東証売買停止

 今日は日本の株式市場にとって、歴史的な日になるであろう。
 東京証券取引所は午後2時40分に株式の全銘柄の取引を停止した。「ライブドアショック」をきっかけに個人投資家などから売り注文が殺到し、株式の約定件数がシステムの処理能力の限界に迫り、株式の清算業務に支障をきたす恐れがあると判断したためである。
 ライブドアへの強制捜索に端を発したIT関連銘柄への売りは、多くの銘柄に波及し、さらに東証の取引停止の発表は、投資家の売りそびれるのではという不安をあおり、投げが投げを呼んだ。一時は日経平均が700円を超す大幅な下落となった。
 取引所が自らの判断で株式の売買を全面的に停止したのは取引所開設以来初めて。システムの限界を理由にした取引停止は世界的にも異例とのこと。
 このところ、株式市場はITに振り回されている。日本は今、様々な形で、情報化の影の部分の問題に直面している。
 

震災の日

 1月17日、国内では戦後最大の自然災害となった阪神大震災から、まる11年を迎えた。
 折しもこの日、耐震強度偽装事件に絡み、衆議院国土交通委員会でマンション建築主ヒューザーの小嶋進社長に対する証人喚問があった。政府と建築業者との新たな癒着問題も浮上し、政治の中枢を揺るがすことになった。
 マーケットにも激震が走った。ライブドアの強制捜査をきっかけに、高値圏を維持していた東証株価は一気に下落した。証人喚問は政治の不安定を嫌うマーケットを刺激し、売りが売りを呼び暴落に拍車をかけた。
 国家的な規模での動きが複層的に起った日であった。

ドラマ クライマーズ・ハイ 後編

 録画しておいたNHKのドラマ「クライマーズ・ハイ」の後編を見る。
 主演の佐藤浩市は谷川岳の衝立岩に自ら挑み、体を張って望んだ。
 御巣鷹の尾根で命を落とした人々を背負った作品である。中途半端なものは作れないというスタッフの意気込みが感じられた。
 「覚悟を持って」望んだドラマは、横山秀夫の原作の緊迫感と重みを見事に表現していた。

クライマーズ・ハイ[DVD]

道は開ける

 「悩み」を克服する方法を具体的に述べたロング・セラー。たいへん分かりやすく書かれているが、背景には豊富な経験と人脈があり、哲学や科学の知見に裏打ちされている。
 その説得力のある文章にふれるだけでも価値があるだろう。悩みを抱く人だけでなく、より良く生きることを見据えたい人にもすすめられる名著。

道は開ける 文庫版

ドラマ クライマーズ・ハイ 前編

 NHKで放映された「クライマーズ・ハイ」前編を見る。横山秀夫の原作に忠実で、日航機墜落を追う新聞社の動きが、緊迫感をもって描かれている。主人公を佐藤浩市をはじめ、新聞記事に携わる人々を、存在感のある俳優たちが競演し、見応えのある人間ドラマとなっている。ニュース映像や、記者の表現から20年前の日航ジャンボ機123便墜落の大惨事がまざまざと思い出された。

 報道というテーマを軸に据え、様々な人間関係が縦横に描かれる実に密度の濃いドラマ。

クライマーズ・ハイ[DVD]

最後の相場師

 日本の株式市場は、最近とみに活況を呈している。12月9日の東証1部の売買高は37億102万株、売買代金は4兆6494億円にのぼり、過去最高を更新した。1980年代のバブル期をも凌ぐ勢いである。
 その一因として、オイルマネーを始めとした外国資本の流入があるが、国内個人投資家の急増も見逃せない。主婦や学生のにわか投資家も増えている。主婦の雑誌などに、「カリスマ投資家の必勝法」などといった記事をよく目にする。主人の給料以上の額をデイ・トレードなどで稼ぐ主婦もいるようだ。今は活況だから良いが、マーケットは甘くない。先日はみずほ証券によるジェイコム株の誤発注で、日経平均株価は300円を超す下落となった。不安定要因はつきもののマーケットには思わぬリスクもあるので、どうか家族を破滅に追い込むような投機はしないでほしいと願うばかりだ。

 最後の相場師とうたわれた是川銀蔵は、16才で大陸にわたり、軍部と商売をして少年実業家になるが、倒産して日本に帰る。その後も様々な商売に手をつけ、浮沈を繰り返す。経済を徹底して勉強し、経済研究所も設立する。晩年、日本セメントなどの株で仕手戦を行い財を成し、その名を広めることになる。
 その是川銀蔵ですら、欲に目がくらみ、同和鉱業の株で手痛い失敗をして巨額の損失を出す。「相場師一代」は、その是川銀蔵唯一の自伝である。にわかトレーダーには、自戒の書として読んでもらいたい。
 また、津本陽が是川銀蔵をモデルに描く「最後の相場師」は、株の仕手戦の様子がリアルに描かれ、迫真の経済小説である。相場には、その人の生き様が反映されることが、如実に示されている。

相場師一代
是川 銀蔵
4094034714

最後の相場師
津本 陽
4041713013

もう、きみには頼まない

 財界総理と呼ばれ、日本の高度経済成長期に経団連会長をつとめた石坂泰三の生涯を描く小説。石坂泰三は、第一生命、東芝などの社長を歴任し、経済界に多大な影響を与えた。現職の大蔵大臣や総理にすら、「もう、きみには頼まない」と啖呵を切るほどの気骨を持っていた。

 最も感銘を受けたのは、80歳近くなってから大阪万博の会長を引きうけるエピソードだ。
 「万博は深い意味を持っている。見本市とか何とかとちがって、人類が文化に貢献したものを、一堂に展示するのだから」-即興で英国の詩を原文で諳んじるほど、深い教養をもった人物であったからこそ、「人類の進歩と調和」というテーマが生まれたのであろう。
 万博について、四つの方針「予定の開催日に間に合わせること。事故防止。汚職の根絶。赤字を出さぬ。」を定めた。言うは易く、これだけの国家事業を進めるには相当苦労があったろうが、方針を貫き見事に成功に導いたことは凄いと思った。

 多くの経済人を描いてきた城山三郎が、石坂泰三を描く小説を持ち込まれてから、二十余年もの歳月を経てようやく執筆にいたる経緯を描く「あとがき」にも感動した。

 数多くの重責を担った人物の生涯であるが、読後には清々しさをおぼえた。真に志のある生き方だったからであろうか。

凛冽の宙

 不良債権処理をモチーフにした幸田真音著の経済小説、「凛烈の宙(りんれつのそら)」。苛烈な外資系金融機関の実態が描かれるが、その中にほのかな叙情をたたえている。

 凛冽の宙
幸田 真音
4094080252

加治隆介の議

 政治の世界を描く弘兼憲史の力作。商社マンから、父親の死去に伴い政治の世界に入っていく加治隆介。紆余曲折を経て、官房長官になり、その後も要職を歴任しながら熱く理想を追い求める。

 政治家の汚い部分を描く漫画や映画は数多くあるが、この作品は、本気で日本のことを考え行動する人々が描かれている。作者は、政治家、官僚、軍事評論家、商工会議所のメンバーなど500人以上の人々に会い、日本の現状や地方政治の現実など様々な問題を垣間見た。そこで頑張っている人達がたくさんいることを知り、『日本もそんなに捨てたもんじゃないぞという真実を伝えたいという思いが加治隆介になったのです。』と、作者は講談社ミスターマガジン版の最終巻(20巻)あとがきに書いている。

 第17・18巻で、加治隆介が防衛庁長官となっている時に、プルトニウム運搬船がテロリストに乗っ取られる事件が扱われている。ここでの政府の対応が極めてリアリティを持って描かれている。映画「亡国のイージス」より、よっぽど説得力のある優れた表現になっている。

 日本の漫画の表現技術の高さ、志の高さを世界に示すことができる立派な作品だと思う。

 折しも今日、郵政民営化の是非を問う衆議院選挙が公示された。

加治隆介の議 (1)
弘兼 憲史
4063280012

小説ヘッジファンド

 米国系銀行や証券で国際金融市場に関わった著者が描く、迫真の経済小説。舞台となる年代は少し以前であるが、そこに描かれているのは、現在もリアルタイムで進行している金融のダイナミズムである。

 一般にはなかなか知り得ないヘッジファンドの実態が、巧みな筋運びで紹介され、楽しめる小説になっている。

小説ヘッジファンド
幸田 真音
4062639939

アクセスランキング

Ajax Amazon

  • Amazon.co.jpアソシエイト
  • UserLocal
  • Ajax Amazon
    with Ajax Amazon