始祖鳥記

 江戸天明期、空を飛ぶことに自らのすべてをかけた男の生き様を描いた飯嶋和一の小説「始祖鳥記」。
 幸吉は腕の良い表具師であったが、自ら作った凧で空を駆け、お上の世を騒がせた罪で捕縛される。
 主人公の数奇な運命を通して、当時の経済を活写した物語でもある。幸吉の生き様も興味深いが、とりまく人々が実に味わいがある。多層的な深みと爽快さを合わせもっており、読後の充実感は何物にも代え難い。
 読書の醍醐味を与えてくれる感動の小説。

始祖鳥記 (小学館文庫)
飯嶋 和一

何者

 就職活動に臨む大学生の姿を描いた朝井リョウの小説「何者」。自らを様々な形でアピールする若者たちの内面を巧みな文章で浮き彫りにしていく。
 「選ばれなかった言葉のほうがきっと、よっぽどその人のことを表しているんだと思う」  
 ツィッター、フェイスブックなどSNSでの表現について、主人公に先輩が語る台詞である。このような、ネット社会をしっかり見据えた言葉が多い。
 若者の自意識を鋭くとらえた直木賞受賞作品。

何者 (新潮文庫)
朝井 リョウ
4101269319

コンビニ人間

 コンビニでアルバイトをする女性と極端に自己中心的な男性を軸に描かれる芥川賞受賞作品。
 主人公の子供時代の描写から、1947年の映画「銀嶺の果て」で銀行強盗役の三船敏郎が、死んだ伝書鳩を埋める男女の姿を見て吐き捨てるように言った台詞を思い出した。
 「もってえねえ。焼いて喰やいいのに。」

コンビニ人間
村田 沙耶香
4163906185

リップヴァンウィンクルの花嫁

 現代のネットと人間関係の狭間で彷徨する若き女性の姿を描いた岩井俊二の小説「リップヴァンウィンクルの花嫁」。同氏が監督として映画化した作品でもある。
 先の見えない心理的にスリリングな展開で読む者を惹き付ける。宮沢賢治、石川啄木が通底音として流れている。

リップヴァンウィンクルの花嫁
岩井 俊二
4163903771

真田丸 50

 NHK大河ドラマ「真田丸」第50回は、最終回とのみ掲げられる。タイトルは視聴者が各自決めてほしいという計らい。
 大阪夏の陣。豊臣勢は有利になる場面もあり、一時は徳川家康を追い詰めるが…。
 三谷幸喜の脚本では、端役に至るまでスポットをあて、それぞれが人生を綾なしながら群像劇を織り上げていく。その緻密さが見事で、以外な伏線も仕掛けられ物語の妙があった。また、前半の天正壬午の乱など、勢力が絡み合う複雑な戦をたいへん分かりやすく描き、虚々実々の駆け引きがなされる様を味わうことができた。
 1年間、個性豊かな俳優陣の熱演もあり、たいへん楽しませていただいた。スタッフ、キャストの皆様に感謝している。
 大河ドラマでは、このような緻密な構成がなされた知的な物語と共に、重厚な雰囲気、ダイナミックなシーンをあわせもった作品を今後期待したい。

NHK大河ドラマ 真田丸

真田丸 完結編 (NHK大河ドラマ・ストーリー)
三谷 幸喜 NHK出版
414923373X

ゴールデンカムイ 3

 「ゴールデンカムイ」第3巻は、凶悪な脱獄囚に加え、新選組の残党、伝説のマタギなども加わり、主人公たちの行く手を阻む。
 アイヌの大自然で生き残る智恵を盛り込みつつ、変化に富んだ物語で飽きさせない。ますます好調な歴史サバイバル・アクション・コミック

ゴールデンカムイ 3 (ヤングジャンプコミックスDIGITAL)
野田サトル
B00YPDHQIC

ゴールデンカムイ 2

 明治期の北海道を舞台にしたサバイバル・コミック「ゴールデンカムイ」第2巻。 この作品は、シカやウサギなど、様々な食材を扱ったグルメ・コミックとしての側面がある。大自然の恵みを愛で、ありがたくいただく姿は本当においしそうである。
 緩急巧みな物語の展開もさすがである。お腹いっぱいに味わえる傑作コミック。

ゴールデンカムイ 2 (ヤングジャンプコミックス)
野田 サトル
4088901053

ゴールデンカムイ  1

 日露戦争直後の北海道を舞台とし、隠された財宝をめぐる闘いを描くコミック「ゴールデンカムイ」。
 日露戦争で活躍した戦士、杉元は、アイヌの少女と知り合い、行動を共にする。北海道の大自然に、アイヌの風習や智恵を生かしてサバイバルを繰り広げる。その細やかな描写と予想外のストーリー展開にはうならされる。
 幾多の題材を贅沢に盛り込んだアクション・コミックの傑作。

ゴールデンカムイ 1 (ヤングジャンプコミックス)
野田 サトル

真田丸 49

 NHK大河ドラマ「真田丸」第49回は、「前夜」。大阪夏の陣目前にして、真田幸村は献策をするが…。
 徳川側では、徳川秀忠が「豊臣の血は根絶やしにする!」と息巻き、家康が「恐ろしい男に育ったのう」と言う場面が印象的。秀忠の存在が徳川幕府の基盤となることを示している。
 近藤正臣演じる本多正信が居眠りからさめてぼそっと策を口にする。老獪な軍師としての見事な献策であった。知略の闘いであったことをきっちりと描いている点が、このドラマの魅力である。

NHK大河ドラマ 真田丸

真田丸 完結編 (NHK大河ドラマ・ストーリー)
三谷 幸喜 NHK出版
414923373X

陽のあたる坂道

 石坂洋次郎の小説「陽のあたる坂道」を、田坂具隆が映画化。1958年のモノクロ作品。石原裕次郎が主役を演じ、共演する北原三枝、芦川いづみも輝きを放っている。
 昭和の青春を魅力的な人物像で浮き上がらせる文芸大作。

陽のあたる坂道 [DVD]
田坂具隆
B00009KM8G

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