図で読み解く!ドラッカー理論

 「プロフェッショナルの条件」「チェンジ・リーダーの条件」「イノベーターの条件」などを基に、ドラッカーの理論を図解した書。「巨大な知の森」といわれるドラッカーの著述の概略を端的に表している。
 図の作り方のポイントも示されており、読みやすく、中身が濃い本。
 1月17日に報告された中央教育審議会答申に盛り込まれている「生きる力」の理念を支える一つである「知識基盤社会」は、ドラッカーの理論を基にしている。本書をきっかけとして、ドラッカーの本にあたってみることも意義深いのでは。

図で読み解く!ドラッカー理論
久恒 啓一
4761261935

まんが偉人物語(9) アンデルセン ベル

 まんが偉人物語の第9巻、「アンデルセン」「ベル」のビデオを図書館から借りてみる。それぞれ10分ほどのアニメーションだが、密度が濃く、胸をうたれる。特に、アンデルセンの回は、自らの生い立ちを語りながら子どもを励ます話で、静かに胸にしみる。このような良質のアニメーションは、もっと普及されるべきだと切に思う。

まんが偉人物語(9)
B00005HBE3

セルフ・コーチング入門

 自分への問いかけを行いながら、行動を決定し、目標達成を目指す「セルフ・コーチング」の手法を分かりやすく解説した本。
 「ユニバーサル・クエスチョンズ」「WISDOMモデル」など、様々に応用のきく内容が多い。また、具体的な事例がたいへん興味深い。さらりと読めるが、しっかりとした中身のある一冊。

セルフ・コーチング入門 (日経文庫)
本間 正人 松瀬 理保
4532111021

夢をかなえるゾウ

 ひとり暮らしのサラリーマンの前に突然現れた関西弁のゾウ。タバコは吸うわ、ゲームはするわ、食い物に意地汚いわと、とんでもない居候になるが、このゾウは一応神様で、自分を変えたいと願うサラリーマンにいろいろと課題を出していく。それは、「靴をみがく」などの簡単な課題だが、実行をしていくうちに…。
 「自己実現」をテーマとした軽妙な小説。主人公と同じように「行動」を起こすことで、変化が現れるかもしれない。新しいタイプの啓蒙書

夢をかなえるゾウ
水野敬也
4870318059

教育トラブルの解決と処理

 学校・教師への保護者からのクレームについて、いくつかの事例に法的な観点で考察を加えた書。教育裁判についての歴史的な記述も多く、ハウツーではなく、学術的な視座に立っている。
 本書では、第三者機関による教育トラブル調停の必要性を掲げている。また、教育的な観点で、毅然とトラブルに対応することの必要性を訴えている。

教育トラブルの解決と処理
森部 英生
4324080984

カオスとフラクタル

 1986年に講談社ブルーバックスとして出版された「カオスとフラクタル」は、非線形の不思議を簡単な数式を交えて解説した本。単純な原理から、次々と広がりを見せていくカオスとフラクタルの世界は、極めて興味深い。豊富な例で知的好奇心を呼びおこす名著。

カオスとフラクタル―非線形の不思議 (ブルーバックス)
山口 昌哉
406132652X

〈現代っ子〉ノート

 中教審副会長、兵庫教育大学長の梶田叡一氏が、現代の子どもたちの諸相を解説した書。教育心理学を背景にしているが、たいへん分かりやすく書かれている。
 最終章では、サントリー次世代研究部長の佐藤友美子氏との対談が記されているが、この章はいままで書かれてきた内容を振り返る形になっており、論点も捉えやすい。

[東書アクティブ・キッズ] 〈現代っ子〉ノート (東書アクティブ・キッズ)
梶田 叡一
4487755557

おもちゃの科学

 ジャイロオートバイ、二足歩行おもちゃ、水飲みおしっこ鳥など、簡単な構造で意外な動きをするおもちゃについて、物理の簡単な数式を交えて説明した本。著者は東北大学工学部教授であった酒井高男氏で、1977年に講談社ブルーバックスとして出版された。本当に楽しい本で、おもちゃの仕組みに魅せられながら、科学への興味が自然とわいてくる。

 OECDによる国際的な生徒の学習到達度調査、PISA2006では、56ヵ国が参加し、日本の高校1年生にあたる生徒の学力が調査された。その結果、数学、読解力、科学のすべての分野で、日本の国際順位が低下したことが話題になっている。また、科学に対する生徒の関心の低さも問題視されている。

 最近、歯車を見かけることが少なくなった。おもちゃも、電子化されたものが増えた。以前のように歯車が見えたり、機械的な構造であれば、その動きを追って仕組みを捉えることができた。その過程で、こちらの歯車が1回転するとあちらの歯車が5回転するなど、その動きから比の感覚も得ることができた。しかし、電子化されたおもちゃは、ほとんどブラックボックスとなってしまい、その仕組みに関心が向かない。こういったブラックボックス化は、科学への関心が低下する一因となっているのではないか。

 子どもの頃に、おもちゃの仕組みを知る楽しさ、作ることの喜びを様々な場面で体験させていくことが、技術立国日本の復権にとって案外重要なのかも知れない。
 酒井教授があとがきに記した言葉は、30年たち科学が進歩した今、その重みを増していると感じる。

「おもちゃは決してばかにはできない。ちっぽけなおもちゃが全力をあげて、自然の法則のもとに精いっぱい動いている姿に、わたしは感動し、深く頭をたれたくなる。」

おもちゃの科学―手作りで知る新しい世界
酒井 高男
4061179101

勝海舟

 幕末から明治にかけての変革期に、時代の先を見据えて行動した勝海舟。その波乱に満ちた生涯を、息子の音読でたどる。
 野良犬に金玉をかまれる劇的な出来事から始まり、小気味よいリズムで話が進んでいく。極貧の中で、剣と禅で心胆を鍛え、学問の精進を重ねる。オランダ語の辞書「ズーフ=ハルマ」58巻を人から借りて毎日筆写し、1年間で2組を完成させたエピソードは、息子も印象に残ったようだ。
 咸臨丸による渡米、坂本竜馬との出会い、西郷隆盛との談判など、会話の多い歯切れのよい文体で、勝海舟の半生が語られていく。西郷隆盛との江戸城明け渡しの会見にあたっても、交渉決裂の際には江戸を火の海にする焦土作戦をとる気構えで臨んだことが、新門辰五郎との会話で描かれている。
 数々の難局を、懐の深さと、心の機微に通じた確かな呼吸で乗り切った生涯。困難な場面ほど「大らかさ」とねばり強さを忘れずに先を見抜くことの大切さを教えられた。

勝海舟―江戸を戦火からすくった (講談社火の鳥伝記文庫 (56))
保永 貞夫
4061475568

立川談志 「ぞろぞろ」「黄金餅」

 息子が国語の教科書を音読するというので、聴くと、落語「ぞろぞろ」であった。教育出版の教科書である。「アジアの笑い話」として、モンゴル、中国、韓国などの話の後、古典落語「ぞろぞろ」のあらすじが紹介されている。
 それでは、実際の落語をと、子どもに聴かせるために図書館から「ぞろぞろ」のCDを借りてくる。立川談志が昭和44年に紀伊国屋ホールで演じたものだ。録音状態があまりよくなく、やや明瞭さに欠けるが、味わいがあった。
 子どもたちには、まくらが長く、やや分かりづらかったかもしれないが、それでも雰囲気は伝わったようだ。ただ、談志の噺は、女好きの神様が中心に据えられているため、「これが『ぞろぞろ』なの?」との反応。ちょっと子どもたちには難しかったようだ。
 「黄金餅」は、談志の十八番であるとのこと。確かに、この異様にブラックな落語は、語り手によっては後味の悪い印象になってしまうだろう。その点、談志の「黄金餅」は、そのキャラクターもあいまって、からりとした感じを受けた。
 「落語とは人間の業の肯定である」との信条を体を張って示している人なればこそ「黄金餅」が光るのかもしれない。

立川談志 ひとり会~第二期~第十六集
立川談志
B000CEK4KU

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