ツィゴイネルワイゼン

 20年ほど前、山懐に抱かれた町にある職場には有線放送が常時流れていた。電話機から放送される、文字通りの有線である。それは地域の貴重な情報源でもあった。突然鳴り響くツィゴイネルワイゼンの曲は、町の人が亡くなったことの知らせであった。
 「美しい緑と澄んだ空気に包まれた○○町、その町を支えてこられた方のお一人、○○さんが亡くなられました…」
 放送された次の日には、多くの場合、複数の生徒が忌引となった。

 平成元年2月9日のことであった。夜中一人で職場で仕事をしていた時、有線放送でのニュースを聞き愕然とした。手塚治虫が亡くなったというのだ。町の人とはゆかりがないので、ツィゴイネルワイゼンは響かなかったが、自分の胸の内には、クラシック好きの手塚治虫を偲び、自然とツィゴイネルワイゼンが流れていた。

ツィゴイネルワイゼン~ヴィルトゥオーゾ・ヴァイオリン
ハイフェッツ(ヤッシャ) RCA交響楽団 サラサーテ
B00005EGXP

アルゲリッチ:リスト&ラヴェル ピアノ協奏曲集

 アルゲリッチの華麗かつ繊細なピアノが堪能できるCD。次の3曲が収められている。
リスト ピアノ協奏曲 第1番 変ホ長調
コンチェルト・パテティク(悲愴協奏曲) ホ短調(2台ピアノ版)
ラヴェル ピアノ協奏曲 ト長調

 リストのピアノ協奏曲は、スケールの大きな演奏で傑作の魅力がよく伝わってくる。シャルル・デュトワ指揮、モントリオール交響楽団も品性のある響きで息のぴったり合ったサポートをしている。
 コンチェルト・パテティクは、アルゲリッチの盟友ネルソン・フレイとの共演。ピアノの表現の豊かさに安心して心を預けられる。
 一転して雰囲気の変わる、ラヴェルのピアノ協奏曲はエスプリに富んだ作品。第1楽章は「パゴタの女王レドロネット」のような東洋的な趣と、「ラプソディ・イン・ブルー」のようなジャズやブルースの雰囲気を併せ持っている。静謐な第2楽章がことのほか素晴しい。第3楽章はゴジラやサスケのテーマを彷彿とさせる。短い曲だが、おもちゃ箱のように多くの楽しみが詰め込まれている。
 ピアノ曲の魅力をたっぷり味わえる、お薦めの1枚。

リスト:ピアノ協奏曲第1番
アルゲリッチ(マルタ) モントリオール交響楽団
B00016ZPN0

チャイコフスキー 交響曲第1番

 チャイコフスキーの交響曲は、後期の第4番から第6番が有名で、それ以前の交響曲はあまり話題にされない。チャイコフスキーの交響曲第1番を期待しないで聴いたのだが、なかなかよい曲ではないか。
 ロシアの風土を思わせる交響詩。抒情あふれる第2楽章がとりわけ美しい。

チャイコフスキー:交響曲第1番「冬の日の幻想」
スヴェトラーノフ(エフゲニ) ロシア国立交響楽団
B00006AM33

フォーレ作品集

 昨日聴いたフォーレのレクイエムは、フォーレの作品を集めた2枚組のCDの一部だ。このCDには、レクイエムの他、「ペレアスとメリザンド」「パヴァーヌ」「夢のあとに」「ラシーヌ讃歌」など、数々の名曲が収められている。
 どの曲も、静かに心を満たしてくれる。

フォーレ:作品集
オムニバス(クラシック) フィルハーモニア合唱団 ファレル(ティモシー)
B0007OE2K8

フォーレのレクイエム

 フォーレのレクイエムを聴く。ジュリーニ指揮、フィルハーモニア管弦楽団・合唱団演奏。
 静謐で敬虔な音楽にふれ、身が清められるようだ。

ブラームス ピアノ協奏曲第1番

 この長大なピアノ協奏曲を聴くと、ブラームスの天才ぶりがわかる。若干25歳の時に書き上げられた曲であるが、オーケストラの重厚な響きと高度な技法を要するピアノ・パートで構成され、すでに巨匠の晩年の作風を呈している。
 ブラームスを世に送り出したロベルト・シューマン、生涯愛情の対象であったクララ・シューマンとの出会い、恋人アガーテとの破局。それらを綴る若きブラームスのアルバムであるかのように、この協奏曲はときに激しく、時に崇高な抒情をたたえる。
 ポリーニのピアノ、アバド指揮、ベルリン・フィルによる演奏は、この大曲を格調高く歌い上げている。

ブラームス:ピアノ協奏曲第1番
ポリーニ(マウリツィオ) アバド(クラウディオ)
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
B00006BGSI

ベートーヴェンピアノ協奏曲第3番

 「アファナシエフ・プレイズ・エンペラー!」のCDは、ベートーヴェンのピアノ協奏曲第3番の演奏も収められている。第3番は、その曲調が様々な思索を巡らすアファナシエフの演奏スタイルに合っているようで、変化に富んだ楽しめる演奏だった。

プレイズ・エンペラー!
アファナシエフ(ヴァレリー) スダーン(ユベール)

アファナシエフ プレイズ・エンペラー

 アファナシエフのピアノによる、ベートーヴェンピアノ協奏曲第5番のCDを聴く。ユベール・スダーン指揮、ザルツブルク・モーツァルテウム管弦楽団演奏。
 まさしく、エンペラーと呼ぶにふさわしい絢爛豪華な曲だが、この演奏は、ちょっと様相が違った。第1楽章で最初の和音が鳴ったときは、おおっベートーヴェン!ピアノの音も良い!と期待した。しばらくはゴキゲンで聴けたのだが、しばらくしてテンポがどうもいつもと違う感じ。早くなったり遅くなったりと、ブレがあるのだ。かといって、それが不快というのではなく、ピアノは強靱なタッチで一音一音が明瞭、何か強力な意思を感じる。
 第2楽章はいよいよ思索的になり、クリアでよく響くピアノなのだが、どこか孤独な雰囲気を漂わせている。
 第3楽章のピアノの奔放さは、奏者と作曲家との間の談論風発なのだろうか。少なくとも、聴衆との対話ではないと感じた。
 孤高の芸術家と絢爛たる協奏曲との組合せは、聴いている自分のアンビバレンスを映すようであり、不思議な後味を残す演奏だった。

アファナシエフ・プレイズ・エンペラー!
アファナシエフ(ヴァレリー) スダーン(ユベール)

ベートーヴェン交響曲第4番・第8番

 小澤征爾指揮、サイトウ・キネン・オーケストラ演奏のベートーヴェン交響曲第4番・第8番を聴く。第4番は、ムラヴィンスキーのような苛烈さはないが、優美な演奏を楽しめた。精緻なアンサンブルが生き、第2楽章の緩徐楽章がとりわけ美しい。
 第8番は、比較的小編成であるが、ベートーヴェン自身、たいへん気に入っていた交響曲であると言われている。絶妙にコントロールされた、品性のある演奏。

ベートーヴェン:交響曲第4番・第8番
小澤征爾 サイトウ・キネン・オーケストラ
B00006BGUT

マーラー交響曲第7番

 「夜の歌」とよばれる、マーラー交響曲第7番は、ベルリオーズの「幻想交響曲」よりも幻想的な雰囲気に満ちている。5楽章構成で、真ん中の「影のように」と記された奇妙なスケルツォをはさみ、第2楽章と第4楽章に「夜曲」が配置されている。この2つの夜曲の独特な雰囲気には、なんとも言えない魅力がある。
 第2楽章は、夜のとばりが降り、暗くなった森に鳥たちがさえずり、動物たちが行動をはじめるような情景がうかぶ。シンガポールに行ったときのナイト・サファリを思い出した。
 第4楽章は、月夜のもとで奏でられる愛のセレナーデ。ギター、マンドリンも加わり、様々な管弦楽法に彩られながらも、かわいらしい情緒をもった曲である。この楽章だけ聴くのもいいのではと思う。
 終楽章は、音と音とのぶつかり合いで、最初にこの楽章を聴いたときには、なんだこりゃと思った。ジャングルでゴリラたちが暴れるような、めまぐるしく出し物が変わるサーカスのような、キングコングがやってくるかのような、ウッハ、ウハウハウッハッハーなやぶれかぶれの感じがたまらない。

 マイケル・ティルソン・トーマス指揮、ロンドン交響楽団による演奏は、このあまりに多くの要素が詰め込まれた交響曲を、自在なテンポと完璧なコントロールではっきりと形を示してくれる。そのため、安心してこの多様な音響の世界に浸ることができた。

 それにしても、マーラーの音楽は、本当にいろいろな楽しみ方ができるものだ。

マーラー:交響曲第7番
ロンドン交響楽団 トーマス(マイケル・ティルソン)

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