この世界の片隅に
太平洋戦争前後の広島・呉を舞台とし、市井の人々の姿を描く「この世界の片隅に」。こうの史代による漫画を原作とし、片渕須直がアニメーション映画化した。
主人公すずは、広島から呉に嫁ぎ、戦時下の困窮する暮らしの中でも工夫を凝らし生活に潤いをうみだす。
一貫して日常的な視点で人々が描かれ、ほのぼのとした絵柄で温かみを感じる。それゆえに戦争の悲惨さが際立つ。
諄々と心に染みる至高のアニメーション。
太平洋戦争前後の広島・呉を舞台とし、市井の人々の姿を描く「この世界の片隅に」。こうの史代による漫画を原作とし、片渕須直がアニメーション映画化した。
主人公すずは、広島から呉に嫁ぎ、戦時下の困窮する暮らしの中でも工夫を凝らし生活に潤いをうみだす。
一貫して日常的な視点で人々が描かれ、ほのぼのとした絵柄で温かみを感じる。それゆえに戦争の悲惨さが際立つ。
諄々と心に染みる至高のアニメーション。
昔の少年誌には、見開きで未来を予想する絵がよく載っていた。空中を浮遊する車であふれた都市や、海中都市の様子など、未来をリアルに描き、子どもたちの想像力をかき立てた。
小松崎茂、伊藤展安など画伯の絵には説得力が感じられた。
中には、高速道路でスピード違反をする車を排除するロボット、手紙をロケットで外国に運ぶ郵便システムなど、奇妙な描写もあるが、ツッコミどころのあるパノラマを大まじめに作っていた。
どのページをみてもほほえましくも楽しい本であり、夢がある時代の良さを感じさせてくれる。当時の想像力の産物が実現したものもあるが、来なかった未来も多い。
現在の子どもたちは未来にどんなイメージを持っているのだろうかと、ふと考えさせられる。
夢のあった、わくわくした時代の空気を感じる貴重な本。
昭和ちびっこ未来画報
初見 健一
ドイツの潜水艦を舞台として極限状況の人々を描いた映画「U・ボート」。1981年公開のウォルフガング・ペーターゼン監督作品。
第二次大戦中の海の下、狭い空間で人々は必至に任務にあたる。敵艦への攻撃の後は必ず報復攻撃があり、逃げ場はない。艦内の状況が実にリアルに描写され、この上ない緊迫感を生み出している。
3時間を越える長尺であるが、個性的な登場人物と巧みなストーリー展開のため、最後までずっと惹き付けられる。
閉塞された中での濃密な人間模様を活写した戦争映画の大傑作。
東西冷戦下のヨーロッパを舞台としたジョン・ル・カレのスパイ小説を原作とする映画「裏切りのサーカス」。イギリス諜報部を追われた老スパイ、スマイリーは、ソ連の二重スパイを探し出す任務に就く。
人間関係が錯綜し、見ている者を迷宮のような事実関係の世界に落とし込む。古きヨーロッパの佇まいを背景に、重厚でゆったりと物語は進む。終始曇天の中、焦燥を感じる雰囲気を醸しているが、それがこの映画ならではの魅力でもある。
ゲイリー・オールドマンの知的な老スパイが静かでありながら圧巻の存在感を示す。深みのあるスパイ映画の傑作。
芸能レポーターを通して、世相を描いた内田裕也主演、脚本の映画「コミック雑誌なんかいらない!」。滝田洋二郎監督による1986年公開作品。
ロス疑惑、豊田商事事件など、当時の事件をはさみながら芸能レポーターの実際が生々しくもシニカルに描かれている。本物のレポーター、実際に事件に関わった人々も登場し、スキャンダラスなキャスティングと展開で独特の存在感を放つ。
1980年代の熱気と混沌を伝える異色作。
「僕らはみんな生きている」は、東南アジアに出張となった日本人社員が、突然の軍事クーデターに巻き込まれる顛末を描いた映画。コメディタッチであるが、緊迫感もある。真田広之、岸部一徳、嶋田久作、山崎努など芸達者な人々の会話が笑いとペーソスを醸す。1993年公開の、滝田洋二郎監督による快作。
昭和11年の二・二六事件をモチーフとした高倉健、吉永小百合が主演の映画「動乱」。
タイトルに反し、比較的静的な映画である。高倉健、吉永小百合のオーラで全編が覆われ、見る者はその役者魂に心を奪われる。
監督は「日本沈没」「八甲田山」の森谷司郎、1980年公開作品。
新田次郎の小説「八甲田山死の彷徨」を原作とする日本映画。1977年公開の森谷司郎監督作品。明治35年、青森の連隊が雪中行軍の演習中に遭難した事件を基にしている。
高倉健、北大路欣也、丹波哲郎、三国連太郎、加山雄三、緒形拳など錚々たる俳優が競演している。過酷な雪中行軍の描写は圧巻で、寒さが背中を伝わってくるようである。
壮大なスケールで描く日本映画の名作。
サイエンスライター竹内薫が、子どものための学校を作るために奮戦したノンフィクション。
まずは、AIと共存する来るべき世界のために、どんな教育が必要なのかを自らの体験を踏まえてて分かりやすく語っている。学校を作るために、文部科学省、内閣府、教育委員会などに通いつめ、その中のやりとりにはシステムとしての問題がにじみでている。
学校での具体的な取り組みが、教員の授業の様子を元に語られ、実に興味深く示唆に富む。共通するのは、それぞれ方法論をもちつつも、多様性と創造性を重視し、「子どもを潰さない」教育となっている点である。
日本が世界の趨勢についていくための具体例を提示した書。
子どもが主役の学校、作りました。
竹内 薫
最近のコメント