人間昆虫記

 昆虫が変態するかのように自己を変える奔放な女性と、彼女に魅了され翻弄される男たちを描く手塚治虫の傑作。
 大学生の頃、下宿の片隅でこの作品と出会った。何十人もいた比較的大きな下宿で、食堂兼ホールの脇に、読み終わったいらない本を置く場所があった。他の下宿人が手にとり、多くの本が読み回されたものだ。
 手塚治虫の名前を目にし、その本をすぐに自分の部屋に持って帰って読み、圧倒された。その実験的な表現の多様さと、めくるめくような人物像は人生経験の乏しい若者にはあまりに刺激的だった。手塚治虫は天才だと心底思った。
 20年以上たった今でも、時折この漫画のことが思い出される。

人間昆虫記
手塚 治虫
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刑事追う!

 NHKの大河ドラマ「功名が辻」を見て、1996年にテレビ東京系列で放映された、刑事ドラマの傑作、「刑事追う!」を思い出した。役所広司と布施博が主役。1話完結形式で、市川崑、工藤栄一、舛田利雄、佐藤純弥など、そうそうたる映画監督が手掛けていた。
 降旗康男監督の「陰画」を見たのが最初だが、刑事物というようり、文芸作品を見るようであった。毎回、監督や扱うテーマが異なり、ヴァラエティに富んだ魅力があった。

 なぜ大河ドラマを見て「刑事追う!」を思い出したかというと、記憶にひっかかっている回があるからだ。
 「功名が辻」のドラマは、1997年に壇ふみ・宅間伸主演でテレビ朝日系列でも放映されている。戦国ものの割に、からりとした雰囲気のドラマだった。
 この山内一豊役の宅間伸が、「刑事追う!」の最終回、市川崑監督の「再会」で、ゲスト出演していた。この回が、いままでの回と雰囲気がだいぶ違っていた。まず、主役の役所広司が、いままではあまり喋らないクールな刑事だったのだが、最初のほうで、やけに嬉しそうにべらべらと喋っている。そして、市川監督独特の演出で、刑事物というより、やはり文学作品風の世界を作っていた。役所広司が久しぶりに会うという人物を、宅間伸が演じていた。
 この回のストーリーが、安部公房原作の「夢の兵士」に酷似していたように感じられてならなかった。「夢の兵士」は、確かNHKでも大昔にドラマ化されていたかすかな記憶があるのだが、定かでない。夢の中で見たのだろうか。それらを是非確かめたいのだが、「刑事追う!」もドラマ化された「夢の兵士」も、今見るすべを知らない。
 いずれにしても、「刑事追う!」という名作を全回見てみたい。

刑事追う! (ウィキペディア)

無関係な死/時の崖改版 (新潮文庫) [ 安部公房 ]

小学国語辞典

 元旦の朝7時、久しぶりにジョギングをする。6kmほど走る。「一年の計は元旦にあり」を子どもに示すためである。走って家に戻ると、長男が起きていたので、「一年の計は元旦にあり」って知ってるかい。と聞くと、「計って、計画のことだよね。さっきママに聞いたよ」と答える。教えようと思ったこちらとしては、ちょっと面白くない。気をとりなおして、「さて、私の今年の計は…」と、紙に「健康」と書く。我ながら汚い字だ。「パパはね、ジョギングを始めたよ。」で、長男はどうするのかと尋ねると、紙に「たくさん本を読む」と書いた。よしよし。

 長男が、「三人寄ればけんかばかり」とか、「能ある鷹は爪をみがく」とか言っている。それ、違うんじゃないと言うと、国語辞典に書いてあったとのこと。そんな間違ったことを書く辞典はケシカランと思ったが、それは、一ヶ月前に自分が買い与えた国語辞典だった。
 「逆さに読んでも同じ言葉で、岸なんとかというのがあったんだけど…」と、長男は国語辞典をぱらぱらめくり、「あった!」」と叫ぶ。そこには、「岸にササニシキ」と書いてあった。そんなものは、パパも知ってるぞと、「シナモンパンもレモンパンもなし」とか、「さけをたがいににいがたおけさ」などと書く。冷静に振り返ると、大人げない1年の始まりだ。だいたい、ジョギングが3日と続くとは思えないし、「健康」と一年の計を書いておきながら、現在ワインを飲んだくれている。

 さて、国語辞典は、子どもの言葉の世界を広げるのに役立っているようで、いい買い物だったと思っている。学研の「新レインボー小学国語辞典」だ。長男は、ケロロ軍曹の「軍曹」は、どれほど偉いのか、辞書を引き調べていた。階級上は、ケロロ軍曹より、クルル曹長のほうが偉いようだ。また、長男は、辞書に載っていたローマ字の一覧にふりがなをふり、「KERORO」と自分で書いた絵の横に記すなど、活用していた。

 この辞典は、引きやすく読みやすい。巻末には、小学校で習う漢字が筆順つきで載っているなど、資料も充実している。下の欄外に、先ほどのことわざパロディや回文、漢字クイズなどが載っており、国語に親しみやすくする工夫がなされている。自らの国の言葉に誇りを持つためには、まず、その言葉を好きになることから入るのがよいだろう。その意味で、この辞典は子どもの言葉の世界を広げるよいきっかけになるようだ。

 自分も、言葉をより大事にするために、このブログを続けていきたい。そのために、息切れしないよう、自然体でこの1年も望んでいきたい。

新レインボー小学国語辞典
金田一 春彦 金田一 秀穂
4053017939

コンピュータが連れてきた子どもたち

 年末にあたりこの1年を振り返って、自分にとって一番変化があったことと言えば、このブログを始めたことであろう。1日に1つのペースで何かを記していくことで、多くのものに意識的に関わるようになり、日々の生活に張りを与えてくれるきっかけとなった。

 このブログの一番最初に、教育用のソフトウェアLOGOの背景を述べた著作「マインド・ストーム」のことを記した。この本は、大学時代に読んでたいへん影響を受けた本であった。
 また、日本で最初に、本格的にLOGOを教育に取り入れた戸塚滝登氏も、影響を受けた方である。大学時代、1983、4年の頃だったが、戸塚氏が雑誌で、コンピュータを電子問題集としての利用でなく、思考のための道具として活用すべきという趣旨の記述を読んだことが最初だったように記憶している。以来、氏の様々な優れた実践を知り、コンピュータと教育との関わりを考える上で多くの示唆をいただいた。

 その戸塚氏から、このブログにコメントをいただき、たいへん恐縮した。紹介のあった著作「コンピュータが連れてきた子どもたち」を瞬時に注文し、読ませていただいた。

 佐世保事件とインターネットとの関わりから始まり、コンピュータを利用した教育についての功罪が示されている。デジタル社会・ネットワーク環境が子どもに及ぼす影響、脳科学からのアプローチ、そして、氏の豊富な実践に基づく子どもたちの「学び」のあり方が表現豊かに語られている。

 コンピュータを利用した教育のパイオニアとして、インターネットなどによる教育が子どもたちを間違った方向に導くことを防げなければならないという、強い思いが伝わってくる。そして、氏の子どもたちに向ける暖かいまなざしが感じられ、コンピュータを超えて教育という営み本来の姿を問いかけられた。

 ありあまる物質と飽食、何でもすぐに手に入る利便性に慣れてしまい、教える側自身も方向を見誤っていないか。「子どもたちに何が必要か、そして、子どもたちを何から守るか」をもう一度問い直すべきであることを実感させられる著作であった。

コンピュータが連れてきた子どもたち
―ネットの世界でいま何が起こっているのか

戸塚 滝登
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エジソン

 冬休みの宿題で、「好きな本を音読する」という項目があったので、息子にエジソンの伝記を読ませている。この本は、学校で朝読書があるというので、読み応えのある本が良いと思い、買い与えたものだ。
 読ませてみると、思った以上にすらすら読む。朝読書の成果だろうか。
 また、内容が実に豊富で、エジソンが蓄電池の発明で水酸化ニッケルと酸化鉄を電極に使い、水酸化カリウムの溶液にひたすなど化学的な内容が出てきたときには、元素を周期表で確認させるなど、他に学習を広げるきっかけとなる事項がたくさん出てくる点が良い。

 息子が読むのを聴いて、あまりに面白いので、親が自分で手にとってみたが、読み終わっていたく感動した。
 たとえ内容が少々難しくとも、このような偉人の伝記に触れることは、伏流水のようにその子の心を潤し将来に繋がるであろう。

エジソン―いたずらと発明の天才
崎川 範行
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ドラマ クライマーズ・ハイ 後編

 録画しておいたNHKのドラマ「クライマーズ・ハイ」の後編を見る。
 主演の佐藤浩市は谷川岳の衝立岩に自ら挑み、体を張って望んだ。
 御巣鷹の尾根で命を落とした人々を背負った作品である。中途半端なものは作れないというスタッフの意気込みが感じられた。
 「覚悟を持って」望んだドラマは、横山秀夫の原作の緊迫感と重みを見事に表現していた。

クライマーズ・ハイ[DVD]

クリスマス・キャロル

 チャールズ・ディケンズの名作。クリスマスの喜びを深く表現した点では、この古典を超える作品はないのでは。

クリスマス・キャロル
Charles Dickens 脇 明子
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クリスマス・キャロル
マイケル・ホーダーン モイラ・アームストロング
B0000B0EAV

ケロロ軍曹

051211_110641  最近、息子たちが「ケロロ軍曹」のゲームに夢中になっている。あまり教育的な内容とは思わないが、2人で仲良くやっているので、時間を区切ってさせている。
 「人々は自らの行いに恐怖した」というセリフとともにスペース・コロニーが降ってくるなど、ガンダムやウルトラシリーズのパロディが随所に見受けられる。子どもたちが、「目をくいしばれ!」「世界中のすべての嫉妬をぼくに分けてくれ」とか、「天上天下唯我独尊」「ってゆーか、千載一遇~?」など、妙な言葉を口にするようになった。

 原作は、吉崎観音の漫画。カエルの宇宙人が突然、普通の家庭にやってくるというドラえもん的な設定だが、様々なアニメや映画のパロディを盛り込んでいる。アニメ化され、かわいいキャラクターと、マニアックな趣向の両面をもつため、多くの層に人気が広がったのだろう。

ケロロ軍曹
メロメロバトルロイヤル

B000B5KEHS
ケロロ軍曹 (1)
吉崎 観音
4047133078
ケロロ軍曹 1
山本祐介 渡辺久美子
B00027LKBY

道は開ける

 「悩み」を克服する方法を具体的に述べたロング・セラー。たいへん分かりやすく書かれているが、背景には豊富な経験と人脈があり、哲学や科学の知見に裏打ちされている。
 その説得力のある文章にふれるだけでも価値があるだろう。悩みを抱く人だけでなく、より良く生きることを見据えたい人にもすすめられる名著。

道は開ける 文庫版

最後の相場師

 日本の株式市場は、最近とみに活況を呈している。12月9日の東証1部の売買高は37億102万株、売買代金は4兆6494億円にのぼり、過去最高を更新した。1980年代のバブル期をも凌ぐ勢いである。
 その一因として、オイルマネーを始めとした外国資本の流入があるが、国内個人投資家の急増も見逃せない。主婦や学生のにわか投資家も増えている。主婦の雑誌などに、「カリスマ投資家の必勝法」などといった記事をよく目にする。主人の給料以上の額をデイ・トレードなどで稼ぐ主婦もいるようだ。今は活況だから良いが、マーケットは甘くない。先日はみずほ証券によるジェイコム株の誤発注で、日経平均株価は300円を超す下落となった。不安定要因はつきもののマーケットには思わぬリスクもあるので、どうか家族を破滅に追い込むような投機はしないでほしいと願うばかりだ。

 最後の相場師とうたわれた是川銀蔵は、16才で大陸にわたり、軍部と商売をして少年実業家になるが、倒産して日本に帰る。その後も様々な商売に手をつけ、浮沈を繰り返す。経済を徹底して勉強し、経済研究所も設立する。晩年、日本セメントなどの株で仕手戦を行い財を成し、その名を広めることになる。
 その是川銀蔵ですら、欲に目がくらみ、同和鉱業の株で手痛い失敗をして巨額の損失を出す。「相場師一代」は、その是川銀蔵唯一の自伝である。にわかトレーダーには、自戒の書として読んでもらいたい。
 また、津本陽が是川銀蔵をモデルに描く「最後の相場師」は、株の仕手戦の様子がリアルに描かれ、迫真の経済小説である。相場には、その人の生き様が反映されることが、如実に示されている。

相場師一代
是川 銀蔵
4094034714

最後の相場師
津本 陽
4041713013

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