THE テーマ シエナ・ウインド・オーケストラ

 シエナ・ウインド・オーケストラ演奏の2枚組CD。いやあ、これは素晴らしい。
 「ロッキー」に始まり、映画音楽集かと思ったら、テレビ番組テーマ曲の演奏もあり、次々と懐かしい曲が流れてくるではないか。
 特に、テレビのロードショー番組メドレーは感涙ものの懐かしさ。DVDやVHSビデオなどがない時代、映画はそれが放送される時間に、テレビの前に座って見なければならなかった。日曜洋画劇場は淀川長治の解説も見る者の気分を盛り上げ、映画の魅力を伝えてくれた。洋画劇場、ロードショー番組のオープニングは、昭和のテレビ世代にとって真に映画の入り口であった。
 オリジナルの雰囲気を壊さず、華麗なサウンドで繰り広げられる粋な曲のオン・パレード。それらは曲名を見ずに耳を傾けていると、心により大きな起伏を生み出してくれる。
 まさに、圧巻のテーマ曲集。

無職転生 23

 アニメ「無職転生」第23話は「目覚め、一歩、」。第1期の最終話。
 ルーデウスは失意の底に沈み、前世と同じく引きこもる。同時に、ルーデウスに関わった人々はそれぞれの歩みを始める。ルーデウスもやがて一歩を踏み出す。
 アニメーション技法と書法を駆使し、見る者をその世界に引きずり込む。転生ものの先駆的作品にして、動き、背景、音楽、声優陣の演技、すべてが一体となり職人芸的なこだわりが横溢し見事な世界を作り上げた名編。

無職転生
Musyokutensei23

無職転生 14

 アニメ「無職転生」第14話は「只より高いものはない」。冒頭から一気に森に住まう集落の描写に息をのみ、その世界観に引き込まれる。
 後半の戦闘シーンも迫力満点。一筋縄ではいかないラスト。どれをとっても渾身の作品であることが伝わる。

無職転生
Musyokutensei14

無職転生 2

 アニメ「無職転生」第2話は「師匠」。3歳になり、魔法の才能をみせるルーデウスについた家庭教師、ロキシーにより、ルーデウスは魔法の力を高めていく。やがて卒業試験を迎えるが…。
 自然描写が際立って美しい。時折はさまれる男の過去が対照的に暗く、作品に陰影を与えている。1話、2話で完成度の高いエピローグとなっており、今後の少年が歩むであろう世界の広がりに身を委ねたくなる。

無職転生
Musyokutensei02

無職転生 1

 「無職転生」は、剣と魔法の世界を舞台としたアニメ。実にありがちな設定である。「異世界に行ったら本気だす」というサブタイトルも、何じゃこりゃという感じである。
 冒頭、唐突に自動車事故にあった男のシーンから始まる。雨に打たれ男が最後の時を迎える。一転して、中世風の家で赤ん坊が生まれる。現世で引きこもっていた男が、その記憶を保ったまま生まれ変わる。赤ん坊は父母の愛情に恵まれ、すくすくと育っていき、やがて魔法の能力を発揮していく。
 よくある展開に思われるが、物語を支える自然描写がたいへんに美しい。また、家の佇まいや調度、食事など、細かい設定がたいへんにリアルである。そして、現世の記憶を引きずったまま育っていく子どもになぜか関心が高まっていくのである。それは、過去の男と現在の子ども二人の声優が受け持ち、それぞれが巧みに役回りを演じていることにもあるだろう。そう、これはスタッフの意気込みが半端ではない職人芸的なアニメなのである。
 既視感と親しみのある剣と魔法の世界をあえて選び、アニメーション技法と書法を駆使して人間模様を丁寧に描いた見事な作品である。

無職転生
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ベイカー街の亡霊

 劇場版名探偵コナン第6作「ベイカー街の亡霊」は、野沢尚が脚本を手がけた。シャーロック・ホームズゆかりの英国を舞台にするために、何度も想を練り、脚本を書き直したとのこと。物語がしっかりとした映画に仕上がっている。
 野沢尚は、「破線のマリス」で第43回江戸川乱歩賞を受賞するなど、推理小説作家としても活躍していた。本格推理小説の祖とも言えるコナン・ドイルが生んだ、ホームズにちなんだ作品を創ることには、思い入れもあったのではないか。この映画では、ドイルへのオマージュのように、ホームズ・シリーズゆかりの登場人物や地名がたくさん登場する。

 「青い鳥」「眠れる森」「緋色の記憶」など、多くの優れた作品を生み出した野沢尚は、NHKスペシャル・ドラマ「坂の上の雲」の初稿を残して自殺してしまう。作品は高く評価され、今後も期待がされていたのに、なぜ死を遂げたのかは余人の知るところではない。しかし、きっちりと構成された職人芸的で、しかもなお透明感と奥行きのある作品世界は、今後も生き続けるであろう。

瞳の中の暗殺者

 劇場版名探偵コナン第4作「瞳の中の暗殺者」。警察関係者が相次いで襲われる事件に、コナンの正体である工藤新一の幼なじみ、毛利蘭が巻き込まれる。
 新一と蘭との思い出の場所となった遊園地、トロピカルランドのシーンが多く、アトラクションを駆使した後半の展開にはことに力が入っている。
 ミステリーとしての要素が色濃く、シリーズ中でも犯人の設定が際立っている。バランスの良い脚本とサスペンスに支えられた、優れた恋愛ミステリーとなっている。

 白鳥警部役の声優、塩沢兼人は、本作の公開直後に転落事故で亡くなってしまう。
 「Need not to know」の美声が今でも耳朶の奥にこだましている。

瞳の中の暗殺者

時計じかけの摩天楼

 「名探偵コナン」の劇場版第1作「時計じかけの摩天楼」。シリーズ最初の映画ということもあり、数々のアイディアが詰め込まれている。背景の絵がよく描かれており、繰り返し見ることができるのは、街の雰囲気がよく表現されている背景美術に依るところが大きい。
 「新幹線大爆破」「ジャガーノート」など映画へのオマージュもちりばめられ、見所の多い作品。

天地明察 映画

「天理は、算術と観測、どちらが欠けても成り立たん。」
「私たちが小さいのではない、世が大きいのだ。天はさらに広大だ。」

 冲方丁の小説「天地明察」を原作とする岡田准一主演の映画。滝田洋二郎監督による2012年公開作品。
 江戸初期の天文、和算に関する小道具を緻密に配置し、丁寧に映像化されている。個性的な俳優が競演し、起伏に富む物語にまとめあげている。
 数理の重要さを示す、志をもった映画。

天地明察

天地明察

 江戸時代初期、暦の作成に精魂を傾けた渋川春海の生き様を描いた冲方丁の小説「天地明察」。江戸城で囲碁を指南する渋川春海は、神社の絵馬に数学の問題を掲げた「算額」から、和算に惹かれていく。
 関孝和、保科正之など魅力的な人物を配しながら、江戸初期の天文学、和算の動きをからめて和暦の成立をダイナミックに描く。時代小説であるが、ライトノベルのようにスラスラ読める。爽やかな歴史エンターテイメント。
 第31回吉川英治文学新人賞、第7回本屋大賞受賞作品。

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