亜玖夢博士のマインドサイエンス入門

 「亜玖夢博士の経済入門」の続編。今回は脳科学をテーマとして、よりパワフルな展開になっている。
 亜玖夢博士の元に訪れる奇妙な面々は、助手による実行部隊の暗躍もあり、突拍子もない状況に至る。
 橘玲が放つ、怪走する異色のブラック・コメディ。

亜玖夢博士のマインドサイエンス入門 (文春文庫)
橘 玲

亜玖夢博士の経済入門

 長編を得意とする作家が、肩の力を抜いて短編アンソロジーを書くと、意外に面白い作品ができる。例えば、東野圭吾の「名探偵の掟」がその好例である。
 「マネーロンダリング」の橘玲による連作短編「亜玖夢博士の経済入門」も、たいへん面白い。新宿歌舞伎町裏にある亜玖夢博士の研究所に、多重債務者、ヤクの売人、マルチ商法、いじめの被害者など、様々な人物が相談に訪れる。該博な知識を元に、博士は解決法を提示する。それを忠実に実行すると…。
 「行動経済学」「囚人のジレンマ」「ネットワーク社会学」など、経済学の知見を分かりやすく紹介しながら、独特のユーモアを含んだ奇抜なストーリーに仕上げた、ブラック・コメディの快作。

亜玖夢博士の経済入門 (文春文庫)
橘 玲

マネーロンダリング

 香港在住のコンサルタントを主人公に、50億円の金の所在をめぐり様々な人物が交錯する橘玲の小説「マネーロンダリング」。
 該博な経済の情報を駆使して描く、金融サスペンスの傑作。

マネーロンダリング (幻冬舎文庫)
橘 玲

花燃ゆ 17

 NHK大河ドラマ「花燃ゆ」の第17回は、「松陰、最期の言葉」。
 松陰が幕府要人暗殺を取り調べのときに喋り、処刑になる。最後になぜか井伊直弼と対面するが、その会話の中身のなさに愕然とする。高橋英樹、伊勢谷友介といい役者が顔を合わせる場面なのに、この脚本はあんまり。演じている人々がかわいそうになってくる。

NHK大河ドラマ「花燃ゆ」

花燃ゆ 前編 (NHK大河ドラマ・ストーリー)
NHK出版
4149233683

ドラマ 64 第2回

 NHK土曜ドラマ「64」第2回は、「声」。14年前の幼女誘拐殺人事件の時効が迫る中、主人公三上は、当時関わった刑事たちの秘密にたどり着く。
 硬質な演出と寸分の隙もないストーリーで、見る者を惹き付けてやまない重厚なドラマ。 

NHK土曜ドラマ「64(ロクヨン)」

64 ロクヨン DVDBOX

花燃ゆ 16

 NHK大河ドラマ「花燃ゆ」の第16回は、「最後の食卓」。松陰が家族と最後のひとときを過ごす。
 NHKのドラマ「64」が濃密な脚本で素晴らしい。次の日にあるこの大河が逆にすごく間延びして見える。

NHK大河ドラマ「花燃ゆ」

花燃ゆ 前編 (NHK大河ドラマ・ストーリー)
NHK出版
4149233683

ドラマ 64 第1回

 横山秀夫の小説「64」がドラマ化される。それを知ったときには、胸の高鳴りすら覚えた。あの重層的な小説を、どのように映像化するのか、不安と期待が交錯する。
 NHKのホームページで、【脚本】大森寿美男を目にしたとたん、これは必見と小躍りした。NHK大河ドラマで、近年の名作といえば「風林火山」である。また、「TAROの塔」も印象に残る出来映えであった。この人なら、という思いがある。
  「クライマーズ・ハイ」のスタッフが、練りに練ってつくりあげたドラマ。それは、期待を裏切ろうはずがなかった。最後まで一時たりとも目を離せない、引き締まった映像であった。
 主人公の三上広報官を、ピエール瀧が演じる。次々と襲いかかる難題に、苦悩しつつ立ち向かう。14年前の誘拐事件の映像は、段田安則の名演技と相まってこの上ない緊迫感をもっていた。
 甘さの一切ない、キレのある映像と巧みなプロット、個性豊かな俳優の存在感により、近年まれに見る硬質なドラマが誕生した。 

NHK土曜ドラマ「64(ロクヨン)」

64 ロクヨン DVDBOX

64(ロクヨン) 下

 未解決であった誘拐事件の時効に合わせ、警視庁長官がD県の視察に訪れる。その真の目的を知った広報官三上は、自己と組織との間で苦悩し、解決に向けて奔走する。視察前日、事態は急転直下新たな局面を迎える。
 緊迫感をもった圧巻のストーリーテリングで、多彩の登場人物が交錯しながら、ラストに向かって怒濤の展開をみせる。その緻密な構成と手並みには心底感嘆する。
 上毛新聞の記者として誘拐事件を担当した作者が、渾身の思いを込めて描く警察小説の最高峰。

64(ロクヨン) 下 (文春文庫)
横山 秀夫

64(ロクヨン) 上

 昭和64年におきた誘拐事件を縦糸とし、警察における個人と組織の相克を描く横山秀夫の小説「64(ロクヨン)」。
 主人公の広報官三上に、記者との軋轢を抱えるなかで、長官視察の準備をする命が下される。視察当時までのリミットが迫る中、次々と問題と謎が生まれ、組織全体を巻き込んだドラマに発展していく。
 読む者を惹き付けてやまない警察小説の白眉。

64(ロクヨン) 上 (文春文庫)
横山 秀夫

第三の時効

 横山秀夫の「第三の時効」は、刑事たちの確執と執念を描く短編集。
 6つの短編は、どれも人間の心理を鋭く描き、優れたストーリーテリングによる読み応えのある物語となっている。すべての作品が極めて高いレベルであり、作者の力量に感嘆する。
 読み手の心をゆさぶる警察小説の傑作。

第三の時効 (集英社文庫)
横山 秀夫

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