アル・パチーノ、ジャック・レモン、アレック・ボールドウィン、エド・ハリス、アラン・アーキン、ケヴィン・スペイシーなど、名優が競演する1992年公開の映画「摩天楼を夢みて」。
ニューヨークの不動産会社を舞台に、熾烈なビジネスの世界を描く。名優が繰り広げるビジネス・トークが見事で、その語りにしびれる。
晩年のジャック・レモンの哀感漂う演技には深い味わいがにじみ出ている。
TBSのドラマ「運命の人」第2話では、沖縄返還に関する政府の密約の極秘文書を巡り、政治的駆け引きとしてその存在が表面化する。国会予算審議の場面はスタッフの意気込みが感じられた。
総理役の北大路欣也をはじめ、柄本 明、笹野高史、不破万作など、政治家を演じる人々の雰囲気がそれぞれ個性をよく表しており、味わいがある。
運命の人(一) (文春文庫)
山崎 豊子
007シリーズの第18作目「トゥモロー・ネバー・ダイ」は、メディアの帝王が敵役。携帯端末で動かす車など、アクションにも現代的な要素が取り入れられ、アイディア満載の作品。
シリアスさとコミカルさのバランスが良く、編集の巧みさもあり、スピード感溢れ快いエンターテイメントに仕上がっている。
山崎豊子の小説「運命の人」をTBSがドラマ化。沖縄返還を巡る裏面史を、ジャーナリズムを通して描く。政治に食い込む新聞記者を、本木雅之が熱演。真木よう子など、個性溢れる俳優の演技に魅入り、骨太な内容ながらあっという間にエンディングになっていた90分であった。
原作や史実の重みをスタッフ、出演者が受け止めて創り上げていることが感じられる。今後の俳優陣の競演に期待したい。
運命の人(一) (文春文庫)
山崎 豊子
「ヒストリエ」第4巻では、訪れた村で主人公が才能を発揮する。古代ギリシャ世界をドラマチックに活写し、無類の面白さをもった巻。
開高健の小説「パニック」を、橋爪功が朗読したCD。原作は、野ネズミの大量発生と対峙する役人の姿を描いた開高健のデビュー作。自然の鮮烈な描写と行政に対するシニカルな表現が対比をなし、卓越した文体で人間のさがを浮き上がらせる。
橋爪功が人物を見事に語り分け、濃密な物語に奥行きを与えている。
パニック (新潮CD)
開高 健
中村元の講演「ブッダの生涯」のCDを聴く。仏教の開祖の生涯をたどりつつ、転機となる出来事や教えを分かりやすく解説する。中村氏の人柄を偲ばせる優しい口調で語られるが、内容は明晰で、胸にしみいる深みがある。
ことに、仏教が寛容性と普遍性をそなえていることを語る最後の部分からは、内側からにじみ出る想いの強さが伝わってくる。
ブッダの生涯 (新潮CD 講演)
中村 元
2011年、NHKスペシャルドラマ「坂の上の雲」が完結し、放送されたことは日本映像界のエポックであった。日露戦争を重層的に描いた司馬遼太郎の原作を、松山出身の秋山好古、真之、松岡子規の3名を軸としたドラマとしてまとめ上げた。明治期の人々のひたむきで、傲らずに凛と生きる姿と、国家をあげて行った膨大な準備と苦労の末に得た勝利からは、政治や経済で混迷を続ける現代の日本に一条の希望を与えてくれた。
原作を改めて読み直し、感銘を新たにした。ことに、あとがきからは司馬遼太郎の思いが伝わり、感慨深かった。司馬遼太郎は40代のほとんど全てをこの小説のために費やした。膨大な資料の収集はもとより、当時を知る多くの人々から直接話を聴いた。ロシア語を学び、原典にあたってロシア側の状勢やバルチック艦隊の内情理解に努めた。準備に5年、執筆にさらに5年を費やし、ようやくこの労作は世に出たのである。
自らを振り返れば、40代最後を数えるこの年に、何を成しえただろうかと自問すれば、司馬遼太郎と比較するのがあまりに失礼だとすら思うほど矮小な事跡しか思い当たらない。素晴らしい作品には多く出会えたので、それを紹介する場を設け継続していることが自ら密かに誇れる唯一のことかもしれない。せめては、自らの感度を上げアンテナを掲げて良き作品を伝えることが、わずかながら自分にできることかと思う年末であった。
一朶の白い雲は青い天に今日もかがやいている。
坂の上の雲〈8〉 (文春文庫)
司馬 遼太郎
O・ヘンリの短編は、プロットの妙が見事だが、古きよきアメリカを舞台にした、みずみずしい情緒にもたいへん魅力がある。ユーモアを含んだ整った文章のうちに、市井の人々に注がれた温かい目があり、いつまでも読んでいたい居心地の良さがある。
O・ヘンリ短編集 (1) (新潮文庫)
O・ヘンリ 大久保 康雄
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