隠し剣 鬼の爪
「たそがれ清兵衛」に続く山田洋次監督の時代劇。勧善懲悪の要素が多分に盛り込まれ、前作よりエンターテイメントの色合いが強くなった。
隠し剣 鬼の爪
永瀬正敏 藤沢周平 山田洋次
紀元前370年頃の中国、戦国時代での攻城戦を、墨家の活躍を軸に描く日中韓の共同制作映画「墨攻」。地味な雰囲気だが、これが実に面白かった。特に、10万人の趙兵が、わずか数千の人々が集う梁城を攻めるシーンは圧巻。墨子の思想を継ぐ主人公、革離による知略に富んだ守りがまた凄い。
主役のアンディ・ラウ始め、存在感のある役者たちが重厚な演技を見せる。知と知のせめぎ合いに満ちた物語と、迫真の戦闘により、否応なく引き込まれた。
ここ最近見た中では、最も充実した内容を持った映画。
コワイもの見たさで鑑てしまった映画版の「どろろ」。
主人公の百鬼丸は、ドラマ「ブラック・ジャックによろしく」で研修医を好演した妻夫木聡 。その育ての親に、「ブラック・ジャックによろしく」で心臓外科医を演じた原田芳雄で、ここでも味のある演技を見せている。
ただ、わらぶき屋根の家の中が、ガラス容器が並べられてゴム製の管が這い回るマッド・サイエンティストの研究室みたいになっているのは、いくらなんでも違和感があった。確かに、手塚治虫の「火の鳥」でも、平安時代なのに電話で連絡するシーンがあったりする。しかし、シリアスな雰囲気で進むこの映画ではちょと…。一瞬、原田芳雄がお茶の水博士に見えた。
一流のクリエータが集うとこうなるのか。背景は大自然で開放的。妖怪の造形はどうも日本の妖怪というより、輸入されてきた雰囲気を感じるのだが。妖怪退治でワイヤーアクションバリバリはちょっと違うような…映画だから動きが派手でなくてはならないのだろう。まあ、舞台は日本とは言っていないのでよいのだろう。
多宝丸と鯖目は原作の雰囲気が良く出ていた。どろろの役についてはふれたくない。
要するに、日本版ロード・オブ・ザ・リングを作りたかったのだろう。原作が手塚作品と考えるからいけないのだな。
「バブルへGO!!~タイムマシンはドラム式~」
いかにもB級映画の雰囲気漂うタイトルである。しかし、意外に凝った作りの映画であった。それもそのはず、手がけているのは、「私をスキーに連れてって」「メッセンジャー」のホイチョイ・プロダクションズ、脚本は「踊る大捜査線」の君塚良一である。
日本経済の崩壊を阻止するため、ドラム型洗濯機のタイムマシンでバブルまっただ中の1990年・東京へ行く役を、広末涼子が爽やかに演じている。財務省官僚を阿部寛がコミカルに演じ、物語を盛り上げている。
電通との協力で、当時を緻密に再現するこだわりが見られる。コンセプトが先行した映画なので深みはないが、とかく暗い話題が多い現代では、このような明るい映画を見るのもたまには良いだろう。
数々の映画の美味しいシチュエーションを散りばめた、理屈抜きに楽しめる作品。
幕末、品川宿での人間模様を描く喜劇。昭和32年に封切られた川島雄三監督作品。
「居残り佐平次」を演じるフランキー堺の軽妙洒脱さがよい。高杉晋作役の石原裕次郎も若い魅力に溢れている。この二人のからみは、おかしみとダンディズムが相和し見応えがあった。
落語をベースに、幕末という時代のダイナミズムを感じさせる独特の世界を作り上げている。テンポの良い展開と陰のある設定が深みを作り、日本映画の名作と言われている。
幕末太陽傳
川島雄三 田中啓一 今村昌平
革命前夜のロシアを背景に、男女の愛を壮大なスケールで描いたデヴィッド・リーン監督の映画「ドクトル・ジバゴ」。凍てついたロシアの大地に展開される物語だが、見事な脚本と雄大な映像によって自然とその世界に引き込まれる。バラライカで奏でられる「ララのテーマ」は、いつまでも胸に残る名曲。
ドクトル・ジバゴ
オマー・シャリフ デビッド・リーン ジュリー・クリスティ
禁酒法時代のシカゴを舞台に、アル・カポネと、財務局捜査官エリオット・ネスを中心とした「アンタッチャブル」の対決を描いた映画。ブライアン・デ・パルマ監督作品で1987年に公開された。
ショーン・コネリー演じる警官が素晴らしい。特に、橋の上でケビン・コスナー演じるネスに職務質問するショーン・コネリーの台詞が小気味よい。
ロバート・デ・ニーロがアル・カポネを演じている。バットを持って講釈する場面では、カポネの性格を印象づけられる。
スピード感のある展開、登場人物の個性が際だつ俳優、凝ったカメラワークなど、多くの要素に恵まれた娯楽大作。
アンタッチャブル(通常版)
ケビン・コスナー ブライアン・デ・パルマ ショーン・コネリー
大江健三郎原作、伊丹十三監督の「静かな生活」。大江健三郎氏の息子さんをモデルにした障害を持った作曲家「イ-ヨ-」とその家族をめぐるエピソ-ドをコラ-ジュにした作品。
伊丹監督ならではの手法で、重いテ-マを軽妙に描いている。
高校生の時、人の良い英語の先生に、生徒たちが「先生、発表会をやりましょう。」といって、授業時間に休みの日にあったことを前に出て言うことが何度か行われた。今では考えられない事であるが、当時はのんびりしていたものだ。確かに今ほど進学実績は上がっていなかったが、気骨のある生徒たちが多かったように思う。
その「発表会」で私がなぜか指名され、気の弱い自分は恥ずかしい思いをしながら、その前の日に見た映画「ムーンレイカー」の冒頭が素晴らしかったことを、”Enjoy, your flight!”という台詞と共に演技しながら話した。ついでに、シャーリー・バッシーが熱唱した主題歌を歌った。貴重な授業の時間をとってしまい申し訳ないことをしたと今にして思う。
007シリーズの第11作目「ムーンレイカー」は、007がついに宇宙に出てしまう映画。行くところまで行ってしまった感がある。「ロシアより愛をこめて」の格調や、「ゴールドフィンガー」の緊迫感には欠けるが、次々とたたみかけるアクションの連続とサービス精神の旺盛さがあり、娯楽大作としてはよく出来ている。突き抜けた魅力とでもいうのであろうか。
007 ムーンレイカー
ロジャー・ムーア ルイス・ギルバート マイケル・ロンズデイル
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