時空探偵ゲンシクン

 図書館で子どもが「時空探偵ゲンシクン」のビデオをよく借りる。1998年から1999年にテレビ東京系列で放映された、研究所の少年少女が過去にさかのぼって事件を解決するアニメ。タイムボカンとポケモンを混ぜたような設定だが、エジソン、ダ・ヴィンチなど、歴史上の人物が毎回登場し、ただ戦うアニメよりも教育的かと思う。

時空探偵ゲンシクン「イシイシウッホー!」
水樹奈々 立木文彦 園田英樹
B00005FZCU

時空探偵ゲンシクン
園田 英樹 山中 あきら
4063238717

辛酸

 足尾鉱毒事件で国家と対峙した田中正造、その晩年と、死後その遺志を継いだ人々を描く、城山三郎の小説「辛酸」。
 この小説では、衆議院議員として華々しく活躍した田中正造ではなく、晩年、全ての財産や名誉を投げ打って鉱毒被害民と共に訴訟を続ける正造の姿を描いている。
 この作品が発表されたのは、昭和36年、まだ公害という言葉が耳慣れない時代であった。その当時、若干34歳で日本初の公害問題を取り上げ鮮やかに活写した城山三郎に感嘆を禁じ得ない。田中正造と苦労を共にする被害民の若者の視点から描くことにより、田中を客観的に捉えると同時に、被害の悲惨さも浮き彫りにされている。
 逆境の渦中にありながら、「辛酸入佳境」と書く田中正造のすさまじい生き様、そしてそれを受け継ぐ人々の苛酷な現実。淡々とした筆運びにもかかわらず、ずしっと重みのある本であった。

辛酸―田中正造と足尾鉱毒事件
城山 三郎

雄気堂々

 経済において近代日本の礎を築いた渋沢栄一の半生を描く城山三郎の小説。渋沢栄一は、埼玉の寒村に一農夫として生まれ、若き日は横浜焼き討ちなどを企てる尊皇攘夷の志士であった。やがて、幕末から明治維新という時代の動乱の中で多くの人々と出会い様々な経験を積み、経済人として最高の指導力を発揮するようになる。
 徳川慶喜、西郷隆盛、大久保利通、大隈重信など、国づくりに奔走する多くの人々との関わりが、実に興味深かった。そこには日本が新しく生まれ変わる混沌と初々しさがあり、わき上がる熱気が感じられる。
 渋沢の人間形成の過程と明治維新前後の近代日本の歴史を重ねることで、組織のあり方、組織を率いる人々のあり方を国づくりという大きな視野で示している。
 スケールの大きな、強力なリーダーシップを持つ人物が日本では一昔前に比べ、急激に減少していると言われている。どのような条件が本物のリーダーを育てるのかという視点からも示唆に富む、真に実のある作品。

雄気堂々〈上〉
雄気堂々〈下〉

黄金の日日

 戦国時代の堺の商人たちが、財力をもって為政者たちと対峙した姿を描く城山三郎の小説。経済という切り口から信長・秀吉の時代をとらえ、気概にあふれる堺の姿が活き活きと描かれている。舞台はフィリピンにまで及び、その雄大な物語にしばし時を忘れて読みふける。経済が人の心で動いていることをまざまざと感じさせてくれる。

黄金の日日
城山 三郎

太郎の国の物語

 1989(平成元)年、NHKスペシャルで、「太郎の国の物語」が放映された。司馬遼太郎の語りで、幕末から明治にかけてを綴ったドキュメンタリーであった。司馬遼太郎の味わいのある語りと、日本の原風景を思わせる映像で、静謐の中にも心の深奥に迫る貴重な作品であった。

太郎の国の物語
B00005RS1R

菜の花忌

 1996年2月12日、司馬遼太郎が死去した。享年72歳。忌日は、生前好きだった菜の花にちなみ、「菜の花忌」と呼ばれる。今年は、没後10年にあたる。
 司馬遼太郎の膨大な作品群で、あえてひとつあげるとすれば、生きていれば最も会いたかったという高田屋嘉兵衛を描いた「菜の花の沖」が第一に思い浮かぶ。あまりに素晴しい作品なので、後でゆっくり語りたい。

菜の花の沖〈1〉
司馬 遼太郎
4167105861

新選組!

 三谷幸喜の脚本で、大いに楽しませてくれたNHK大河ドラマ「新選組!」の総集編再放送と、その後を描く「新選組!! 土方歳三 最期の一日」がNHK総合で放映される。

 新選組!の初回ラストシーンで、近藤勇と土方歳三が裸で抱き合い、坂本龍馬、桂小五郎、佐久間象山がそばにいて黒船を見ているという構図に、いったいこの先どうなってしまうのだろうと不安があった。しかし、回が進むにつれ、次第に引込まれていった。
 特に、芹沢鴨(佐藤浩市)と近藤勇たちの確執を描く場面は緊迫感に満ちており目が離せなかった。第20回の芹沢と桂小五郎(石黒賢)の気迫あるやりとり、第24回の新見錦が切腹に追いやられる鬼気迫る場面など、印象に残る回が実に多かった。
 山南(堺雅人)が切腹した後で、香取慎吾、山本耕史が役者であることを忘れて泣いていたが、それが自然と胸を打った。
 もう、史実うんぬんではなく、巧みな台詞と伏線の妙を駆使した、見事な青春群像の描きっぷりに、理屈抜きに喝采を送りたい。

 「土方歳三 最期の一日」は、土方と榎本武揚(片岡愛之助)とのやりとりが秀逸だった。このような、前向きで密度の濃い脚本は大好きだ。普通に描けばどうしても暗い話になるはずなのに、明日も頑張ろうという気にさせてくれる、魅力ある作品に仕上がっていた。

NHK 新選組!! 土方歳三 最期の一日

新選組!! 土方歳三最期の一日
三谷幸喜 山本耕史 片岡愛之助
B000E9WZPK

新選組 ! 完全版 第壱集
香取慎吾 山本耕史 藤原竜也
B0001GGTG2
新選組 ! 完全版 第弐集
香取慎吾 山本耕史 藤原竜也
B0006OJ7TA

歳月

 明治維新政府で司法卿として敏腕をふるった江藤新平の生涯を描く、司馬遼太郎の「歳月」。明晰な頭脳を持ち、近代司法制度の基礎を作り、廃藩置県を断行するなど大きな功績を残しながらも、佐賀の乱に身を投じる波乱の人生を、様々な視点から活写している。
 佐賀藩主、鍋島閑叟との関わりや、征韓論のくだりがたいへん興味深かった。
 江藤ほどの才人をも掌におさめる大久保利通に凄みを感じた。

歳月
司馬 遼太郎
4061310399

燃えよ剣

 新選組副長、土方歳三を描いた司馬遼太郎の長編小説。文句なしに徹頭徹尾おもしろい。幕末の奔流の中で、男気を貫く土方の姿は、ほんとうに格好良い。まさしく男のロマン。

燃えよ剣 (上巻)
司馬 遼太郎
410115208X
燃えよ剣 (下巻)
司馬 遼太郎
4101152098

落日燃ゆ

 広田弘毅-東京裁判で死刑判決を受けたA級戦犯のうち、ただ一人の文官であった元総理、外務大臣。その生き様を、戦争に突入する世相の中で描く城山三郎の小説。

 広田は軍部の台頭による戦争の拡大を阻止しようと外務大臣として努めたが、結果は、その首謀者たる軍人たちと共に絞首刑となった。

 広田の実直な生き様には、自然と襟を正す思いであった。吉田茂、幣原喜重郎、松岡洋右など、他の外相の姿勢も興味深い。

 何より巣鴨拘置所での広田の様子と東京裁判の進行が交互に描かれる終盤は、胸に迫るものがあった。史実を積み重ねる淡々とした筆致だが、それゆえにこそ、作者の思いがじっくりと伝わってくる。静かな感銘が、読後も長く続いている。

落日燃ゆ (新潮文庫)
城山 三郎

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