映画 寄生獣 完結編
原作は10巻に及ぶコミックであるが、映画では原作のエッセンスをよくまとめ、充実した映像作品に仕上げている。
染谷将太、橋本愛、深津絵里など、実力派俳優が結集し、中身の濃いドラマとなった。
パラサイトの存在により、人のありようを浮き上がらせる鮮烈な映画。
原作は10巻に及ぶコミックであるが、映画では原作のエッセンスをよくまとめ、充実した映像作品に仕上げている。
染谷将太、橋本愛、深津絵里など、実力派俳優が結集し、中身の濃いドラマとなった。
パラサイトの存在により、人のありようを浮き上がらせる鮮烈な映画。
人間への寄生生物との闘いを描いた岩明均の漫画「寄生獣」。山崎貴監督により映画される。漫画を読んだときは、実写化は困難だろうと思ったが、見事に表現されていた。
強烈なサスペンスをもつ意欲作。
太平洋戦争前後の政治に深く関わった白洲次郎。その波乱の生涯を、陰影のある美しい映像で描いたNHKのドラマ。
近衛文麿、吉田茂のブレーンとして活躍した白洲次郎を、伊勢谷友介が気骨あるジェントルマンとして見事に演じる。この上なくスタイリッシュで背広が似合い、自然な英語で英米の人々と対等に論を闘わせる。この人なくしては、この作品はできなかったであろう。
白洲正子を中谷美紀が娘時代から晩年までを演じる。美の求道者としての晩年のシーンは、心にしみいる清冽さがある。
近衛文麿を岸部一徳、吉田茂を原田芳雄が演じているが、戦争シーンがほとんどないにも関わらず、国を預かる彼らの台詞や表情が時代の雰囲気を如実に表していた。
白洲夫妻が共にこだわり抜いた自らの生き様に、スタッフが共感し徹底的に製作のこだわりを見せた作品。
「機動警察パトレイバー 劇場版」は、押井守監督による1989年公開のアニメーション。労働を担うロボット、レイバーが至る所で利用される日本を舞台に、首都を襲う事態に立ち向かう警察の若き面々の活躍を描く。
押井監督のこだわりが随所に感じられる緻密な町の描写が素晴らしい。脚本も見事で、卓抜な発想と重厚なストーリーで見る者を最後まで惹き付ける。
川井憲次の音楽が緊迫感を盛り上げる。冒頭の自衛隊レイバーが暴走するシーンから緊迫感があり、最後のカタルシス溢れる音楽は名曲。
近未来を見事に描いたアニメーション映画の傑作。
ある目的で壁に囲まれた孤児院で暮らす子どもたちが、脱出を試みる物語。一種のホラーであるが、智と智の闘いがストーリーに起伏を与える。
個々のキャラクターもよく描き分けられ、動きの軽快さが救いとなっている。美術的にも優れたアニメ。
「千と千尋の神隠し」を見て、あらためてジブリ最盛期の作品と感じる。
キャラクター造形の見事さ、計算し尽くされた色合い、シンプルでワクワク感のあるストーリー、徹底した取材と思索に裏打ちされた世界観など、どれも職人芸的な緻密さと大胆さで魅了させられる。
なにより、日本の原風景を次々と提示する背景が素晴らしい。何度見てもいいと思うのは、美術的に優れているからに他ならない。
このような深みのある真の大作を生み出す後継者が現れることを切に願う。
「ホーホケキョ となりの山田くん」は、高畑勲監督による1999年公開のスタジオジブリ長編映画。いしいひさいちの4コマ漫画が原作。
ジブリはこの作品でセル画を用いないデジタル制作に切り替える。しかし、あわあわとした水彩画のようなこの作品の場合、何層も絵を重ねる行程が必要で、手間がかかり、進行は当初たいへんに遅れたようだ。
およそデジタルに向いていなそうなこの作品からデジタルに移行するという感覚がすごい。また、音楽もシーンごとに変え、凝りに凝っている。
歳時記風に、芭蕉や蕪村などの句を盛り込む文芸趣味も、高畑勲監督らしい。制作費が20億円と、「ルパン三世カリオストロの城」の4倍。ある意味ものすごい贅沢な作品。
宮崎駿監督が最後のアニメ作品と制作当時宣言した『もののけ姫』。1997年の劇場公開時に見たのだが、そのときは正直なところ、ラストで素直な感動はわいてこなかった。いままで宮崎アニメを見てきて、これは意外な感じだった。実際他の作品から受けた印象とだいぶ違ったのである。
『ルパン三世カリオストロの城』を見た後は、強烈な面白さと抒情が見事にかみ合って、本当にいい映画を見たとしみじみ思い余韻がずっと後を引いた。その後この映画は20回以上見ているが、いまだに新しい発見がある。
『風の谷のナウシカ』では、心ならずもラストで泣いてしまった。「この村も腐海に沈んだか」という最初のシーンからうなった。あそこまで世界を作られると、もうそこに身をゆだねるだけでよかった。
『天空の城ラピュタ』では、全編に飛翔感が満ちていて、心躍らせる体験ができた。雲がはれてラピュタ本体が明らかになっていくシークエンスは圧巻の出来。
『となりのトトロ』は、そうそう、こういう映画を待っていたんだよと快哉を叫びたくなる作品だった。日本を舞台にこれほどファンタジックな世界が展開された例があるだろうか。さつきとメイがトトロの胸にぶら下がって飛ぶシーンは、何度見ても泣いてしまう。
『魔女の宅急便』は、人物の設定に感動した。キキが届け物をした屋敷で出会うおばあさんの顔がアップになった瞬間にその人の人生が感じられて、これほどのキャラクターをつくるとは、真のアニメだとその時思った。
『紅の豚』では、大人の雰囲気をたたえていて、しかも宮崎さんが暖かく作った思いが伝わってくる。 これら宮崎作品に共通して感じたのは、ラストの後味の良さであり、その暖かい余韻が長く残るところである。
ところが、『もののけ姫』では、その暖かさがストレートに残らなかったのだ。何か釈然としないものが残ってしょうがなかった。
ひとつには、その絵のボリュームに圧倒されすぎたためだろうか。美術は言うまでもなくあまりに素晴らしい。今回5人の美術監督を起用して練りに練った背景を見せてくれた。アシタカが村を出て町に着くまでのシーンにしても、自分が山裾や平原を歩いていると錯覚するほど画面に引き込まれた。
だが、それら美術がすごすぎるために、感動する心のスキマを失ってしまったような気がする。例えば、「日展」などの絵の展覧会で所狭しと並んでいる部屋の絵を見渡す。確かによく書けている絵は多いが、ひとつひとつの絵から執念というか怨念というか強烈な気が放射され、それらを一身に受けると感動より苦しみが湧いてくる。そして次の部屋に行くとまた様々な絵が咆吼し苦悶し解放し苦しみ悲しみおそれおののき……ああ、気が狂いそうになる。更に次の部屋では!!……会場を出た後はくたくたになっている。
『もののけ姫』は、トーンも統一されており、色彩設計も様々な配慮がなされていてる。しかし上に書いた程ひどくないにしても、作り手の執念は相当のものであり、正直疲れて感動するゆとりを失う過程は似ているかもしれない。東京に見に行くため朝早くから夜行列車に揺られた寝不足がたたったのかもしれないが。いずれにしても、体調のいいときに見るべき映画だ。
もうひとつには、作り手にゆとりがなかったのではと感じるのだ。いつもより伸びやかなシーンは少ない。メッセージ性が強すぎる割に、ラストは予定調和的だったりと、ストーリーラインの練度はいまひとつの感があった。
メッセージ性という点で言えば、やはり様々な要素がつめこまれていて、受け手が吸収するゆとりがあまりないこともあるかもしれない。最後の作品という焦りがあったのだろうか。
黒澤明監督の『夢』という作品があった。「こんな夢を見た-」で始まる八話のオムニバス映画であったが、その中の、原発で放射線がもれるとひとびとが騒ぐ話と、放射能で植物が巨大化し、鬼と化したいかりや長介が寺尾聡に繰り言をいう話があった。それらメッセージ性が強いエピソードより、最後の水車のもとで笠智衆が淡々と自然に語る話の方がよっぽど印象的で説得力もあったような気がする。メッセージを出したい気持ちと、受け手が得る印象のバランスはむずかしいところだと思った。
しかし、『もののけ姫』では、様々な問題をぽーんと観客に放り投げて、後は考えておくれと突き放しているのかもしれない。宮崎監督があえてそうしたのであれば、従来の作品よりひっかかりを残すという点で成功したともいえる。
いずれにしても、これから何度も見ることになる映画であることには違いない。背景の素晴らしさ、集団のダイナミズム、人物造形の的確さという点では、彫り込まれた職人芸であり、名匠宮崎の技は一度見ただけでは味わいきれない。もっとも、この作品では「技」より「業」を多く見せられてしまうだろうが。(1997年9月4日に記す)
中学3年生の迷いや焦りを、みずみずしく描いたスタジオ・ジブリの作品。脚本とプロデュースを宮崎駿、監督を近藤喜文が担当。
多摩地区の町並みなど、実に緻密に描かれている。細部の描写も見事で、特に地球屋の内部はそれだけで一つの世界になっている。ヴァイオリンの工房で、主人公たちが「カントリーロード」を合奏するシーンは、感動すら覚える極上の職人芸的アニメーション。
「やってみて分かったんです。好きなだけじゃダメだって、 だから勉強しないといけない。だから進学する事に決めました。」
これほど真面目な台詞がストレートに胸に響くことが、この映画の真価を表わしている。
耳をすませば [DVD]
本名陽子 高橋一生 露口茂 立花隆
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