教員改革

 「指導力不足教員」とは、どのような人々なのか。
 平成13年度から、東京都教育委員会が他の自治体に先駆けて指導力不足教員を対象とした研修を実施した。「教員改革」は、その企画・運営・指導にあたった著者が、指導力不足教員の実態と対応を記した書である。
 最初の章で、指導力不足教員の様々な実例が挙げられ、その異なった課題に対応して行われる研修内容が、詳細に記されている。また、体罰、セクハラ、交通事故などの服務事故を起こした教員に対する研修も触れられている。
 本書では、指導力不足教員研修の実際を通して、よい授業を行うための観点が明確に示されている。特に、小学校における授業の奥深さが伝わってくる。小学校の教科内容は大人にとってみれば簡単に見えるため、授業もやさしいと思われるかもしれない。しかし、小学校の授業こそ、多様な児童に複数のアプローチで活動をさせ、学ばせるという点で極めて専門性が高く、職人的な技術を要する。
 児童生徒一人一人を高められる授業が成立していれば、自然、その学級は落ち着きを見せ、問題も少なくなる。授業の充実こそが、学校教育のすべてにつながる。「指導力不足」の問題を通して、授業文化の重要性をあぶり出し、教科研修が相対的に軽視されかねない改革の方向に警鐘を鳴らす書である。

教員改革―「問題教員」と呼ばれる彼らと過ごした三年間
鈴木 義昭
4809675335

教師誕生

 「本当に大切なのは、子どもを変えること、成長させることです。」

 本書は、小学校の新任教員に対する指導教官であった著者による指導メモを元に記されたものである。メモは、授業を参観したことから気づいた良い点、改善すべき点について、一年目の教員に手紙の形で伝えられている。
 授業ひとつとっても、教員は様々なことに配慮しながら行わなくてはならない。学習ルールの定着、板書、ノートづくり、発問、一斉指導と個別指導、教える場面と考えさ せる場面、一人一人の活動の見取り、評価など、多くのことを考えて授業を組み立てる必要がある。
 著者は、授業の内容や生徒の様子から、具体的な指摘をして新任教員を導いていく。授業づくりのポイントから、個々の生徒への配慮事項、学級経営の姿勢など、その内容の豊富さには圧倒される。通読して、授業がいかに深い洞察を必要とするものであるかを突きつけられた。特に、担任として長い時間児童に関わる小学校教員の仕事は、職人芸ともいえる専門的な深みが必要であると感じさせられた。
 教員を目指す人、若い先生方に是非とも読んでほしい、授業づくりの観点が充溢している中身の濃い教育書。

教師誕生―新任教員と指導教官の記録
鈴木 義昭
480967519X

ニュートン

 「物質を引っぱる力は、宇宙全体にみちている」

 万有引力の法則、微積分法の確立、光の分析、数々の偉大な業績を残した近代科学の父、ニュートン。その伝記を息子の音読によって聴き、人間ニュートンの側面を知ることができた。養父との確執、孤独な青年時代、ペストが吹き荒れる中でも失われることのなかった、不屈の探求心。
 ルターの宗教改革、成長する市民階級、議会と国王との対立で揺れ動くイギリス。著者は、ニュートンの生きた時代背景を丁寧に記し、近代科学が築かれる社会の雰囲気を伝えている。
 ニュートンの偉大な業績の多くは、25歳までの間に着想や発見の糸口が認められるという。そのためか、後半生の記述はそれほど多くない。実際の理論や数式と向き合うことが、もっともニュートンにふさわしい対話の仕方と言うことであろうか。
 息子がニュートンの伝記で感心したのは、未熟児で生まれたのに、体調がすぐれないと自分で薬を作って体を治し、84歳まで長生きをしたことだった。

ニュートン―りんごはなぜおちるか (講談社火の鳥伝記文庫 (51))
斎藤 晴輝
4061475517

「ニート」って言うな!

 学生でもなく、働いてもいない若者を指す「ニート」は、近年、急速にクローズアップされ、若年雇用の問題を象徴する語になっている。この「ニート問題」の論じられ方に疑問を抱いた本田由紀、内藤朝雄、後藤和智の三氏が、それぞれのスタンスで「ニート」をめぐる様々な言説を検証する。
 「ニート」の語が一人歩きをし、青少年のネガティヴ・キャンペーンとなり、本質を覆い隠すことに警鐘を鳴らした書。

「ニート」って言うな! (光文社新書)
本田 由紀 内藤 朝雄 後藤 和智
4334033377

成功するプレゼンテーション

 プレゼンテーションでの留意点を、クイズ形式をからめて解説した本。ノウハウや心構えが、多くの例えと共に書かれている。

成功するプレゼンテーション PHP文庫
佐々木 宏
4569661149

みんなのパワーポイント

 パワーポイントなどによるプレゼンテーションの方法を示した本。スライド作成のみでなく、プレゼンの基本や、細かいノウハウが詰め込まれた役立つ一冊。

みんなのパワーポイント企画・構成・話し方―あなたも「勝てる」デジタルプレゼン
濱田 秀彦
4767802539

宇宙(ニューワイド学研の図鑑)

 宇宙の図鑑を長男十歳の誕生日に贈る。ニューワイド学研の図鑑シリーズのひとつ。太陽系、恒星、銀河系と銀河、宇宙の構造、天文観測、宇宙開発と、様々な角度から宇宙について眺める。カラーイラストと写真で構成されたページは、どれも美しく神秘に満ちており、目を奪われる。これほど豊かな内容で、二千円程度。
 宇宙へのロマンが感じられ、知的好奇心のわく一冊。

宇宙 (ニューワイド学研の図鑑)
磯部 シュウ三 吉川 真
405500415X

人を動かす

 折りにふれて読み返す本がある。何度読んでも価値があると思う本が名著であるとすれば、自分にとっては、デール・カーネギーの「人を動かす」こそ、名著である。
 1936年に初版が発行された、人間関係についての古典といえる本。人を動かす原則として、「重要感をもたせる」「人の立場に身を置く」、人に好かれる原則として、「誠実な感心を寄せる」「笑顔を忘れない」「聞き手にまわる」などの章が掲げられている。一見、当たり前のことのようだが、それぞれの章に載せられた事例の豊富さに圧倒され、その説得力には脱帽する。
 高校生の時に読んで、たいへん刺激を受けた本である。大学生になって再び読み、「以心伝心」が基盤にある日本人であれば、当たり前のことと思う箇所もあった。しかし、社会に出て様々な経験をしてから読み返すと、当たり前であるはずのことを、随分なおざりにしてきたことに気づく。
 自己実現の原点を示す名著。

人を動かす 新装版
デール カーネギー
4422100513

相手に「伝わる」話し方

 「週刊こどもニュース」のお父さん役として、子どもでも分かるようニュースを解説することに苦心した池上彰が、自らの体験をもとに綴った話し方の書。
 NHKに記者として採用され、警察まわりをする中で身につけたコミュニケーションの方法、記者リポートでの失敗、「ニュースセンター845」のキャスターとして報道について考えたこと、そして、「週刊こどもニュース」で工夫した表現などが語られている。生身の体験から出てくる言葉は、説得力がある。
 何より、具体的ですらすら読めるのに、内容が豊富であり、しっかりとメッセージが伝わってくる。この書自体が、「伝え方」のお手本である。

 さて、このブログを始めてちょうど2年がたった。1日ひとつのペースで何かを伝える試みは、まだ続いている。更新は一週間に7つ分という形になる場合が多いが、ともあれ2年で 365×2=730 の文章をアップした。いまだに拙い内容だが、続けることで見えてくるものもあると信じ、伝えることの模索をしていきたい。

相手に「伝わる」話し方―ぼくはこんなことを考えながら話してきた
池上 彰
4061496204

基礎がため100%中1数学(関数・図形編)

 「くもんの中学基礎がため100%中1数学 (関数・図形編)」は、同じシリーズの「計算編」とセットになっている中学1年数学のドリル。「比例・反比例」「図形の性質」「立体図形の体積・表面積」 などが扱われる。
 中1ギャップの最たるものは、「数学」であると言われる。まず、「正・負の数」でマイナスを含む加減乗除が登場する。次に、文字式が登場し、それに分数・小数が混じって扱われ、さらに当然のごとく習ったばかりのマイナスを含む文字計算となる。続いて一次方程式が登場する。次々と、小学生のときにはなかった抽象的な概念が現れる。それも、小学校での小数・分数の計算が完璧に理解されていることを前提としている。そのため、この時点で小数の計算や分数の通分に習熟していなければならない。
 文章題も、文字式に落とし込む感覚を身につけなければならず、食塩水の問題など、割合の概念がきちんと捉えられていないと難しい。

 それら、多くの新出事項を経た後に登場するのが、二変数の関係を扱った「比例・反比例」である。今までのように、答えがいくつと出るのではなく、「関係」を捉える内容である。その感覚がうまくつかめず、難しい印象を持つと、高校まで尾をひく。特に丁寧な指導が必要な箇所である。
 その後も「x=8,y=4 のとき、y=a x の比例定数 a の値はいくつか。」のように様々な問題のヴァリエーションが現れる。一次方程式に習熟していることも求められるのである。
 「関数」と聞くだけで、「難しい」「分からない」と拒絶反応を示す高校生が多い。その原因は、正負の計算、文字式の計算、一次方程式、文章問題と新しい概念や解法が矢継ぎ早に出てきた後の、「比例・反比例」の場面で苦手意識を持ってしまうことにあるのではないか。

 その他、作図、扇形の面積、円錐の表面積など、難関がいくつかある。それらは、前の事項を踏まえて解く内容であり、その繋がりこそが数学の醍醐味であるが、習熟が図られていないとただただ面倒な内容と感じてしまうであろう。
 三角形の3つの内角の二等分線は一点で交わり、それが外接円の中心となるなどの事実を作図で確認し、興味が持てれば、後の図形の学習にはずみがつく。数学が好きになるか嫌いになるか、中学1年の数学は、教える側の力量が大きく問われる。

 このように、中学1年の数学は、たいへんに中身が濃く、かつ、ほとんどがその後に直接繋がる内容である。そのため、家庭学習で定着をはかる努力が欠かせない。
 ドリル「基礎がため100%中1数学 (関数・図形編)」は、内容豊富なこの箇所の数学について、段階を踏んで問題が配置されている。スモール・ステップの問題を解いていくことにより、どこが分かりづらかったのかを確認することにも役立つであろう。

くもんの中学基礎がため100%中1数学―新学習指導要領対応版 (関数・図形編)
477430588X

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