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ブラック・ジャックスペシャル~命をめぐる4つの奇跡~

 ブラック・ジャックは、出崎統監督によるOVAや、加山雄三主演の実写など、過去様々に映像化されているが、手塚治虫の原作の雰囲気が最もよく表れている作品は、長男の手塚眞監督によるアニメーション「ブラック・ジャックスペシャル~命をめぐる4つの軌跡~」。2003年の12月に日本テレビ系列で放映された。
 原作の第1作である「医者はどこだ!」、雪の夜の物語「勘当息子」、SF風の「U-18は知っていた」、ブラック・ジャックの恩人本間丈太郎とのエピソード「ときには真珠のように」の珠玉の4作がオムニバス形式で収められている。
 たいへん丁寧に作られており、原作者への思いが感じられる素晴らしいアニメーション。

ブラック・ジャックスペシャル~命をめぐる4つの奇跡~
手塚治虫 手塚眞 大塚明夫
B0006GAZ6C

雪の女王 ブラック・ジャック

 緻密で美しい背景と、時折少し濃いめになるキャラクター、そして、要所要所で静止する映像。NHKのアニメーション「雪の女王」を見ると、手塚治虫の代表作「ブラック・ジャック」の劇場版を思い出す。共に、原作を生かしつつも出﨑統監督の個性が光っている。

雪の女王 Vol.1
出﨑統 仲村トオル
B000BV7SRQ
ブラック・ジャック 劇場版
手塚治虫 大塚明夫 水谷優子
B00005S79X

刑事追う!

 NHKの大河ドラマ「功名が辻」を見て、1996年にテレビ東京系列で放映された、刑事ドラマの傑作、「刑事追う!」を思い出した。役所広司と布施博が主役。1話完結形式で、市川崑、工藤栄一、舛田利雄、佐藤純弥など、そうそうたる映画監督が手掛けていた。
 降旗康男監督の「陰画」を見たのが最初だが、刑事物というようり、文芸作品を見るようであった。毎回、監督や扱うテーマが異なり、ヴァラエティに富んだ魅力があった。

 なぜ大河ドラマを見て「刑事追う!」を思い出したかというと、記憶にひっかかっている回があるからだ。
 「功名が辻」のドラマは、1997年に壇ふみ・宅間伸主演でテレビ朝日系列でも放映されている。戦国ものの割に、からりとした雰囲気のドラマだった。
 この山内一豊役の宅間伸が、「刑事追う!」の最終回、市川崑監督の「再会」で、ゲスト出演していた。この回が、いままでの回と雰囲気がだいぶ違っていた。まず、主役の役所広司が、いままではあまり喋らないクールな刑事だったのだが、最初のほうで、やけに嬉しそうにべらべらと喋っている。そして、市川監督独特の演出で、刑事物というより、やはり文学作品風の世界を作っていた。役所広司が久しぶりに会うという人物を、宅間伸が演じていた。
 この回のストーリーが、安部公房原作の「夢の兵士」に酷似していたように感じられてならなかった。「夢の兵士」は、確かNHKでも大昔にドラマ化されていたかすかな記憶があるのだが、定かでない。夢の中で見たのだろうか。それらを是非確かめたいのだが、「刑事追う!」もドラマ化された「夢の兵士」も、今見るすべを知らない。
 いずれにしても、「刑事追う!」という名作を全回見てみたい。

刑事追う! (ウィキペディア)

無関係な死/時の崖改版 (新潮文庫) [ 安部公房 ]

ベートーヴェン交響曲第4番・第8番

 小澤征爾指揮、サイトウ・キネン・オーケストラ演奏のベートーヴェン交響曲第4番・第8番を聴く。第4番は、ムラヴィンスキーのような苛烈さはないが、優美な演奏を楽しめた。精緻なアンサンブルが生き、第2楽章の緩徐楽章がとりわけ美しい。
 第8番は、比較的小編成であるが、ベートーヴェン自身、たいへん気に入っていた交響曲であると言われている。絶妙にコントロールされた、品性のある演奏。

ベートーヴェン:交響曲第4番・第8番
小澤征爾 サイトウ・キネン・オーケストラ
B00006BGUT

ナニワ金融道6

 青木雄二原作の金融コミックのドラマ化。第6作ともなると、脂がのりきっている。君塚良一の脚本は、ほんとうにうまいなあと感じる。新春ドラマスペシャルという形での再放送で、2回目にもかかわらず、ついつい目が離せずに最後まで見てしまった。
 ネズミ講、恋愛商法などの手口を実に巧みにみせてくれる。中居正広演じる主人公が、マルチ商法の説明会場で室井滋に説得されるシーンは圧巻の出来映え。
 池脇千鶴が、過去を背負った女性を演じ彩りを添えている。高岡早紀のパチンコ中毒になった主婦も存在感がある。
 中居正広は、帝国金融の若き社員灰原になりきっており、今回もアイデンティティーを求めて軽やかに悩んでいる。小林薫は、実に楽しそうに演じている。ハデハデな金融屋の印象があまりに強烈すぎて、他のドラマで登場するときもこの桑田のイメージがだぶってしまう。緒形拳の深みのある役どころが、きっちりと押さえをキメている。
 テンポよいストーリーと元気のよい個性派俳優の共演で、一気に見せてくれるのだが、終わったあとに、ほのかに重いものが残る。

ナニワ金融道6
B000CFWOQ6

ミクロの決死圏

 脳内出血で倒れた科学者を救うため、探査艇ごと縮小された医療チームを血管に注入し、体内から患部に行き治療するという着想の映画。1966年の作品。

 これを小学生の時にテレビで見て、すごく興奮した覚えがある。無数の赤血球が浮かぶ血管内、猛スピードで流れる心臓付近の静脈、神秘の色をたたえた内耳の風景、異物に襲いかかる抗体。一番身近である、自分自身の内部がこんなに巧みな仕組みと美しさに満ちているのかと、不思議な思いにとらわれた。人体内部が、小宇宙であることをまざまざと感じさせてくれ、生命に対する興味を決定的に高めてくれた映画だった。

 この人体内部の美術デザインは、シュルレアリスムの巨匠、サルバドール・ダリが手がけている。どんなにコンピュータ・グラフィックスの表現技法が発達しても、この映画が与えてくれた人体内部のインパクトを凌ぐ映像にはいまだ出会っていない。

 何度も見ても、色あせるどころが、新しい魅力が発見される素晴らしい映画だ。
 アイデアやストーリーが卓越しているだけでなく、科学に大いなる夢を持たせてくれた点でも、自分にとっては大切な作品。

ミクロの決死圏
スティーブン・ボイド アイザック・アシモフ リチャード・フライシャー
B0006TPEQK

インナースペース

 探査艇ごと人間を縮小し、ウサギの体内に注入するはずが、スパイ乱入のどさくさで人間の体内に入ってしまうというコメディ。なかなか楽しめる作品ではあったが、中心となるアイデアは「ミクロの決死圏」であり、その名作があまりに偉大であるため、「インナースペース」がどうも卑小に感じてしまう。コメディとしては悪くないのだが。
 監督のジョー・ダンテが、「いいタイトルが思い浮かばず困った。インナースペースではなんだか退屈で、でも他に思いつかなかった。」と説明していた。しかし、冗談でも「ミクロの決死圏2(FANTASTIC VOYAGE 2)にしようと思った」などと言ってほしくない。とにかく「ミクロの決死圏」は別格。
 1988年度アカデミー賞視覚効果賞を受賞しているが、ドタバタしているので、体内の映像はそれほど印象に残らなかった。やはり「ミクロの決死圏」で描かれる体内の美しさには、CGでは及ばないことを如実に感じさせられた。

インナースペース
デニス・クエイド ジョー・ダンテ メグ・ライアン
B000BTCM3S

後藤新平

 後藤新平の「処世訓」に、こんな言葉がある。

 妄想するよりは活動せよ。
 疑惑するよりは活動せよ。
 話説するよりは活動せよ。

 後藤新平の生涯を見ると、これを言うのにふさわしい人であることがわかる。

新選組!

 三谷幸喜の脚本で、大いに楽しませてくれたNHK大河ドラマ「新選組!」の総集編再放送と、その後を描く「新選組!! 土方歳三 最期の一日」がNHK総合で放映される。

 新選組!の初回ラストシーンで、近藤勇と土方歳三が裸で抱き合い、坂本龍馬、桂小五郎、佐久間象山がそばにいて黒船を見ているという構図に、いったいこの先どうなってしまうのだろうと不安があった。しかし、回が進むにつれ、次第に引込まれていった。
 特に、芹沢鴨(佐藤浩市)と近藤勇たちの確執を描く場面は緊迫感に満ちており目が離せなかった。第20回の芹沢と桂小五郎(石黒賢)の気迫あるやりとり、第24回の新見錦が切腹に追いやられる鬼気迫る場面など、印象に残る回が実に多かった。
 山南(堺雅人)が切腹した後で、香取慎吾、山本耕史が役者であることを忘れて泣いていたが、それが自然と胸を打った。
 もう、史実うんぬんではなく、巧みな台詞と伏線の妙を駆使した、見事な青春群像の描きっぷりに、理屈抜きに喝采を送りたい。

 「土方歳三 最期の一日」は、土方と榎本武揚(片岡愛之助)とのやりとりが秀逸だった。このような、前向きで密度の濃い脚本は大好きだ。普通に描けばどうしても暗い話になるはずなのに、明日も頑張ろうという気にさせてくれる、魅力ある作品に仕上がっていた。

NHK 新選組!! 土方歳三 最期の一日

新選組!! 土方歳三最期の一日
三谷幸喜 山本耕史 片岡愛之助
B000E9WZPK

新選組 ! 完全版 第壱集
香取慎吾 山本耕史 藤原竜也
B0001GGTG2
新選組 ! 完全版 第弐集
香取慎吾 山本耕史 藤原竜也
B0006OJ7TA

戦場のピアニスト

 ユダヤ系ポーランド人のピアニスト、シュピルマンの実話に基づく戦争体験を描く作品。監督のロマン・ポランスキー自身、母親をアウシュビッツ収容所で亡くしている。
 フランクルの「夜と霧」もそうだが、自身が体験したこれほど過酷な過去を、よく客観的に直視し、描けるものだと思う。いや、過酷であるからこそ、真の人間性を浮き上がらせることができるのだろう。

戦場のピアニスト
エイドリアン・ブロディ ウワディスワフ・シュピルマン
ロマン・ポランスキー
B0000896HN

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