「超」整理法・時間編

 ベストセラー「「超」整理法」の作者が、続編として時間管理について記した書。様々なエピソードが興味をそそり、最後まで時が経つのを忘れて読めた。
 ちなみに、「「超」整理法」と名が付く本は4冊買った。押し出しファイリングを扱った「「超」整理法」は本屋で見て役立ちそうだと思い買って帰ったところ、家に同じ本があった。ずっと以前買って読んだことをすっかり忘れていたのだった。
 続「「超」整理法」・時間編も、随分前に買って読んだのだが、家のどこを探しても見つからず、結局2冊目を買った。自分は基本的に整理が超苦手であることを自覚させてくれた本である。

「超」整理法〈3〉タイム・マネジメント
野口 悠紀雄
4122042593

インドの衝撃 2・3

 NHKスペシャル「インドの衝撃」第2回「11億の消費パワー」では、経済発展により、新たな消費層が急拡大する様が取り上げられた。スーパーやショッピングモールが次々と建設され、インドの富裕層や中間層がこぞって買い物をし、ライフスタイルが変化していく。貧困層にもテレビが普及しはじめ、映像から購買意欲が刺激されていく。

 第3回「台頭する政治大国」では、アメリカや中国との外交戦略と内政問題を描く。インドは、各国の政財界との多様なネットワークを駆使し、大国を牽制しつつ巧みな交渉を繰り広げる。
 一方、内政面では農村の貧困という大きな問題を抱えている。経済発展により格差も急激に広がっている。農村では、不作によって生じた借金を返すことができず、自殺をする人々が後を絶たない。

 インドは多くの矛盾をかかえる国ではあるが、急拡大する経済と国際社会への発言力、次々と輩出される頭脳集団によるIT立国などパワフルな変貌を遂げている。その変化は今後、日本にも更なる影響を及ぼすであろう。

NHKスペシャル インドの衝撃 第2回
NHKスペシャル インドの衝撃 第3回

インドの衝撃

 NHKスペシャル「インドの衝撃 第1回 わき上がる頭脳パワー」を見る。インドの頭脳立国戦略を描くドキュメンタリー。
 インド工科大学”IIT”では、学生に徹底的に考えさせる教育方針を持っている。模範解答を与えるのではなく、常に答えにたどり着く方法を複数考えさせる。
 小学校での教育においても、いかに数学を楽しく学ぶか、どのように法則を見つけさせ、考える力を養うかに力点が置かれている。
 インドでは、長年、紙とペンだけで考えるしかない環境であったがために、数学や物理などを得意とする人材が多く輩出された。頭脳が最も大きな資源であり、その強みが最大限に生かされたソフトウェア開発は急速に発展を遂げた。

 インドのIT企業「インフォシス」は、世界500社と取引をする大企業で、人材戦略に大きな力を入れている。それを象徴するのが、5年前に360億円の費用をかけて建設した敷地面積70万平方メートルの研修センターだ。6000人が一度に研修できる施設で、優秀な頭脳集団にさらなる磨きをかけている。
 ちなみに、インフォシス・テクノロジーズは、2006年10―12月期連結純利益が前年同期比51.5%増の98億3000万ルピー(約265億円)、売上高は同44.4%増の365億5000万ルピー(約990億円)という驚異的な成長率を見せている。

 アメリカのジャーナリスト、トーマス・フリードマンは語る。
「すべては頭脳で決まるのです。もはや、地理的概念も距離も意味をなさなくなりました。テクノロジーもインフラも、どこでも誰でも同じようなものを持っています。では、違いは何かといえば、頭脳だけです。世界がフラットになったことで、インドの多くの頭脳が突然世界と繋がり、パワーが爆発したのです。」

 貧富の格差がすさまじいインド社会。しかし、頭脳を武器に世界に進出する人材は、自国の地位を高め、教育の機会を広げ、よりよい社会にしようという気概に溢れている。

 日本の教育水準は、献身的な教師に支えられ高い水準を保っている。しかし、インドのダイナミズムを見ると、現状に甘んじることなく真の学力を育む工夫や方策の必要性を強く感じる。

NHKスペシャル インドの衝撃

加治隆介の議

 安倍晋三内閣が発足した。安倍新首相から、若き総理大臣、官房長官経験者、加治隆介を思い出した。「課長 島耕作」の作者、弘兼憲史による漫画「加治隆介の議」の主人公である。
 1991年4月から1998年11月にかけて執筆された作品であり、当時と内外の情勢の変化はあるが、今でも中身の濃さ、ストーリーの面白さは決して薄れていない。政治の世界をリアルに描いた漫画としては、随一の作品だろう。

 昨年8月のブログにも書いたが、背景には、作者による政治や経済に関わる500人以上の人々へのインタビューがある。政調会長になった中川昭一や、民主党の小沢一郎にも、弘兼は連載当時にインタビューをしている。
 『日本もそんなに捨てたもんじゃないぞという真実を伝えたいという思いが加治隆介になったのです。』と作者が述べているように、熱意ある多くの人々の思いがこの漫画に結実したとも言える。
 加治隆介の語る言葉には、見識に立脚した現実を見据えた上での理想、凛とした潔さがあった。
 志のある政治が実行されることを新内閣には切に望んでいる。

人間図書館 (弘兼憲史と中川昭一との対談)

加治隆介の議 (1)
弘兼 憲史
4062607239
加治隆介の議 (10)
弘兼 憲史
4062607808

飢餓海峡

 青函連絡船の転覆事故を背景にした強盗殺人犯とそれを追う刑事の姿を通し、戦後日本を描いた内田吐夢監督による映画「飢餓海峡」。16ミリフィルムで撮影され、独特の映像表現は見るものの心理に訴える。
 三國連太郎、伴淳三郎、左幸子の味わい深い演技は、重厚なストーリーと共に印象に残る。人間の業を描いた名作。

飢餓海峡 [DVD]

墜落遺体

 1985年8月12日、御巣鷹山に日航機が墜落し、520名の命が奪われた事故から21年が経つ。「墜落遺体」は、当時、遺体の身元確認作業の責任者であった著者による現場の記録である。
 遺体の頭部の中から、他の人の目玉が発見されるなど、航空機事故の凄惨さが如実に伝わってくる。遺体が運びこまれる藤岡市民体育館は、気温が40度に上がり、死体の悪臭と線香の煙がたちこめ、時おり遺族の号泣や叫喚が響き渡る。
 そんな中で、自ら病を患いながら、過労で寿命を縮めてまで遺体確認作業を全うする医師。遺族のショックをできるだけ和らげるよう、頭や胴だけでなく内臓までも丹念に洗い、遺体縫合、包帯巻を粛々と行う看護婦たち。自らの身内の死に目にも会わず、遺族との対応を優先する警察官。苛酷な現場で懸命に取り組む人々に、ひたすら頭が下がる思いであった。
 そこに描かれているのは、職務を越えて、人としてなすべきことを憑かれたように行うことで、救いを求める姿であるようにも思えた。

墜落遺体 御巣鷹山の日航機123便 (講談社+α文庫)

百戦百勝

 「相場の神様」といわれた山崎種二をモデルにした小説。相場の世界というと、ギラギラした思惑渦巻く場という感じがあるが、この主人公はひたむきで憎めない。取り巻く人々にも愛着を覚え、読後感もたいへん良かった。
 関東大震災、226事件などの歴史的事件や、数々の仕手戦が描かれ、起伏に富んだ痛快な作品。城山三郎の暖かい眼差しを感じる。

百戦百勝―働き一両・考え五両
城山 三郎

辛酸

 足尾鉱毒事件で国家と対峙した田中正造、その晩年と、死後その遺志を継いだ人々を描く、城山三郎の小説「辛酸」。
 この小説では、衆議院議員として華々しく活躍した田中正造ではなく、晩年、全ての財産や名誉を投げ打って鉱毒被害民と共に訴訟を続ける正造の姿を描いている。
 この作品が発表されたのは、昭和36年、まだ公害という言葉が耳慣れない時代であった。その当時、若干34歳で日本初の公害問題を取り上げ鮮やかに活写した城山三郎に感嘆を禁じ得ない。田中正造と苦労を共にする被害民の若者の視点から描くことにより、田中を客観的に捉えると同時に、被害の悲惨さも浮き彫りにされている。
 逆境の渦中にありながら、「辛酸入佳境」と書く田中正造のすさまじい生き様、そしてそれを受け継ぐ人々の苛酷な現実。淡々とした筆運びにもかかわらず、ずしっと重みのある本であった。

辛酸―田中正造と足尾鉱毒事件
城山 三郎

雄気堂々

 経済において近代日本の礎を築いた渋沢栄一の半生を描く城山三郎の小説。渋沢栄一は、埼玉の寒村に一農夫として生まれ、若き日は横浜焼き討ちなどを企てる尊皇攘夷の志士であった。やがて、幕末から明治維新という時代の動乱の中で多くの人々と出会い様々な経験を積み、経済人として最高の指導力を発揮するようになる。
 徳川慶喜、西郷隆盛、大久保利通、大隈重信など、国づくりに奔走する多くの人々との関わりが、実に興味深かった。そこには日本が新しく生まれ変わる混沌と初々しさがあり、わき上がる熱気が感じられる。
 渋沢の人間形成の過程と明治維新前後の近代日本の歴史を重ねることで、組織のあり方、組織を率いる人々のあり方を国づくりという大きな視野で示している。
 スケールの大きな、強力なリーダーシップを持つ人物が日本では一昔前に比べ、急激に減少していると言われている。どのような条件が本物のリーダーを育てるのかという視点からも示唆に富む、真に実のある作品。

雄気堂々〈上〉
雄気堂々〈下〉

黄金の日日

 戦国時代の堺の商人たちが、財力をもって為政者たちと対峙した姿を描く城山三郎の小説。経済という切り口から信長・秀吉の時代をとらえ、気概にあふれる堺の姿が活き活きと描かれている。舞台はフィリピンにまで及び、その雄大な物語にしばし時を忘れて読みふける。経済が人の心で動いていることをまざまざと感じさせてくれる。

黄金の日日
城山 三郎

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