茄子 アンダルシアの夏

 黒田硫黄の短編漫画を原作とした、高坂希太郎監督による映画「アンダルシアの夏」。自転車ロードレースをモチーフに、登場人物の人生が語られる。良質の掌編小説の趣きがある。

茄子 アンダルシアの夏【Blu-ray】 [ 大泉洋 ]
高坂希太郎

藍染め

 子どもたちが、高崎染料植物園のワークショップ「藍染でおじいちゃんおばあちゃんに巾着を染めよう」に参加する。前回は家族で草木染を体験したが、今度は子どもたちだけで藍染めに挑戦する。
Aizome01  巾着袋をひもなどで縛って、藍の染料が入ったカメに何度か沈める。縛ったところが模様となって、鮮やかな藍色の巾着袋が出来上がる。敬老の日の、素敵なプレゼントができて、子どもたちも喜んだ。おばあちゃんに渡すことをいまから楽しみにしている。

高崎市染料植物園

高崎市染料植物園

Senryo01  高崎市染料植物園の「夏休み親子草木染教室」に参加する。
 高崎市染料植物園は、白衣観音を裏から望む丘陵にある、緑ゆたかなスポット。広大な敷地に樹木や花々をぬって遊歩道が敷かれている。実習会場は、園内の染色工芸館。

Senryo02  この日の実習には、8組ほどの親子が参加した。最初に、花壇からオレンジやイエローのマリーゴールドの花を摘む。つみとる量は、染めるものの重さと同じか、2倍とのこと。バケツいっぱいに入れられた花を持ち帰り、水と一緒になべで煮る。

Senryo03  染める煮汁を作っている間、ビニールひもや輪ゴムを使ってTシャツをしばる。しばったところが、白く残り模様となるのだが、ほんとうにイメージどうりに仕上がるのか分からないところが、ワクワクしてよい。

Senryo04  マリーゴールドを煮込んで濾した液は、赤茶色になっている。この液の中にTシャツを入れ、かきまわしながら煮る。コンソメスープを作っているようだ。
 沸騰して10分かきまわしてから取り出し、媒染液に30分ひたす。媒染液は、色を定着させるためのもので、アルミから作ったものと、鉄からつくったものの2種類が用意された。媒染液により、色が違ってくる。
 媒染したTシャツをよく水洗いした後、もう一度煮て染める。

Senryo05  Tシャツを水洗いし、しぼりを取ると、模様が浮かび上がる。鮮やかな黄色と、深みのあるオリーブ色の2種類の草木染Tシャツが出来上がった。
 子どもたちは、自分たちで模様をつけたオリジナルTシャツに満足していた。次回の藍染めの実習にも参加し、おばあちゃんの巾着袋を作って敬老の日にプレゼントするようだ。

高崎市染料植物園

ミリー―天使にであった女の子のお話

 グリムが母を亡くしたミリーという少女に宛てた手紙に添えられた物語を、モーリス・センダックが絵本としてよみがえらせた作品。センダックの精緻で幻想的な絵に目を瞠る。

ミリー―天使にであった女の子のお話
神宮 輝夫 ヴィルヘルム・グリム モーリス・センダック
4593502195

ファンタジア

 ディズニー不滅の名作「ファンタジア」。「魔法使いの弟子」を聴くと、ミッキーマウスが演じるこの作品が自然と思い出される。
 クラシックの名曲と流麗なアニメーションが融和した映像はどれも素晴らしいが、「くるみ割り人形」の音楽による、冬が訪れるシーンの繊細さと優美さには、ため息が出るほど感銘を受けた。1940年の制作であることに驚嘆する。
 何度見ても魅了されるアニメーションの金字塔。

ファンタジア
ベン・シャープスティーン ウォルト・ディズニー
B000FEI530

エリカ 奇跡のいのち

 柳田邦男氏の講演会で紹介された絵本「エリカ 奇跡のいのち」を見る。時をそこに永遠にとどめたような稠密な絵に、目を見張る。赤ん坊のとき、強制収容所ダッハウへ向かう列車の小窓から外へ放り投げられ、奇跡的に生き延びた女性の凛然とした言葉に胸を打たれる。

エリカ 奇跡のいのち
ルース・バンダー ジー ロベルト インノチェンティ
4062124858

柳田邦男氏 講演会

「いのちと響き合う絵本」

 上記の演題で、柳田邦男氏の講演会が11月18日に群馬県総合教育センターで催された。主催は群馬県読み聞かせグループ連絡協議会。約300名の聴衆が会場のホールを埋め尽くした。

 「マッハの恐怖」などで航空機事故に挑み、「ガン回廊の朝」「「死の医学」への序章」などで、癌や末期医療を取り上げた柳田邦男氏である。鋭く問題提起をする著述から、講演の内容はかなり硬派な話であろうと想像していた。しかし、その予想は喜ばしい形で裏切られた。

 「絵本「もこもこもこ」を広げ、『もこ、もこもこ』とおじいちゃんがいっていると、孫が『おじいちゃん、何それ』と寄ってきたりして、いいですよね。」
と柔和な表情で語りかける。
 「書斎の三分の一が絵本で埋まっています。」という氏は、このところ日本人の心の問題を多く扱い、絵本について精力的に取り組んでいる。
 今回の講演は、スライドを用いて絵本の紹介をしながら、その背後にあるものや、育てるべきものを静かに語りかける内容であった。

4033283005  美しい自然と、少女の情感を詩的に歌い上げた「月夜のみみずく」は、工藤直子氏の日本語訳も素晴らしい。
 柳田氏は、朗読をしながらこの本のよさをじっくりと語った。
456968470X  「そらとぶアヒル」などの作者、内田麟太郎氏が絵本「おかあさんになるってどんなこと」に込めた思いが語られた。実母との死別、虐待の経験など、いたく感動的な話であった。
4566002640  幼い弟が病気で死にむかおうとしたとき、それをまだ幼い兄や姉に伝えなければならない場面で、医師は絵本「わすれられないおくりもの」を取り出し、静かに朗読した。
4097261517  柳田邦男氏が翻訳した、「ぼくはだれもいない世界の果てで」は、ひとりでいること、考えることの大切さを自然への愛おしさを込めて表わしている。
4834001121  モンゴルの民話「スーホの白い馬」を元にした劇を、障害者の学級の子どもたちがぜひやりたいと言い、影絵の芝居とした。主役を演じたやっちゃんは、たどたどしい台詞で熱演し、いままでいじめていた健常者の生徒の涙をさそい、「ごめんね」という言葉とともに交流が始まった。
 やっちゃんは、その後、火事によって死んでしまう。担任をした先生は、モンゴルに行きたいというやっちゃんの思いに答えるため、遺灰を持ってモンゴルに渡る。話を聞いた現地の人々は、馬頭琴を実際に奏してくれる。これをきっかけに、やっちゃんのいた福山で、障害児たちのためにモンゴルの人々による馬頭琴のコンサートが行われた。
4062124858  柳田邦男氏が、最後の一文に頭を貫かれ、翻訳して日本に送り出した「エリカ 奇跡のいのち」
 第二次大戦中、ナチスによってダッハウの強制収容所に送られる貨物列車の中で、母は抱いている赤ん坊を小窓から外に投げ出した。奇跡的に生き延びた少女とその思い。

 このように、柳田氏は、絵本に込められた数々の思いやそれにまつわるエピソードを語っていった。その他に、次のような本が紹介された。並べると、あらためてメッセージ性の豊かさを感じる。

きりのなかのはりねずみ
ユーリー ノルシュテイン
4834017052
だくちる だくちる―はじめてのうた
阪田 寛夫 V.ベレストフ
4834012204
あの森へ
クレア・A. ニヴォラ 柳田 邦男  
4566007901
ごんぎつね
新美 南吉 黒井 健
4039632702
だいじょうぶだよ、ゾウさん
ローレンス ブルギニョン
4894234386
でも すきだよ おばあちゃん
S. ローソン C. マガール 柳田 邦男 
4062830035

 「高度経済成長期のツケがまわってきたのか、躾などあたりまえのことが受け容れられない時代になっています。子育ては分析的にはいかないし、教育の問題はすぐに解決するものではないでしょう。ひとつ言えるのは、大人が心を耕さなければならないということです。」

 柳田氏の一言一言は、日本におけるノン・フィクションの分野を確立し、ジャーナリズムの精神を貫いた体験に裏打ちされ、実に説得力があった。
 「失望はしても、絶望はしない」
 氏は絵本を通し、柔和な表情の奥にある鋭い眼差しでメッセージを送り続けている。

Yanagida  講演の後に、ステージ上でサイン会が行われた。ホールの最後尾に達する長い列ができたにもかかわらず、氏はサインを求めるひとり一人の名前とメッセージを見事な筆跡で丁寧に記していた。その愚直なまでの真摯な姿に頭が下がった。

「ホルス」の映像表現

 「太陽の王子ホルスの大冒険」の様々なシーンについて、この作品が初の長編演出となった高畑勲が解説した本。どのような意図で演出をし、どんな表現技法が使われたかが詳細に記されている。この作品の各シーンがいかに思い入れを込めて作られているかが如実に伝わってくる。そして、当時の技術でいかに試行錯誤がなされ、その蓄積が他のアニメーションに生かされたかが語られている。表現技法のテキストともなりうる、アニメに対する深い洞察が記された貴重な本。

「ホルス」の映像表現
高畑 勲
4196695140

赤い風車

 「ムーラン・ルージュ」のポスターなどで有名な画家ロートレックを描いた映画「赤い風車」。酒場の踊り子たちをその場でスケッチするシーンは、躍動感にあふれ、たいへん魅せられた。
 フォセ・ファーラーは、子どもの背丈ほどしかないロートレックを、膝を折り靴をしばりつけて演じた。
 パリに生きる画家を陰影に富んだ美しい映像で描く名作。

ムーラン・ルージュ 赤い風車
ピエール・ラミュール ジョン・ヒューストン アンソニー・ヴェイラー
B000666Y6C

追跡 ムソルグスキー 「展覧会の絵」

 ムソルグスキーは、友人の建築家・画家のハルトマン(ガルトマン)の遺作展の絵からイマジネーションを受け、「展覧会の絵」を作曲したと言われている。では、それぞれの音楽の基になったのは、どのような絵であったろうか。

 それらの絵を、団伊玖磨氏がNHK取材班とともに探し求めたNHKスペシャル「革命に消えた絵画」をまとめた本が「追跡 ムソルグスキー『展覧会の絵』」 である。ムソルグスキーの交友や作曲された当時の時代背景をもとに、名曲「展覧会の絵」のルーツに迫っていく。
 ハルトマンの味わいのある絵や、ロシアの美しい写真とともにロシアの芸術家の足跡をたどる素敵な本。

 現在、絶版のようだが、休八さんのサイト「『展覧会の絵』の展覧会」で復刊希望を募っている。

「展覧会の絵」の展覧会

追跡 ムソルグスキー『展覧会の絵』
団 伊玖磨 NHK取材班
4140800623

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