霧につつまれたハリネズミ
2008月1月1日 - 今年は、ねずみ年。届いた年賀状も、様々なネズミをあしらったものが多い。中には、ハリネズミもみられる。まるっこい形と、ハリで身を守るという健気さが愛嬌を醸す。
ハリネズミを目にすると、学生の頃に見た映画が思い出される。今から26年前、1982年1月23日に東京御茶ノ水にあった日仏会館(現在は恵比寿に移転)で見た、「霧につつまれたハリネズミ」だ。高畑勲監督の「セロ弾きのゴーシュ」の完成試写会に出かけたのだが、「ゴーシュ」の前に上映されたのが、この「霧につつまれたハリネズミ」だった。
それは不思議な映画だった。ロシア語で字幕もなく、スクリーンに映し出されたジャムを包んだ袋を持ちながら森の中を歩く小動物に目をこらした。言葉は分からないが、その小動物、ハリネズミの心の動きが、画面から伝わってくる。いつしか、森のちょっとした変化に好奇心をもち、驚き、畏れ、ハリネズミと同じ体験を味わっていた。こぐまと会えたことには、心からの安堵を覚えた。アニメーションの芸術を追究するロシアのユーリ・ノルシュテインによる作品との出会いであった。
絵を組合せ、少しずつ動かしながら制作される手作りのアニメーション。その手間のかかる作業から紡がれるノルシュテインの映像は、遠い日を思わせるような深い抒情を持っている。たとえ諷刺が含まれていたとしても。
気の遠くなるような作業と、生み出される作品の力。この1年、自分は何を紡げるのだろうか。テーマの普遍性が、作品の根底を支えていることがヒントになりそうだ。
きりのなかのはりねずみ (世界傑作絵本シリーズ)
Yury Norshteyn Francheska Yarbusova Sergey Kozlov
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