけての変革期に、時代の先を見据えて行動した勝海舟。その波乱に満ちた生涯を、息子の音読でたどる。
野良犬に金玉をかまれる劇的な出来事から始まり、小気味よいリズムで話が進んでいく。極貧の中で、剣と禅で心胆を鍛え、学問の精進を重ねる。オランダ語の辞書「ズーフ=ハルマ」58巻を人から借りて毎日筆写し、1年間で2組を完成させたエピソードは、息子も印象に残ったようだ。
咸臨丸による渡米、坂本竜馬との出会い、西郷隆盛との談判など、会話の多い歯切れのよい文体で、勝海舟の半生が語られていく。西郷隆盛との江戸城明け渡しの会見にあたっても、交渉決裂の際には江戸を火の海にする焦土作戦をとる気構えで臨んだことが、新門辰五郎との会話で描かれている。
数々の難局を、懐の深さと、心の機微に通じた確かな呼吸で乗り切った生涯。困難な場面ほど「大らかさ」とねばり強さを忘れずに先を見抜くことの大切さを教えられた。
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