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鈴木敏文の「統計心理学」

 セブン・イレブンを創業し、その経営のトップであり続けている鈴木氏の方法論を分析した「鈴木敏文の統計心理学」が実に興味深い。まさしく目から鱗が落ちるとはこのことかと思う。
 過去の経験にこだわらず、様々な実験を行い、それを検証していく手法。顧客ニーズをつかむために続けられるありとあらゆる努力。大胆な発想でどんな変化にも柔軟に対応できる姿勢。そして繊細な心を持って臨む一貫した顧客視点の経営。全国の1500名に及ぶ店舗指導員が毎週本部に集まる会議に象徴される、共有する場、ダイレクト・コミュニケーションの重視。
 店舗数1万1千を超えなお伸び続けるセブン・イレブンの背景にある鈴木流経営学は刺激と示唆に満ち、読む者を大いに奮起させる書であった。

鈴木敏文の「統計心理学」―「仮説」と「検証」で顧客のこころを掴む
勝見 明
4532193206

シベリウス交響曲第2番

 ブロムシュテット指揮、サンフランシスコ交響楽団演奏のシベリウス交響曲第2番を聴く。標題音楽ではないが、自然と北欧の森の清澄さと神秘を感じさせる演奏。サンフランシスコ交響楽団の明瞭で力強い響きが心地よい。

シベリウス:交響曲第2番
サンフランシスコ交響楽団 ブロムシュテット(ヘルベルト)
B00005FLQ7

血槍富士

 「製作 大川博」から始まる、黒をバックに白く書かれた冒頭のスタッフ・ロールから引き込まれた。そこからすでに雰囲気があるのだ。小杉太一郎のモダンな音楽が、その期待をさらに煽る。
 映像は富士を背景にした街道がまず写される。主人とお付きの2人、後ろからついてゆく男の子、母と娘の旅芸人、馬上の女とその下の暗い顔の父、胡散臭く懐手をして歩く男など、街道を行く人々をアップでなぞってゆく。温厚そうな主人について槍を持つ男を、片岡千恵蔵が演じている。その最初の場面から、絵に力が感じられ、最後まで目が離せなかった。撮影も見事で、ごく自然に東海道を旅している気分になる。川の渡し舟、大名行列、旅籠、祭りなど、その時代がたいへん生き生きと活写されている。
 台詞に味わいがあり、人間模様が実に巧みに描かれている。のんびりとした道中から、様々なドラマを経てラストの迫力ある立ち回りまで、一気に見せてくれる。
 昭和30年公開の映画であるが、その映像と物語の魅力は今も実に新鮮である。内田吐夢監督の真骨頂。

血槍富士 [DVD]
井上金太郎
B000FHVUKM

惑星ソラリス

 昔、東京の小さな映画館でタルコフスキー監督の「惑星ソラリス」を見た。最初はたいへんにスローテンポであったが、徐々に引き込まれていった。スローであることが、スタニスワフ・レムの思弁的な表現に合っていたのかもしれない。自分が異世界にいるような感じを受けた。

 黒澤明監督の「」のラストが、なぜか自分の中では「惑星ソラリス」と重なるのである。タルコフスキーは哲学的な映像詩をつむぐ作家であり、黒澤は直截的ともいえる強烈なヒューマニズムと批判精神をもった監督で、両者のベクトルは異なる。にもかかわらず。たゆたう水のイメージが共通した印象として残っている。心象に張られた和空間だろうか。

惑星ソラリス
ナタリヤ・ボンダルチュク アンドレイ・タルコフスキー
B00005G0Z1

ソラリスの陽のもとに

 スタニスワフ・レムの「ソラリスの陽のもとに」は、SFの価値を想像力という観点に置くなら、これを越える傑作はないのではと思うほど、豊潤な内容をもっている。思索する海の存在、それに人類はどう関わるのか。

ソラリスの陽のもとに
スタニスワフ・レム 飯田 規和
4150102376

 黒澤明監督の、「こんな夢を見た」で始まる8話のオムニバス作品。8話がそれぞれ独特な映像美に溢れている。「日照り雨」「桃畑」は、子供時代の憧憬や畏れを浮き上がらせてくれた。「雪あらし」「トンネル」は、潜在意識に訴える芸術性の高さを持っている。圧巻なのは、ゴッホの絵を映像化した「鴉」。鮮やかな色彩に高揚感すら覚えた。「赤富士」「鬼哭」は直截的なメッセージ。最終話「水車のある村」を見て、懐かしさ、郷愁が込み上げてきた。池辺晋一郎の曲も印象に残る。
 映画の豊かさが詰め込まれた巨匠晩年の快作。


黒澤明 寺尾聰 マーティン・スコセッシ
B000BTCMQ0

クーベリック ドヴォルザーク

 クーベリックのドヴォルザーク交響曲第8番・第9番を聴く。第8番は美しい旋律と独特の情緒に溢れていてたいへん好きな曲だ。クーベリックは、正統で風格ある曲の運びをするが、スラブの情緒を内包して心地よく聴かせてくれる。
 交響曲第9番の演奏は、管も弦も安定した美しい響きで名曲の魅力を存分に伝えてくれる。

ドヴォルザーク:交響曲第8番、第9番「新世界より」
クーベリック(ラファエル)  ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
B00005Q7Q2

バンビ

 ディズニーの名作「バンビ」を子どもたちと見る。動物たちの動きや自然の細やかな描写が素晴らしい。葉の一枚一枚が舞い散る様子にまで作り手のこだわりを感じる。
 手塚治虫は、この映画を180回も見たという。映画が公開されると、5回分の切符をまとめて買い、初回から最終回まで見続ける日が何日もあったという。
 これほどのアニメーションが、1942年に作られたことに驚く。

バンビ スペシャル・エディション
ディズニー
B0006BKQ66

子ぎつねヘレン

 家族で、映画「子ぎつねヘレン」を見に行く。目が見えず耳も聞こえないキツネと少年との交流を軸にした映画。傷ついた動物を世話する獣医の親子と少年とのやりとりが物語に厚みをそえている。
 もし、目が見えず耳も聞こえない世界に置かれたら。その視点をきっちりと据えて描かれ、子どもたちの情操に自然と訴える作品となっている。
 映画を見た後もあいかわらず戦うゲームなどを子どもたちはしていた。しかし、5歳の子が、「熊さんのめんどうを見なきゃ」と、ぬいぐるみで遊ぶようになったところを見ると、この映画から良いものをもらったことも否定できない。

子ぎつねヘレン
大沢たかお 竹田津実 河野圭太
B000FTWUX6

子ぎつねヘレン・フォトブック
テレビライフ編集部
405403036X
子ぎつねヘレンができるまで
大沢たかお 松雪泰子
B000CR78EW

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