シン・ゴジラ

 東京湾から突如現れた巨大不明生物に立ち向かう人々を描いた庵野秀明監督の映画「シン・ゴジラ」。それは、空想科学映像への思いを込めた渾身の作品であった。
 未曾有の事態に対応する政府の動きが、ドキュメンタリータッチで極めてリアルに描かれている。その映像は、震災、原発事故に遭遇した日本の危機管理の姿を突きつけるものでもあった。緻密な取材で丹念に緊急時の対応を表現することで、示唆に富んだポリティカル・ドラマともなっている。
 多彩な俳優が「内閣総理大臣補佐官 赤坂秀樹」など役職と氏名がテロップで紹介されながら登場する。そのテロップも一瞬出されるだけで、人物は次々と現れ、早口に専門用語を喋りながら動き回る。情報量の多さに圧倒されるが、まったく飽きない。むしろそのテンポが快くすらなってくる。神の化身のようなゴジラに立ち向かうためには、人間にもそれだけの頭脳と回転の速さが必要とされる。まさに、知能戦であることが具現化されている。
 この映画では、登場人物の多さゆえに、感情移入できる人が少なくないことが魅力のひとつ。個人的には、平泉成が演じる、総理大臣に成り行きでなってしまった里見祐介が味があっていいと感じた。「菜根譚」など中国の処世訓や思想をもちつつ自分に力がないことを自覚し、後進へ繋がることを考え地道にできることに取り組む姿が印象に残る。
 虚構と現実を徹底して追求した、何度も見たくなる圧巻の空想科学映画。

シン・ゴジラ Blu-ray2枚組

三宅由佳莉 THE BEST ~DEEP BLUE SPIRITS~

 海上自衛隊東京音楽隊のソプラノ歌手、三宅由佳莉のベスト盤。
 「祈り」「花は咲く」など、思いを込めたひたむきな歌声は、技巧を越えて胸に響く。
 「キューティーハニー」「木綿のハンカチーフ」はこの上ないかわいらしさ。
 海上自衛隊東京音楽隊の熱のこもった演奏も見事。実直で前向きな歌唱が力を与えてくれるアルバム。    

THE BEST ~DEEP BLUE SPIRITS~
海上自衛隊東京音楽隊

響け!ブラバン・ヒーローズ

 「ウルトラマン・シリーズ」「マジンガーZ」「ガンダム」など、特撮やアニメ・ヒーローのテーマ曲を、海上自衛隊東京音楽隊が演奏するCD。正義と平和を愛する心に共感するためか、とても熱い演奏である。いやあ、素晴らしい。
 特に、海上自衛隊の歌姫、三宅由佳莉さんが加わる曲がいい。「GO!GO!トリトン」の正当な歌唱、「キューティーハニー」の少し恥ずかしい感が伝わる声、「ベルサイユのばら」の耳朶に残る真っ直ぐな表現。海上自衛隊の制服に身をまとい、実直に規律正しく歌い上げている。
 アニメファン必聴のアルバム。

響け!ブラバン・ヒーローズ
海上自衛隊東京音楽隊 三宅由佳莉 手塚裕之 川上良司

果しなき流れの果に

 奈良の遺跡の奥から、永遠に砂の流れ続ける砂時計が出土される。関係者は、それぞれ数奇な運命をたどることになる。
 時空を越えて壮大なスケールで描かれる小松左京の長編小説。1965年に執筆されたことに驚きを感じる。そのイマジネーションの豊かさには圧倒される。読後感も素晴らしい余韻が残る。
 日本におけるSFの金字塔。 

果しなき流れの果に (ハルキ文庫)
小松 左京

復活の日

 小松左京が1964年に書き下ろした小説を、角川春樹が懇願して映画化した。細菌兵器や核の恐怖などを、緻密な設定でスケール感豊に描くSFの大傑作。
 大規模な南極ロケを敢行し、ジョージ・ケネディ、グレン・フォード、オリヴィア・ハッセーなど一流の国際スターを起用するなど、凄い意気込み。
 映画は1980年に公開され、今なお重みをもって迫る作品である。

復活の日

極限の彼方

 起伏に富んだ、優れた小説を集めたアンソロジー「冒険の森へ」第5集、「極限の彼方」。収録作品は、
【掌編】氷川瓏「乳母車」、五木寛之「無理心中恨返本」、星新一「ねらわれた星」、平井和正「世界の滅びる夜」
【短編】村山槐多「悪魔の舌」、手塚治虫「妖蕈譚(ようじんたん)」、武田泰淳「流人島にて」、石原慎太郎「処刑の部屋」、白石一郎「元禄武士道」、小松左京「ゴルディアスの結び目」
【長編】田中光二「大いなる逃亡」、新田次郎「八甲田山死の彷徨」
 さすがに傑作選だけあって、どの作品も読む楽しさを味わえた。

冒険の森へ 傑作小説大全 5 極限の彼方 (冒険の森へ 傑作小説大全5)
田中 光二 新田 次郎 村山 槐多 手塚 治虫 武田 泰淳 石原 慎太郎 白石 一郎 小松 左京 氷川 瓏 五木 寛之 星 新一 平井 和正 逢坂 剛

葉桜の季節に君を想うということ

 テンポ良い起伏に富んだストーリーと、登場人物のかけあいの妙があり、すいすい読み進められる。破綻なくまとめる手腕はなかなかのものである。叙述ミステリーの傑作。

葉桜の季節に君を想うということ (文春文庫)
歌野 晶午

THE BEATLES 1962 - 1966

 "Love Me Do" "Please Please Me" "I Want To Hold Your Hand" "Ticket To Ride" "Yesterday" "Help!" "Michelle" "Yellow Submarine" …
 1962年から1966年にビートルズが発表したヒット曲を集めたいわゆる「赤盤」。奇跡のように次々と名曲が生み出されていることにあらためて驚く。後世に残る名盤中の名盤。

1962~1966
THE BEATLES

シンフォニック・ポップス

 「蘇州夜曲」「恋のバカンス」「異邦人」「なごり雪」「見上げてごらん夜の星を」など、日本ポップスの名曲がオーケストラで演奏される。様々なジャンルの曲とコラボされ、華々しいアレンジで縦横無尽に奏されるサウンドは圧巻。

ゴールデン・タイム Symphonic Pops~見上げてごらん夜の星を~
宮川彬良 宮川彬良&大阪フィルハーモニーオーケストラ

ベスト・オブ・鈴木章治

 スウィング・クラリネット奏者、鈴木章治のベスト・アルバム。クラリネットのやわらかな音色が、見事なスコアで引き立つ。
 「鈴懸の径」は何度聴いても素晴らしい。「恋人よ我に帰れ」の熱きプレイには引き込まれる。日本のモダン・ジャズの良さを伝える名演集。

ベスト・オブ・鈴木章治

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