青い鳥~わくらば~

 村上たかしのコミック「青い鳥~わくらば~」は家族を襲う悲劇と再生の物語。テーマは重いが、あたたかみのある絵柄に救われる。構成が素晴らしく、文学的な香気もただよう。心に深く残る名編。

青い鳥~わくらば~ (ビッグコミックススペシャル)
村上 たかし
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そして父になる

 「そして父になる」は、6歳になった息子が赤ちゃんのときに取り違えられていたことが分かった夫婦の心情を描いた映画。
 「誰も知らない」の是枝裕和監督が脚本も手がける。主演の福山雅治は、初の父親役。片方はエリート建築家、もう片方は小さな電気店と境遇の違う家族の交流と葛藤を丁寧に描いている。リリー・フランキーと真木よう子の夫婦が味わいを出している。
 第66回カンヌ国際映画祭審査員賞など多くの賞を得た作品。

そして父になる
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けものフレンズ 12

 「けものフレンズ」第12話は、「ゆうえんち」。多くのフレンズが登場する大団円。
 サーバルの「すごーい!」「たのしー!」の台詞でどれだけ明るい気持ちになれたことか。牧歌的な冒険の旅はロードムービー的な楽しさがあったが、背景には謎に満ちた世界があり、主人公が自分自身を知ることを目的としながら多様な個性をもったけものたちに出会うという構成にもぐっとくるものがある。
 スタッフはその世界観を具体化するため、動物の習性を調べ、フレンズの動きや性格に反映させる。吉崎観音氏のかわいらしいコンセプトデザインとも相まって、温かみのある魅力的なフレンズが登場した。声優たちの競演がその楽しさを倍加し、優しさとぬくもりのある舞台で見る側も心地良い旅を続けることができた。
 練り込まれた世界観とスタッフの熱意が生みだした奇跡のアニメ。

けものフレンズBD付オフィシャルガイドブック (6)
けものフレンズプロジェクトA
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けものフレンズ 1

 「けものフレンズの第12話がリアルタイムでみられたことは、最高の幸せだった。」
 長男がそう語っていたのを聞き、いったいそのアニメはどんなものかと思ったが、その時はそれきりであった。その後、次男がマンドリン部の演奏会で「けものフレンズ」のテーマ曲を弾くと聞いて、これを機会に録画してあったアニメを見ることにする。
 第1話「さばんなちほー」は、ヒトの形をしたネコ科のケモノ、サーバルが記憶をなくした少女と出会うところから始まる。自分は何者かを知るため、少女はサーバルに教えられた図書館を目指す。
 明るく単純な展開で、一見子ども向けアニメのようであるが、なぜか続きを見たいと強く思わせる。
 初回は広がりのある世界のほんの入り口に過ぎなかった。

けものフレンズBD付オフィシャルガイドブック (1)
けものフレンズプロジェクトA
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ウィリアム・ブレイクと神の世界

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 高崎市美術館で開催された「ウィリアム・ブレイクと神の世界」展に家族で行く。
 ギリシャ神話や聖書の世界を描いた版画を中心とした展示。稠密な線で描かれた幻想的な挿絵には引き込まれるような魅力がある。聖書『ヨブ記』を描いた連作の挿絵が印象に残る。
 ジョン・マーティンによるミルトン『失楽園』の版画では、幻想的で壮大な物語世界が展開され圧巻であった。

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 高崎市美術館に隣接する井上房一郎邸を久しぶりに訪れる。落ち着きのある空間に心を和ませる。

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 昼食後、高崎シティギャラリーに歩いて行き、「漢字三千年」展を見る。古代の動物の骨などに描かれた甲骨文字から、青銅器の内側に記された漢字など、漢字の変遷を歴史的文物で辿ることができ、興味深かった。
 絵画、書と文化を味わい、夏休みの終わりの日を家族で有意義に過ごすことができた。

高崎市美術館 ウィリアム・ブレイクと神の世界

特別展「漢字三千年」

しあわせのパン

 北海道、洞爺湖畔でのパン屋を舞台にした映画「しあわせのパン」。
 原田知世と大泉洋演じる夫婦が営む、宿泊もできるパン屋「マーニ」に、様々な人々が訪れる。おいしそうなパンや旬の野菜をあしらった料理とともに、人間模様が静かに綴られる。
  そのパンや料理のおいしそうなこと。見ているだけでほっこりとした気分になれる三島有紀子監督の名編。

しあわせのパン

天国までの百マイル

 「天国までの百マイル」は、浅田次郎の小説。事業に失敗し妻子とも別れたダメ中年が、重い心臓病を患った母親を直すためにポンコツ車で百マイルの道をひた走る。
 構成はシンプルであるが、病身の老母をめぐって交わされる会話が人のありようを浮き彫りにする。感涙必至、浅田文学の真骨頂。

天国までの百マイル (講談社文庫)
浅田次郎

高崎高校 第65回 翠巒祭

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 高崎高校の第65回翠巒祭が、2017年6月3日・4日に開催された。
 当日朝、校門近くに行くと、まだアーチを作成している途中であった。レンガを塗ったり天井を仕上げたりしている生徒の姿が見られた。

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 今年のテーマは”No SurFace”。「表面的ではない」文化祭と、「おもてなし」をかけているらしい。SとFが大文字なのは、Suiran Festival(翠巒祭)とSixty Fifth(65回)の頭文字であるからとのこと。

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 次男はマンドリン部の一員として演奏し、司会もこなしていた。1年前はマンドリンに触れたばかりで、「森へゆきましょう」のような簡単な曲を弾くのみだったが、2年生になった今はレベルの高い演奏をいくつも披露するのみならず、編曲も手がけるようになった。高校時代の1年間の成長は本当に驚くべきものがある。
 なお、高崎高校は今年度、7月下旬に大阪府吹田市で行われる全国高等学校ギター・マンドリン音楽コンクールに群馬県の代表として出場する。

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 アーチも完成したようで、多くの来場者を迎えていた。春夏秋冬を表す絵やバラをかたどったステンドグラスなど内部の装飾も凝っており、日常と非日常との境を分ける役割を果たしていた。

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 校舎内に入ると、ここにも門があり、趣向を凝らし和の空間を演出していた。

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 校舎一面に掲げられた壁画は、新倉富士浅間神社をモチーフにしている。強風にあおられ、だいぶなびいていたため、実行委員によって一時撤去をしている最中だった。

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 数学部の割り箸を使ったピタゴラスイッチ風のしかけなど、手間のかかっている展示が多く見られた。

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 喫茶店は例年飾りが凝っているが、今年も自然を生かした落ち着いた空間を作っていた。

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 次男は創作班美術課として、校内の絵もいろいろ手がけたようだ。明るく優しい絵柄は、見る人の目を楽しませていた。
 毎日へろへろになりながら家に帰ってきたが、当日にその努力は実を結んでいると感じた。

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 毎年1万人以上が来場する翠巒祭。デザイン・センスに優れ、おもてなしの心を体現したレベルの高い文化祭は、確実に高崎高校が誇る伝統のひとつとなっている。

 高崎高校 第65回 翠巒祭

千貫門

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 伊豆の旅行2日目。雲見温泉の民宿「大漁」で朝食をとる。アジの干物をメインにした素朴な品々であるが、塩辛、山菜などことごとく美味しい。

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 「大漁」のすぐ裏手にある坂道を登ると、目的地の「千貫門」に行くことができるとのこと。遊歩道の階段を10分ほど登る。

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 突然、視界がひらけ、午前の日に輝く明るい海が見渡せる。海岸に降りていく遊歩道の先に険しい形をした岩が姿を見せている。

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 海岸に着くと、昨日のヒリゾ浜とはうって変わって閑散としており、ほとんど人はいない、しかし、海の透明度はヒリゾ浜に劣らず澄んでいる。眼前にそびえる千貫門の偉容は迫力がある。

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 まずは、奇岩の根元にあたる横に広がる洞窟部分の海中に入ってみることにする。子どもたちもライフジャケットを着てシュノーケリングの支度をし、泳いで行く。

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 洞窟に入ると、途端に深くなるが、魚の数も驚くほど多い。

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 さらに洞窟の奥に進んでいく。浸食が随分と進んでおり、水深も結構ある。

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 魚影の濃さに圧倒される。陸上とはまるで別世界である。

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 海からあがり、海岸を進むと、海食洞をくっきりとみせる千貫門の雄姿を目にすることができる。柱状節理の岩肌をまとってそそり立つ姿は、独特の存在感を放っている。

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 海食洞のそばまで泳いで行く。間近にみる岩肌の荒々しさは自然の厳しさをそのまま表現しているようで、水に入るときも少し気がひきしまるようだ。

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 透明度の高い水中で、海底の様子がよく見える。

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 魚が群れなす場所もかなりあった。

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 まさに自然と一体感を味わえるスポットであった。

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 帰りは、おきまりのコースとなった湯治場「ほたる」で湯につかり、さっぱりする。

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 昨年同様、三島の回転寿司「にぎりの徳兵衛」で早めの夕食をとる。粒のおおきないくら軍艦が絶品であった。

 「ヒリゾ浜」「千貫門」で透明度の高い海に感銘を受けた旅。伊豆は何度来ても奥の深い魅力を感じさせてくれる。

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千貫門

ヒリゾ浜

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 伊豆半島南端にあるヒリゾ浜にシュノーケリングに行く。下田市街から30分ほど進んだ中木から船で渡らなければ行けない場所にある人気スポットである。
 8月、夏休み最中ということもあり、中木港駐車場の混雑が予想されたので、前日の夜に自宅を出発する。写真は午前4時半頃の様子だが、船着き場近くの駐車場は8割ほど埋まっていた。

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 ヒリゾ浜に渡る船は、5分おきに出発する。船着き場には、乗船待ちの人々が場所取りをするための荷物が一列にびっしりと並ぶ。ここに早く荷物を置くことが肝要のようだ。8時半に船が出港を始めるが、その1時間前の7時半から発券が始まる。発券前にはチケット売り場に並ぶ行列が驚くほど長く出来ていたが、いざ始まるとスムーズに人の波は流れ始める。

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 船は快調に風光明媚な景色の中を飛ばし、5分ほどで内陸から断崖で隔絶されたヒリゾ浜に到着する。写真は船着き場の様子。

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 浜は猫の額ほどであり、大きな石が敷き詰められた浜で、ほとんど砂浜はない。しかし、眼前にそびえる大根島など大小の岩にさえぎられ、浜は荒波から守られている。

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 洞窟のある岩など、複雑で美しい景色を見ているだけでも飽きないが、この場所の魅力は、抜群の透明度を誇る海水と豊富な魚にある。

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 海に入ると、少し進んだ浅い場所でもニシキベラなど陽光に鱗をきらめかす魚が姿を見せる。黒潮にのって運ばれてくる青や黄色の熱帯魚の姿も見られ、その種類と量の多さには圧倒される。

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 ライフジャケットを着てシュノーケリングを楽しむ。少し進むと、すぐに深くなる場所もあり、底の方には様々な魚が群れをなしている。岩場のすきまにウツボがいて、ギョッとすることもあった。

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 沖合の丘ハヤマと呼ばれる小島のまわりには、珊瑚が育っている場所があり、魚も豊富である。しかし、急激に深くなる場所や、波が打ちつける岩礁があり、海流もあなどれず、慎重さが必要である。海の恐ろしさを感じる場所でもある。

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 浜に戻るとテントがびっしりと敷き詰められ、船着き場に戻るのもたいへんなほどである。ヒリゾ浜にはトイレや売店は当然ないため、中木に船で戻る必要があるが、券があれば何度でも往復でき、船も頻繁に発着するので手軽に戻ることができる。

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 午後1時頃にはヒリゾ浜を後にする。船から浜をみると、海中の岩に囲まれた独特の地形であることを実感する。テントが多くなければ、まさしく秘境というにふさわしい。

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 中木に戻り着くと、ホッとするものがある。午後になると、駐車場もすいてくる。しかし、午後には潮があがってくるので、海の透明度は低くなってくるようである。

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 中木から南に進んだあいあい岬に行ってみる。広やかな海が一望でき、気持ちよい。ヒリゾ浜を守る大根島が存在感をもっている。

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 雲見温泉の民宿「大漁」に泊まる。夕食は、獲れたての魚を満喫する。食器や調度にも店主のこだわりが感じられる宿。温泉と鮮魚の食事で、運転や遊泳の疲れが癒される。

中木 ヒリゾ浜

雲見温泉 大漁

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