三国志 第一部 英雄たちの夜明け

 1992年から1994年に公開された劇場用アニメーション「三国志」。第一部「英雄たちの夜明け」では、桃園の誓いから呂布との下邳の戦いまでが描かれている。
 監督は勝間田具治、舛田利雄が監修にあたり、脚本は笠原和夫が手がける。舛田利雄、笠原和夫は映画「二百三高地」でもコンビを組んでおり、躍動感溢れる闘いのシーンなどに、戦争大作における力量が遺憾なく発揮されている。
 三国志演義の長大な物語を、手堅く切り取りよくまとめられている。2時間半ほどによくここまでうまく盛り込んだと関心する。
 関羽の青野武、曹操の渡哲也など、声優も豪華で台詞に聞き惚れることもしばしばあった。
 作画において極めて丁寧に作られたアニメーションであり、特に背景が素晴らしい。美術的にも価値のある作品。
 職人気質をもった日本のアニメーションの良さが凝縮された、見事なアニメーション。 

三国志 第一部 英雄たちの夜明け

劇場版アニメーション作品「三国志」 [DVD]

劇場版ポケットモンスター みんなの物語

 「劇場版ポケットモンスター みんなの物語」は、2018年公開の映画で、ポケモン映画21作目。
 都市の情景が素晴らしい。脚本も良く、登場人物がそれぞれ浮き上がるまさに「みんなの物語」。
 ポケモンというブランドの名に恥じないよう、スタッフが丁寧に作っている様が伝わってくる。美術的にもたいへん優れた映画。みんなで見たい作品。

劇場版ポケットモンスター みんなの物語

クボ 二本の弦の秘密

 「コララインとボタンの魔女」のスタッフが制作した「クボ 二本の弦の秘密」。
 素晴らしい。あまりに素晴らしい。美術的な卓越したセンス。日本の文化に対するまごうかたなきリスペクト。技術と魂が融和した作品世界にひたすら没頭した。
 美とは人の営みが意志をもって突き詰められることによって他に感動を与える。それを如実に示した作品。折り紙のシークエンスはどれも見事。二胡の音楽はシンプルゆえにすっと心に届く。
 惜しむらくは、後半のストーリーの練度がいまひとつのところか。造形が前面に出て物語がついていけない側面があったことは否めない。しかし、ストップ・モーションの技術はそれを補って余りある。
 動きと美的センスが光る職人芸的アニメの傑作。

KUBO/クボ 二本の弦の秘密(字幕版)

イリュージョニスト

 シルヴァン・ショメ監督による2010年のアニメーション映画「イリュージョニスト」。老手品師タチシェフは、場末の劇場などで古い手品を披露していた。ある離島の酒場で働く少女アリスは手品に魅せられ、タチシェフの後を追う。エディンバラの安宿で二人は生活し始めるが…。
 背景が実に素晴らしい。人生の哀歓に満ちた、風情豊かなアニメーション。  

イリュージョニスト (字幕版)

時をかける少女

 原田知世初主演の角川映画。筒井康隆原作、1983年公開の大林宣彦監督作品。尾道の情景を生かしながら、明朗快活な少女をめぐる不思議な体験を描く。
 原田知世がイノセントな魅力を全編にわたり放っている。エンディングのプロモーション・ビデオ的な映像も当時は新鮮であった。抑圧的な演技が解き放たれた昇華的な意味合いもあり、後味の良さをかもす。
 様々な思い入れが交錯する、アイドル映画のエポック・メイキング的な作品。

時をかける少女

楽園のカンヴァス

 原田マハによる「楽園のカンヴァス」は、アンリ・ルソーの名画「夢」をめぐる小説。現代と1900年代初頭のパリを交錯させながら、日曜画家と揶揄されたルソーの真の姿に迫っていく。ウッディ・アレンの映画「ミッドナイト・イン・パリ」を思わせる雰囲気もある。
 絵画とそれに関わる人々をモチーフに、巧みなストーリーで読み手を魅了する傑作アート・ミステリー。

楽園のカンヴァス (新潮文庫)

電脳コイル

 NHKで2007年に放送されたSFアニメ「電脳コイル」。磯光雄監督、全26話。
 電脳メガネという端末により、数々の情報にアクセスできる近未来、小学生たちが様々な経験をするドラマ。
 前半は1話完結のエピソードであるが、後半はあるテーマに向かって話が進んで行く。
 北陸の都市をおもわせる背景の美術が素晴らしい。神社などが街角に普通にある町で、小学生たちは電脳のテクノロジーを駆使して互いに交流や反目を繰り返す。この古い面影を残す街と、細かい設定がなされたテクノロジーが混じり合った世界観が独特で、心地よさと違和感が絶妙なバランスをもっている。
 小学生たちもそれぞれの背景が丁寧に描写され、表面的な学校ドラマに終わらない深みをもっている。
 磯光雄の緻密なSF設定と動画技術が融和した、イマジネーション豊かなアニメーション。  

電脳コイル Blu-ray Disc Box

モンスター・ホテル

 ドラキュラは娘を男手一つで育て、トランシルベニアのホテルを建設する。娘の118歳の誕生日にパーティーを企画するが、人間から隔絶するためのホテルに、なぜか人間の青年が紛れ込んでしまった。娘は青年に思いを抱くが…。
 想像力全開の、素晴らしい映画。多文化共生のアメリカならではの3DCGアニメーション。モンスターのキャラクターはもちろん、小道具から背景に至るまで、こだわりまくりの作品。
 家族で楽しめる、愛に溢れた映画。

モンスター・ホテル (字幕版)

エリジウム

 スペース・コロニー「エリジウム」では、富裕層が豪華な暮らしをしていた。一方、地球は荒廃し、劣悪な環境で人々は暮らしていた。主人公は、自らの病気を治すために、地球から脱出しエリジウムに向かうことを画策する。
 スペース・コロニーの造形美が見事で楽しませてくれる。様々なデザインに彩られたSFエンターテイメント。

エリジウム (字幕版)

2001年宇宙の旅

 今見てもまったく色あせることのないSF映画「2001年宇宙の旅」。人類が月に行く前に作られたとは信じがたいほどのクオリティがある。
 道具を使い始めた猿人の映像から、宇宙船に一気に飛ぶ時間。これほど長い時間の跳躍を、一瞬のうちにこうまで鮮やかに描いた作品は空前絶後であろう。そして、なにより美しい宇宙船の映像。完成途上の宇宙ステーションとのドッキングのシーンは何度見ても感銘を受ける。
 音もなく月面を滑り行く探査船のリアリティ。コンピュータHALの存在感。木星に近づくディスカバリー号の神々しいまでの姿。どの映像も、心の深層に訴える力をたたえている。
 キューブリック監督の美学と技術が結晶した、SF映画における不滅の金字塔。

2001年宇宙の旅 (字幕版)

メールを送信

Ajax Amazon

  • Amazon.co.jpアソシエイト
  • UserLocal
  • Ajax Amazon
    with Ajax Amazon