“困った親”への対応―こんなとき、どうする?

 対応に苦慮する親との関わり方を、質問に答える形で解説した本。「要求がエスカレートする親」「法的措置も辞さない親」「議員を伴って「いじめ転校」を訴える親」「通知表にクレームをつける親」など具体的な事例に基づいて対応が詳細に記述され、実際的である。心理学的な裏付けを伴っており、保護者との良好な関係を築くための拠り所のひとつとなる良書。

“困った親”への対応―こんなとき、どうする?
嶋崎 政男
4938874466

V字回復の経営

 赤字の続く不振事業の再建に取り組む人々を描いた「V字回復の経営」。実際に企業再生を手がけてきた筆者が、実話を基に小説の形で改革のプロセスを克明に記している。ダメな企業の症状、改革を進める要諦が随所に示されている。文章は明快でムダがなく、抜群の説得力を持つ。巻末には、丁寧にも「あなたの会社でもこうした症状が見られませんか?-不振事業の症状50」「改革を成功に導くための要諦50」として、本文中のポイントがまとめられている。
 組織を活性化するための方策を鮮明に示した、社会人必読の書。

V字回復の経営―2年で会社を変えられますか (日経ビジネス人文庫)
三枝 匡
4532193427

さおだけ屋はなぜ潰れないのか?

 書名の「さおだけ屋はなぜ潰れないのか?」のような、素朴な疑問から会計の考え方を記した本。飲み会のワリカンで「キャッシュ・フロー」を説明したり、雀荘のシーンから「回転率」を語るなど、具体例が見事。身近な内容から、ずばりと本質を示す方法は、教育という面でもたいへん参考になる。

さおだけ屋はなぜ潰れないのか? 身近な疑問からはじめる会計学 (光文社新書)
山田 真哉
4334032915

アインシュタイン・ロマン  第1回 黄泉の時空から

 NHKスペシャルとして1991年に放送された「アインシュタイン・ロマン第1回 黄泉の時空から」のビデオを見る。アインシュタインの生涯と思想を映像化した作品。歴史・科学・民族・自然観など、多面的に描いている。
 コンピュータ・グラフィックスを駆使して幻想的な映像を創りあげている。しかし、90分間にわたり繰り広げられる稠密な映像は、作り手にとっては実験的に様々な試みができてよかったのかもしれないが、見る方はしんどい。興味深い内容であるが、映像技術に頼りすぎている感が強い。
 知の巨人の苦悩を伝える重厚な第1回。

アインシュタイン・ロマン1~黄泉の時空から
広瀬久美子 小川真司 毬谷友子
B00005KKVK

高校数学で解く社会問題

 正社員とフリーターの収入格差は生涯を通すとどのくらいになるか。松枯れをどのようにして防ぐのか。地震のエネルギーはどのように計算されるのか。本書は、このような社会問題に関わる場面で、高校数学がどのように使われているかを記した書である。

「高校学校においては、目標について、高等学校における数学学習の意義や有用性を一層重視し改善する。」
 平成20年1月17日に示された中央教育審議会答申「学習指導要領等の改善について」において、高等学校数学の項では、このように記述されている。
 しかし、現在の高校数学の教科書では、なぜか社会で数学が応用される例はほとんどあげら れていない。 三角関数、微分積分、ベクトルと行列などは、社会科学でもごくあたりまえに使われている。その一端を示すだけで、数学への興味を持つ生徒の割合は増えると思う。しかし、現状では、教科書に応用面を書くと、まるで純血が汚されると恐れているかのように、極力記述を避けているように感じてしまう。

 「高校数学で解く社会問題」では、様々な立場の専門家が、高校数学の使われ方を記し「有用性」を示している 。ただ、もう少し数式を載せてもよいのではと感じた。専門的な話は興味深いのだが、数学が適用される数式の例はもっとあったほうが、本書の趣旨にあうのではないか。
 その点、第一章の「学歴社会の収入格差を考える 」では式を用いて的確な説明がなされていた。生涯賃金を計算するにあたり、具体的なデータから3次関数に補完し、積分で求め る説明はたいへん分かりやすい。しかも、EXCELを用いて実際に計算する方法が示 されている点がよい。このように、社会問題を自らの手で計算する様々な場面を設けることで、数学を理解する層が厚みを増すであろう。

 別の面から捉えると、社会問題で使われている数学を整理することで、高校数学に求められている内容がより明確になるのではないか。例えば、最小二乗法などは、どの分野でも用いられる手法であり、高校数学のひとつの到達点として位置づけることもできる。

 「数学が社会に生きている。」
生徒がそう実感できる高校数学になってほしいと切に願っている。

こんなに役立つ数学入門―高校数学で解く社会問題 (ちくま新書 653)
広田 照幸 川西 琢也
4480063587

イーグル

 2008年2月現在、アメリカ大統領の予備選挙で、オバマ上院議員は、クリントン上院議員と善戦している。
 かわぐちかいじの「イーグル」は、アメリカ大統領選挙の内幕を描いた漫画。日系三世のケネス・ヤマオカが、アメリカ大統領選挙への立候補を表明し、選挙戦を戦う様が、父子の葛藤などをからめてダイナミックに表現される。その虚々実々の駆け引きは圧巻で、作者の手腕には脱帽した。
 銃規制、戦争、労働争議、人種差別など、アメリカの抱える問題を浮き彫りにしながら、それと向き合う大統領候補の姿を通し、理想のリーダー像を活写する。骨太のテーマにそった見事なストーリー展開であり、その面白さは群を抜く。

イーグル (3)
かわぐち かいじ
4091846831

梶田叡一氏講演会

 「学習指導要領の改訂と確かな学力の形成」という演題で、中央教育審議会副会長、兵庫教育大学学長である梶田叡一氏の講演会が群馬県総合教育センターで行われた。
 平成20年1月17日に中央教育審議会から出された「学習指導要領の改善について(答申)」が生み出される過程やその理念が語られた。
 「ゆとり」か「詰め込み」かという2つの対立を乗り越えて、子どもたちが生きていくために必要な力をしっかりと育てなければならないという思いが伝わってきた。
 授業を創造すること、「授業文化」が盛んになることの重要性を再認識する講演であった。

図で読み解く!ドラッカー理論

 「プロフェッショナルの条件」「チェンジ・リーダーの条件」「イノベーターの条件」などを基に、ドラッカーの理論を図解した書。「巨大な知の森」といわれるドラッカーの著述の概略を端的に表している。
 図の作り方のポイントも示されており、読みやすく、中身が濃い本。
 1月17日に報告された中央教育審議会答申に盛り込まれている「生きる力」の理念を支える一つである「知識基盤社会」は、ドラッカーの理論を基にしている。本書をきっかけとして、ドラッカーの本にあたってみることも意義深いのでは。

図で読み解く!ドラッカー理論
久恒 啓一
4761261935

氷川清話

 勝海舟晩年の語録「氷川清話」では、歴史観、人物評、人生訓が江戸っ子気質のキレの良さで語られる。
 江戸城無血開城など、幕末の難局を乗り切る様々なエピソードは、鍛えた心胆と豊富な経験があって初めて成し得たことが分かる。その人物のスケールの大きさには圧倒される。
 現代においても示唆に富む内容が多く、折りにふれて読み返す一冊。

氷川清話 (角川文庫ソフィア)
勝 海舟
4043209010

実社会で活用される数学

 銀行の方を講師に招き、「実社会で活用される数学」という題で、高校10年目にあたる数学科の先生に対して講義をしてもらう。銀行業務の中でも、新BIS規制以降、特に重要性が高まった「リスク管理」に数学が用いられていることが、講義の骨子であった。そこでは、多くの数学や、統計手法が駆使されている。
 講師の方は、銀行内部のシステム開発に長く携わり、ディーリングの部署で実務を経験した後、現在監査業務に就き、生の数値をもとに経営管理を支えている。その豊富な経験から、普段教員が触れることの少ない世界を分かりやすく説明くださった。数学が実際に生きた形で使われていることを具体的に示してくださり、受講者も刺激を受けた。
 中学・高校を通じて、数学で「統計」はほとんど教えられることはない。しかし、実社会で最も活用されている数学は「統計」である。その事実を目の当たりにした日でもあった。

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