司馬遼太郎が語る 第6集

 司馬遼太郎が亜細亜大学で1991年に行った講演会のCDを聴く。静かに語られているのだが、その内容は極めて濃く、目から鱗がおちる思いだった。
 鉄の伝来が日本にもたらした影響が語られたが、それは日本の成り立ちすら変える出来事であった。他のアジア諸国との比較もたいへん興味深い。新たな視点を与えてくれる、含蓄のある語りに心底引き込まれる。

司馬遼太郎が語る 6 私ども人類 [新潮CD]

司馬遼太郎が語る 第5集

 「司馬遼太郎が語る」第5集は、「日本人と合理主義」という演題で1977年に静岡公会堂で収録された講演。鉱物である「金」と日本人との関わりを通じ、合理主義の形成と商品経済の発展についてふれる、たいへんにふくらみのある話。よく準備された講演で、日本の思想史、文化史を俯瞰する密度の濃い内容となっている。

司馬遼太郎が語る 5 日本と合理主義 [新潮CD]

司馬遼太郎が語る 第4集

 司馬遼太郎が1982年、NHKホールで行った講演「文章日本語の成立」のCD。泉鏡花、夏目漱石などの文体についてふれながら、明治期から現代までの文章としての日本語の成り立ちを語る。
 幸田露伴、夏目漱石など、目で追って読むといまひとつ入ってこなかった文章が、CDで日下武史など古典的素養をもった人の朗読で聴くと、鮮やかに情景が思い浮かぶ。「声に出して読む文章」のくだりは、その体験からすっと腑に落ちる内容であった。
 吉川英治、志賀直哉などの優れた名文にふれたくなる講演。

司馬遼太郎が語る 4 文章日本語の成立 [新潮CD]

司馬遼太郎が語る 第3集

 司馬遼太郎の講演「草原からのメッセージ」を聴く。ユーラシア大陸のステップを舞台に栄枯盛衰を繰り広げてきた草原の民、匈奴、スキタイ、モンゴル、韃靼の人々の歴史と「遊牧」の文明を語る。
 暖かみのある口調で、氏の草原の民への愛着が伝わってくる。1992年千葉市文化センターでの講演。

司馬遼太郎が語る 3 草原からのメッセージ [新潮CD]

司馬遼太郎が語る 第2集

 司馬遼太郎が1968年に新宿の紀伊国屋ホールで行った講演。歴史小説を書く視点が具体的に話され、たいへん興味深い。あまり準備をせずに話している様子だが、それゆえに司馬氏の普段の考え方がよく示されている。鎌倉時代から幕末へと自由奔放に語られ、しかも含蓄がある。

司馬遼太郎が語る 2 歴史小説家の視点 [新潮CD]

司馬遼太郎が語る 第1集

 司馬遼太郎が1992年に行った講演「建築に観る日本文化」のCDを聴く。古代から現代までの建築史をなぞりながら、様々な視点から日本と建築について語られる。
 建築家を目指した夏目漱石、一級の建築デザイナーであった織田信長など、深い洞察に溢れた話が泉のように滾々と湧き出で、心を潤す。

司馬遼太郎が語る 1 建築に観る日本文化 [新潮CD]

清張さんと司馬さん

 松本清張と司馬遼太郎の担当編集者を務めた半藤一利による、「清張さんと司馬さん」。
 身近に観察した両巨匠のひととなりが実に面白い。また、両者の作品群から、日本史を見つめる視点を語る箇所はたいへん興味深く読めた。
 特に、「坂の上の雲」「日本の黒い霧」など代表作を取り上げ、実際の対話を交えながら掘り下げていく部分は、編集担当として長く関わったからこそ語れる内容であろう。

清張さんと司馬さん (文春文庫)

わかるPython

 2021年、学校教育においてプログラミングの学習をどう進めるか、問われる年になるだろう。
 文部科学省のGIGAスクール構想の一環として、一人一台のノートパソコンやタブレット端末が配備された。これをどう生かすか、その活用の方向を見定めていく年にもなる。
 手元にパソコンがあるため、プログラミングを学ぶことで児童・生徒自身も活用の幅が広がってくるはずである。プログラミング教育の意味合いはより大きくなっていくであろう。

 現在、デスクトップパソコンで初学者はスクラッチなど「ヴィジュアル系」の言語で学ぶケースが増えている。しかし、本来は「言語」であるため、テキストベースのプログラミングをどこかで学ぶ必要があるだろう。どの言語で何を学ぶか、選択肢はあまりに多い。

 Python は、多くの言語の中でも書法がシンプルで、科学技術計算との親和性もよく、学習に適した言語のひとつと思われる。人工知能の開発に使われることもあり、応用にもつながる言語である。
 数学・理科との連携を見据えた点においても、たいへん優れた学習用プログラミング言語である。今後、教育における活用の幅が広がっていくと思われる。

 Python に関する書籍は様々あるが、「わかるPython」は、初心者にとって学びやすい本のひとつである。まず、レイアウトが工夫されており、見やすい。シンプルな例題をもとに文法が丁寧に説明されている。
 オブジェクト指向、ライブラリの活用までふれられ、実践の方向が見えてくる構成になっている。教育的配慮のよくなされた良書と感じた。

 ソフトウェアやネットワークの重要性が増していく現在、日本が国際社会に伍していくためにも、理数教育の充実は急務である。プログラミング学習は、その鍵を握っている。
 一人一台が実現するとき、いかに質の高い教育につなげていくか。本年はその可能性を追究し、教育の充実を図る正念場になるであろう。

わかるPython[決定版]

一路(下)

 中山道を進む一行に、次々と難題が降りかかる。参勤道中を指揮する小野寺一路は、周囲の手助けを得ながら乗り切ろうとするが…。
 到着の遅れが許されない中、背後に藩内の謀略もあり物語は波乱に次ぐ波乱の展開。読み手を片時もあきさせないその手腕には感服する。
 行く土地における風習を生かしながら、ユーモアとサスペンスを織り交ぜ、なおかつ感涙の場をきっちり敷く熟達の筆。浅田ワールドの真骨頂たる時代小説。

一路(下) (中公文庫)

一路(上)

 参勤交代の差配役を十九歳にしてまかされることになった小野寺一路。父の跡を継ぎ、家伝の書を頼りに古式ゆかしき参勤交代を執り行うことになるが…。
 不手際があれば家名断絶となる運命を背負い、一路は行軍を指揮する。準備に難渋するが、中山道を進む行く手には、さらに数多くの困難が立ちはだかる。
 ロードムービー的な趣向と時代劇のお芝居的妙味を会わせた浅田次郎快心の歴史小説。

一路(上) (中公文庫)

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