向田邦子講演 言葉が怖い
向田邦子が1981年、飛行機事故で亡くなる半年前に行った講演のCDを聴く。
言葉に対する鋭い感性がきらめき、興味深いエピソードが語られている。特に、森繁久彌のスピーチの話、英語で育てられた犬との話は味わいがあった。
向田邦子は講演嫌いであったというが、きわめてきちんとした言葉遣いで語られるこの貴重な録音からは、日本語をいかに大事にしていたかが伝わってくる。
言葉が怖い (新潮CD 講演)
向田 邦子
向田邦子が1981年、飛行機事故で亡くなる半年前に行った講演のCDを聴く。
言葉に対する鋭い感性がきらめき、興味深いエピソードが語られている。特に、森繁久彌のスピーチの話、英語で育てられた犬との話は味わいがあった。
向田邦子は講演嫌いであったというが、きわめてきちんとした言葉遣いで語られるこの貴重な録音からは、日本語をいかに大事にしていたかが伝わってくる。
言葉が怖い (新潮CD 講演)
向田 邦子
「アルプスの少女ハイジ」「白い巨塔」など、テレビの黄金時代に数々の音楽を作曲しアニメやドラマに華やかな彩りを与えた渡辺岳夫。「作曲家・渡辺岳夫の肖像」は、その人物像を、親しく仕事をした人々や本人のエッセイから浮かび上がらせた本。
「キャンディ・キャンディ」など渡辺のヒット曲を数多く歌った堀江美都子は、音楽の魅力について本書の中で様々に語っている。
「人間の感情のひだにフッと触れるようなメロディーがあるんですよね。それを聴くといろんなことを想い出したりします。」
「私の得意なところも苦手なところもご存知の上で、ここはきっと上手く歌う、ここはちょっと苦手っていう箇所の入った曲を作ってくださいました。得意なところだけで作ってくれないんですよ。
歌っていうのは完璧に歌っちゃったら誰もいいって思ってくれないんだと。コンプレックスの部分があるから人間らしさがあって、みんなに愛される歌になるんだよ。完璧を求めるんじゃなくて人に感動を与えられる歌を歌うんだよと教わったんです。」
また、キューティーハニーなど、艶のある曲を歌った前川陽子は、歌っている様子から本人の孤独感など、渡辺に全部見抜かれていたと記されている。
渡辺はドラマの流れを大事にし、「白い巨塔」では「ここはあえて音楽を入れないようにしましょう」とプロデューサーの小林俊一によく話していたという。
多忙を極め仕事に疲れ果てていたとき、大切な「作曲ごころ」を取り戻したのは、「アルプスの少女ハイジ」であったという本人のエッセイは心にしみた。あの素晴らしいオープニングの音楽は、渡辺自身の復活の讃歌でもあった。
渡辺の仕事はテレビだけでなく、舞台の音楽や企業のイメージソングにまで及ぶ。その作曲数は優に一万を超える。本書の巻末に載っている渡辺が生み出した曲のリストは、一部であるにもかかわらずその膨大さに圧倒される。
昭和の文化、日本のメディアを支えた巨匠の姿を伝えてくれる貴重な書。
渡辺岳夫が作曲したアニメ音楽は知名度が高いが、それは彼が生み出した曲の10%にも満たない。9割以上は、ドラマや舞台の音楽が占めている。
「白い巨塔」「非情のライセンス」「愛と誠」「虹のエアポート」「新選組血風録」「俺ぁ三太だ」「赤かぶ検事奮戦記」などなど、数々のドラマの音楽を手がけ、どのメロディーも印象に残る。
初期作品としては、「さぶ」の音楽にはモダンさと懐かしい響きが融和し、暖かさの中に高揚感がある。隠れた名曲である。
ドラマの曲は、どれも音楽を聴くだけでふわりと映像の雰囲気が浮かび上がる。渡辺は、脚本を読みこなし、場面場面に応じた音楽を創り上げていった。そのため、登場人物の心情や舞台の空気を取り込んだ音楽になっているのだ。
渡辺岳夫が生涯取り組んだ音楽は、アニメやドラマの進行に合わせて使われるため「劇判」とよばれ、コンサート用の曲とは一段格下の音楽と見られていた。しかし、その曲は、映像と切り離して演奏だけを聴いても実に立派で、繰り返し聴きたくなる。それは、人々の喜怒哀楽を内包した優しさと懐の深さを持った音楽だからであろう。
「アルプスの少女ハイジ」「巨人の星」「アタックNo.1」「キャンディ・キャンディ」「キューティーハニー 」「フランダースの犬」「天才バカボン」「機動戦士ガンダム」
アニメの名作をただ並べたように見えるが、どれも主題歌が素晴らしく、オープニングの映像が音楽と共に自然と浮かんでくる。これらの主題歌は全て同一の作曲家によって生み出された。
渡辺岳夫、その人である。
印象深いメロディーと一流のアレンジによる曲そのものが見事だが、渡辺岳夫は堀江美都子、前川陽子、大杉久美子などの歌手を自ら指導し、その能力を最大限に引き出した。曲と歌唱が互いに影響しあい、人々の記憶に残り歌い継がれる主題歌が生まれたのだ。
一例をあげれば、「かぐや姫先生のうた」という菊容子主演のドラマ『好き!すき!!魔女先生』のオープニングテーマは、月明かりのような限りなく優しいメロディーと堀江美都子の伸びやかな歌声で、音楽の力をまざまざと感じさせてくれる。この曲を聴くたびに自然と涙が流れる。
アルバム「渡辺岳夫の世界-アニメ 特撮編」は、36曲を収録した2枚組CDの他、「巨人の星」から「ハロー!サンディベル」まで19のオープニング映像を収録したDVDを含んでいる。渡辺岳夫のアニメ音楽の豊かさを堪能させてくれる、まさに愛蔵版。
東京国立近代美術館に家族で行き、「生誕100年 岡本太郎展」を見る。岡本太郎の代表作のほとんどが展示されるとあって、開場時からたいへんなにぎわいであった。
入場してすぐに、「ノン」「午後の日」などの彫刻作品が目にとびこむ。ユニークな造形とユーモアをたたえた作品の数々にすぐに引きこまれる。
絵画は、パリの時代の「コントルポアン」「傷ましき腕」などの作品に始まり、戦後「絵画の石器時代はおわった。ほんとうの絵画は私からはじまる。」という宣言の意気込みで発表された数々の作品が並ぶ。 「電撃」「駄々っ子」「千手」など、強烈な色彩とほとばしる情熱が感じられる。「森の掟」はひときわ精彩を放つ。
縄文土器に力強い美を見いだし、日本の原初の美に新たな光をあてた写真の数々も展示されていた。民俗学の実践者としての側面が説得力をもって感じられる。
「明日の神話」など、戦争体験を反映させた展示には、大作全体から悲劇性と乗り越えようとする意志を感じさせられる。
最後の部屋には、「眼」をモチーフとした作品が壁一面に40以上もところ狭しと並べられていた。まさに圧巻。絵画を見ているというより、逆に絵画からおのれ自身見つめられているようで、芸術に向き合っているかを問われているようでもあった。
生涯、新しい芸術を生み出すことに身を捧げた生き様に圧倒され、刺激を受けた展示であった。
買ってきた「美女と野獣」「森の掟」のマグネットプレートや「坐ることを拒否する椅子」コースターは、そこにあるだけで強烈な存在感を放っている。
「上を向いて歩こう」「こんにちは赤ちゃん 」「遠くへ行きたい」など、中村八大と組み多くの名曲を世に送り出した永六輔。作詞家自らが歌うウィットと優しさに溢れた曲集。人生の喜びと哀感がつまっている。
六輔その世界
永六輔
ロシアのピアニスト、テオドール・グートマンのCDを聴く。1947年~1951年の演奏。ショパンの陰影に富んだ演奏が素晴らしい。力強い中にも暖かさがあり、端然とした中にも抒情をたたえている。
テオドール・グートマンの芸術
グートマン(テオドール)
NHK「TAROの塔」第2回は、パリにおける岡本太郎の青年期と、大阪万博のシンボルとして「太陽の塔」を提案する壮年期とが交互に描かれる。パリでのインスピレーションを与える美しいシーンの数々、大阪万博のシンボルをめぐり交わされる建築家丹下健三とのやりとりなど、見所の多い回であった。
芸術は爆発の前に、精緻な計算がなされている。
「迷ったら危険な道を選べ!」
NHKのドラマ「TAROの塔」が、岡本太郎の生誕100周年企画として2011年2月26日から放送される。岡本太郎の少年時代と、大阪万博のシンボル作成を引き受けるまでがカットバックで描かれる。
松尾スズキの岡本太郎も堂に入っているが、母親である岡本かな子役の寺島しのぶの演技に惹き付けられる。
脚本は、「風林火山」「クライマーズ・ハイ」の大森寿美男。緊迫感のある展開に、ぐいぐいと引きこまれる。
呪術的なまでに魅力をもった刺激的なドラマ。
NHK 土曜ドラマ岡本太郎生誕100周年企画 TAROの塔 オリジナルサウンドトラック
TVサントラ 配島邦明 美和明宏
「そうだ、やさしいことばでこそ、人の心のなかに入っていけるのだ、むずかしい理論、高い思想、深い感動を、みんなにわかるやさしい、平らな、なめらかなことばで伝えていかなければ、文化はみんなのものにならないのだ」
98歳になるまで、国語教育に渾身で取り組み、多くの生徒たちを育てた大村はま。その教え子であり、晩年はまの仕事を支えた苅谷夏子氏が著した「評伝 大村はま」。
大村はまの人格が形成され、国語教師として実践を重ね、多くの生徒の生涯に影響を与える授業を創り上げる過程を丁寧に描いている。
日露戦争、関東大震災、太平洋戦争、戦後の混乱など、日本の近現代史を背景にしながら、大村はまの関わる人々や当時の学校の様子が生き生きと綴られ、物語としても惹き付けられ、飽くことがない。
はまの学びや実践から、教育に対する様々な考え方が具体的に記され、極めて示唆に富む。
平易な言葉で、するすると読むことができるが、実に多角的な視点で大村はまの人物と実践が語られ、内容はたいへんに深い。心にすんなりと言葉がはいってくる。この本そのものが、大村はまによる国語教育の成果とも言える。
多くの感動と真の敬愛に満ちた、優れた教育書。
なお、著者の苅谷夏子氏による講演会
「ことばが生きていた教室 -国語教師・大村はまが育てたもの-」
が、2011年2月5日、群馬県総合教育センターにおける「ぐんま教育フェスタ」で行われる。
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