平成20年8月19日、群馬大学を会場に開催された第63回関東都県算数・数学教育研究群馬(前橋)大会に参加する。
受付が朝9時に始まるので、8時半頃に行ったのだが、すでに駐車場はかなりうまっており、全体会場も多くの人で賑わっていた。
午前中は、東京大学大学院教授、佐藤学先生による記念講演で、演題は「すべての子どもの学びを大切にする教育を目指して」。1万を超す授業を検討した佐藤教授の言葉には説得力があった。平等で質の高い教育を行うための、学びの共同体を作る必要性を訴えていた。
「最初の1500校までは実践は失敗した」という言葉が印象に残る。何事もひとつの形をなすためには、数をこなすことが絶対的に必要だと感じる。
高校の数学で、話し合いにより高め合う形を、どのように具体化すればよいのか。限られた時間の中で多くの内容を伝えることが要求される現状では大きな課題。
午後、高校のコンピュータ分科会に参加する。5つの先生方の発表を聴く。入谷昭先生のシンデレラを用いた実践は興味深かった。この方も、Cinderella、Cabriなど、コンピュータのソフトを用いて多くの実践を行っている。ホームページで実践の発信も行っている。
T^3Japan第12回年回の2日目。午前中、半田真先生の「複利計算と自然対数の底」の実践発表と松木貴司先生の物理量測定の授業に関する発表を聴く。 松木先生のセッションは参加者が少なかったが、一松京大名誉教授、中澤教授、河合先生と共に、LEDを使った電子回路などにふれて楽しんだ。自然に起こる様々な現象の背後にある仕組みを的確に把握するために物理や数学を使うことが実感でき、みずから自然の仕組みを解き明かす楽しさを体験することを目的とし、様々な工夫がなされた教材を見ることができた。
午後、科学的教育グループSEGの古川昭夫氏による講演。1981年創立され、多くの人材を輩出した私塾SEGの実践内容が紹介された。「中学生に5分間で対数の概念を教えられるか」「100円電卓でlog 2 を計算させられるか」など、具体的な例示は説得力があった。軽やかな口調で語られていたが、「実験・発見・証明があって初めて本当の数学」など、重みのある言葉が多かった。
最後に参加したセッションは、海陽中等教育学校の公庄庸三(くじょうようぞう)先生による中学1年生を対象にした特別セミナーの実践発表。Deriveを用い、絶対値を用いて、様々な形のグラフを描かせる内容。一次関数すら知らない中学1年生に、関数を用いて驚くほど多様な形を創作させてしまう。「後ろには時間が動いている」と直感的にパラメータによるグラフの概念をつかませ、「A」などの文字を描かせる流れは圧巻。エネルギッシュな発表で、生徒を引き込む様が感じられた。
左図は、中学1年生の生徒が試行錯誤の末に作成した関数であるが、探求する姿勢が育っていることが如実に示されている。様々な実践の積み重ねがあって初めて成し得る奥深い教育実践と感じた。
生徒の内面を引き出すテクノロジーの多様な活用法を見ることができ、実に有意義な2日間であった。
T^3Japan 第12回年会に参加する。2008年度は、渋谷区広尾にある東京女学館高等学校で8月8日・9日の2日間で行われ、約200名の参加があった。
T^3とはTeachers Teaching with Technology(テクノロジーによる数学関連の教育)の略称であり、1987年、オハイオ州立大学でのグラフ電卓による高等学校数学の授業を試みた頃から始まった。
今年度の年会では、32のセッションが組まれ、電卓やコンピュータの数学教育への利用、理科教育との融合などの授業実践発表やワークショップが行われた。
最初に、岡山後楽園高校の河合伸昭先生による公開授業が行われた。東京女学館高校の生徒6名に対し、数学の歴史を交えながら、電卓を用いて三角比の値を求めさせる内容。古代ローマ時代のプトレマイオスが示したsin1°=0.017453…とうい値にどこまで迫れるかというテーマがベースにあった。テンポ良く進む、ストーリーのある授業で惹き付けられた。
公開授業後、同時に4~5のセッションが開かれているため、どれに参加するか迷った末、京都大学名誉教授の一松信先生の、「電卓利用の検定問題」を聴く。数学検定の誤答からみえる思考の傾向を示した、含蓄のある内容であった。
昼食後、コンピュータ室で、中込雄治先生による「作図問題とCabri」では、角の二等分線の作図が15例も示された。その中で、多様な解法を引き出す教材の重要性が示された。
古宇田大介先生の「文房具としてのCabriⅡ」を聴き、Cabriの多様な活用法を知ることができた。「生徒の内面を引き出す使い方」という言葉が印象に残った。
中澤房紀先生の「明日から使える二次関数の授業」で、グラフ電卓の扱いを学んだ。 氏家亮子先生のセッションでは、金沢工業専門高等学校でのグラフ電卓とセンサーCBL2を組み合わせた数学の実践発表を聴く。実際にグラフ電卓で、センサーから入力した音声の波形を確認し、授業の楽しさを体験できた。
午後5時半より、学内の食堂で懇親会。多くの人と交流でき、有意義な1日であった。テクノロジーは非人間的なものではなく、人をつなぐものであることを実感した。
高崎高校の文化祭、「翠巒祭」に家族で出かける。今年で56回目。2年前の第54回翠巒祭に訪れたときと同様に、多くの来場者で賑わっていた。
まず、入り口付近に飾られた4階の校舎一面を覆う巨大壁画が目に入る。「新たな視点」というテーマであり、国際宇宙ステーションを配した雄大な絵であった。
校舎内の展示を子どもたちは喜んでいた。実験などは、原理なども含めて教えてもらえたようだ。アカデミックなものより、分かりやすい内容が多く、子どもたちも楽しめたようだ。美術部で見事な切り絵が展示されており、子どもたちも創作意欲をかきたてられ、ハサミを手にして実際に作らせてもらった。
高崎高校では、文化祭を毎年行っている。隔年実施の学校が多い中、運営も大変だろうが、1年生はこの時期に行事に取り組むことで、校風を知り、上級生とのコミュニケーションも活発になり、学校に慣れる意味でも意義があるようだ。また、今年の内容や課題を次年度につなげやすいというメリットもあるようだ。
毎年、入場口に凝った作りのアーチが飾られている。今年はバチカンのサン・ピエトロ大聖堂を模した作品。趣向をこらしたアーチに、いつの年も変わることなく咲き誇るバラの花が彩りを添えていた。
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