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ONE PIECE (1)

 元気な海賊たちの冒険コミック、「ONE PIECE」。最初は、子ども向けの漫画と思ってあまり関心がなかったが、原作を読んだら、意外に面白いではないか。尾田栄一郎という若い漫画家の「心意気」をストレートに感じる。

 冒頭の、ルフィの子どもの頃のエピソードがいい。ウソップが自分の村でのエピソードにも感動した。ナミの子供時代の話も、もう人に見せられない顔で読んだ。仲間一人ひとりが背景をもっていて、その上にそれぞれが夢を持って進む明るさが快い。「作家魂」をもった人が描くから、支持があって長く続いているのだろう。

One piece (巻1)
尾田 栄一郎
4088725093

ドラゴン桜 (1)

 「教えてやる!東大は簡単だ!!」

 倒産の危機にある高校を建て直すために、債権整理にやってきた弁護士が、東大合格者の輩出を目指すコミック。

 強烈に面白い。一晩で1巻から4巻までを読んだが、次から次に受験のテクニックが、インパクトのある描写で披露される。受験生の葛藤、教師の在り方など、様々な視点が盛り込まれており、ストーリーに引込まれた。

 とにかく勉強することを前向きに捉えている点が素晴らしい。そう、高校生は、勉強に真剣に取り組んでいる自分を、もっと誇りに思っていいのだ。

ドラゴン桜(1) (モーニング KC)
4063289095

ノイマン マーラー交響曲第9番

 最初にマーラー交響曲第9番を耳にしたのは、ヴァーツラフ・ノイマン指揮、チェコ・フィルハーモニー管弦楽団、1982年演奏のCDであった。自分がマーラーを聴き始めて間もない頃のことで、このCDを選んだのも、店頭で並んでいたCDの中で、一番値段が安かったという、単純な理由だったように思う。CDを買った帰りの車の中で聴き始めたが、冒頭から、ああ、なんという曲なんだろうと嘆息した。たゆたう清流のような、風で水面を波立たせる湖のような、心の琴線をふるわせる音楽であった。これはカーステレオで聴くにはあまりにもったいないと思い、すぐにCDを取り出した覚えがある。

 ノイマンの演奏は、バーンスタインのいかにも入魂という演奏と違い、比較的端然とした演奏である。しかし、それゆえに曲の素晴らしさが静かに深く伝わってくる。今日改めて聴いてみて、その感をいっそう強くした。特に、第4楽章の清らかな美しさは、自然と沁み入ってくる。

 このあまりに深い名曲については、今後もふれていきたい。

マーラー:交響曲第9番
チェコ・フィルハーモニー管弦楽団 マーラー ノイマン(バーツラフ)
B00005EOKN

メッセンジャー

 「私をスキーに連れてって」のホイチョイ・プロダクションズが1999年にプロデュースした、自転車便のライダーを描く快作。これも「海猿」同様、たいへん心地よい青春映画だった。

 脚本も練りに練ったようだ。飯島直子演じる主役が、ブランドに囲まれる優雅な生活から、倒産により一転、汗を流す仕事に関わり仲間と交流していく様が自然に描かれている。

 かつての青春映画スター加山雄三が、若者たちと本当に楽しそうに演じていたのが印象に残っている。

メッセンジャー [DVD]
飯島直子 草ナギ剛  馬場康夫
B0000DJWIR

海猿

 昨年夏に上映された「海猿」を、遅ればせながら録画で見る。日本映画は「超大作」と銘打ったものはハズすことが多いのだが、青春映画は割と良作が多い。この作品も、素直によかった。

 海上保安庁の潜水士を目指して訓練を積む若者たちの友情、恋愛と、オーソドックスな描き方だが、そのストレートさにたいへん好感が持てた。海でのシーンは、「亡国のイージス」より遙かに緊迫感があった。

 テレビドラマの電車男を演じる伊藤淳史が、ここでも不器用だがひたむきな役を演じ、存在感を示していた。

海猿
伊藤英明 佐藤秀峰 羽住英一郎
B0001X9D3Q

リヴィエラを撃て

 ブラームスのピアノ協奏曲第2番を聴いたら、高村薫の「リヴィエラを撃て」を思い出した。感想を書こうと思ったら、「そんなときこんな本」で、すでに下のような紹介をしていた。

 謎の東洋人「リヴィエラ」をめぐっての諜報戦が圧倒的にリアルに描かれます。IRAテロリストとピアニストとの交流という不思議な旋律を持ちながら、主旋律は極めて硬質な響きを保っています。ブラームスのピアノ協奏曲第2番が象徴的な曲となっています。冒険小説の格調高い名作。

リヴィエラを撃て〈上〉
高村 薫
410134714X
リヴェエラを撃て〈下〉
高村 薫
4101347158

バックハウス ブラームスピアノ協奏曲第2番

 ブラームスのピアノ協奏曲第2番、ピアノ:バックハウス、指揮:カール・ベーム、演奏:ウィーン・フィル、というこの上なく贅沢な組合せのCDを聴く。派手さはないが、それぞれがこの名曲に真摯に向かい合っており、深い味わいがある。風格のある演奏。

ブラームス : ピアノ協奏曲 第2番 変ロ長調 作品83
バックハウス(ウィルヘルム) ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 ブラペック(エマヌエル)
B00005FLU5

ジャンヌ・ダルクッテ

 同僚が劇に参加するというので、見に行く。劇団ザ・マルク・シアターの「ジャンヌ・ダルクッテ」。ジャンヌ・ダルクの姪が貴族との縁談をふりきるために、「剣」と「御旗」を探しに旅立つという話。脚本は、主宰の生方保光氏のオリジナルである。劇団の皆さんは、昼間は仕事があり、平日の夜と休日に練習を積み、2時間15分に及ぶ大作を熱演した。

 演技が皆さん上手で、楽しめた。参加した同僚も、正式な団員ではないので、端役かと思ったら、結構重要な役どころを演じていた。大いに自己実現をはかれたことだろう。職場に出てきたときには、声が枯れていた。本番で大きな声を出したからですかと聞くと、劇の後、打ち上げの会で喋りすぎたせいだと言う。そりゃあ、あれだけ打ち込めれば、話もはずみ、その時のビールはさぞうまかったことだろう。

劇団ザ・マルク・シアター

ワルター マーラー第1番

 ブルーノ・ワルター指揮、コロンビア交響楽団演奏のマーラー交響曲第1番。久しぶりに聴いたが、実に新鮮な感じがした。第1楽章では、まさしくマーラーの青春の歌とよぶにふさわしいみずみずしさがある。1960年前後の録音だが、良好な音質である。美しさと共に微妙な陰影を持たせた表現は、至芸と言っていいのではないか。 

 なんといっても、愁眉は第3楽章である。この独特な雰囲気はなんと形容していいのだろうか。マーラーのその後のすべての交響曲に連なる、不安、諦観、葬送、複数の場所から鳴り響く音の重なり合いなどの要素が凝縮された楽章である。ワルターの生み出す響きは、マーラーの世界の深みに否応なくいざなってくれる。

マーラー:交響曲第1番
ワルター(ブルーノ) マーラー
B0002ZF0EY

亡国のイージス

 亡国のイージスは、ダイ・ハードやホワイトアウト風の作品。日本を代表する俳優を多く使っているが、いまひとつ緊迫感に欠ける。佐藤浩市がこの国は守る価値がないとかなんとか言っていたが、たんなるつぶやきでまるで説得力がない。原田芳雄のぶっきらぼうな首相も悪くはないが、総理というよりは小さい組織の親分という感じ。だいいち、寺尾聰演じる副長は、十数人もの部下を巻き込んでおきながら、何であんな簡単に気持ちを翻すのか?その意思の弱さは、まさしく亡国の象徴。本物の護衛艦を使い、映像の迫力はあったものの、全体にどうも軽く感じてしまう。

 同じような内容でも、加治隆介の議で描かれているプルトニウム運搬船のシージャックのほうが、よっぽどリアルに感じた。また、少し昔の作品だが、ブルートレインで自衛隊員が反乱をおこす「皇帝のいない八月」のほうが、いろいろな意味で楽しめたように思う。

 ともかく亡国のイージスでは、扱っている題材が重い割に、この切迫感の乏しさはどうしたことか。エンターテイメントとテーマを両立させるのは、よほど優れた脚本がないと難しいということを改めて感じさせられた。

 亡国のイージス オフィシャル・サイト

皇帝のいない八月
山本薩夫 小林久三 山田信夫
B00005G2GC
ホワイトアウト
織田裕二 若松節朗 佐藤浩市
B0001WTU3A

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