誰も知らない

 是枝裕和監督の映画「誰も知らない」の冒頭、スーツケースの中から子どもが出てくるシーンから、画面に釘付けになる。アパートに引っ越すにあたり、家族の人数をごまかすために、スーツケースの中に子どもを入れて運んだのだ。それでも子どもたちは明るく屈託がない。団欒も束の間、新しい恋人ができた母親は、四人の子どもたちをアパートに置き去りにする。
 子どもたちが自然な演技であり、それゆえにずっと印象に残る。とりわけ、柳楽優弥演じる長男の、四人の兄弟姉妹が生きていくための振るまいが健気で、胸を締めつける。
 児童虐待の報道が後をたたない昨今、この映画を思い出す機会が多い。淡々とした映像であったが、いつまでも刺激をし続ける。
 カンヌ国際映画祭 最優秀男優賞、フランダース国際映画祭 グランプリ受賞作品。

誰も知らない
是枝裕和 柳楽優弥 北浦愛
B0002PPXQY

柳田邦男氏 講演会

「いのちと響き合う絵本」

 上記の演題で、柳田邦男氏の講演会が11月18日に群馬県総合教育センターで催された。主催は群馬県読み聞かせグループ連絡協議会。約300名の聴衆が会場のホールを埋め尽くした。

 「マッハの恐怖」などで航空機事故に挑み、「ガン回廊の朝」「「死の医学」への序章」などで、癌や末期医療を取り上げた柳田邦男氏である。鋭く問題提起をする著述から、講演の内容はかなり硬派な話であろうと想像していた。しかし、その予想は喜ばしい形で裏切られた。

 「絵本「もこもこもこ」を広げ、『もこ、もこもこ』とおじいちゃんがいっていると、孫が『おじいちゃん、何それ』と寄ってきたりして、いいですよね。」
と柔和な表情で語りかける。
 「書斎の三分の一が絵本で埋まっています。」という氏は、このところ日本人の心の問題を多く扱い、絵本について精力的に取り組んでいる。
 今回の講演は、スライドを用いて絵本の紹介をしながら、その背後にあるものや、育てるべきものを静かに語りかける内容であった。

4033283005  美しい自然と、少女の情感を詩的に歌い上げた「月夜のみみずく」は、工藤直子氏の日本語訳も素晴らしい。
 柳田氏は、朗読をしながらこの本のよさをじっくりと語った。
456968470X  「そらとぶアヒル」などの作者、内田麟太郎氏が絵本「おかあさんになるってどんなこと」に込めた思いが語られた。実母との死別、虐待の経験など、いたく感動的な話であった。
4566002640  幼い弟が病気で死にむかおうとしたとき、それをまだ幼い兄や姉に伝えなければならない場面で、医師は絵本「わすれられないおくりもの」を取り出し、静かに朗読した。
4097261517  柳田邦男氏が翻訳した、「ぼくはだれもいない世界の果てで」は、ひとりでいること、考えることの大切さを自然への愛おしさを込めて表わしている。
4834001121  モンゴルの民話「スーホの白い馬」を元にした劇を、障害者の学級の子どもたちがぜひやりたいと言い、影絵の芝居とした。主役を演じたやっちゃんは、たどたどしい台詞で熱演し、いままでいじめていた健常者の生徒の涙をさそい、「ごめんね」という言葉とともに交流が始まった。
 やっちゃんは、その後、火事によって死んでしまう。担任をした先生は、モンゴルに行きたいというやっちゃんの思いに答えるため、遺灰を持ってモンゴルに渡る。話を聞いた現地の人々は、馬頭琴を実際に奏してくれる。これをきっかけに、やっちゃんのいた福山で、障害児たちのためにモンゴルの人々による馬頭琴のコンサートが行われた。
4062124858  柳田邦男氏が、最後の一文に頭を貫かれ、翻訳して日本に送り出した「エリカ 奇跡のいのち」
 第二次大戦中、ナチスによってダッハウの強制収容所に送られる貨物列車の中で、母は抱いている赤ん坊を小窓から外に投げ出した。奇跡的に生き延びた少女とその思い。

 このように、柳田氏は、絵本に込められた数々の思いやそれにまつわるエピソードを語っていった。その他に、次のような本が紹介された。並べると、あらためてメッセージ性の豊かさを感じる。

きりのなかのはりねずみ
ユーリー ノルシュテイン
4834017052
だくちる だくちる―はじめてのうた
阪田 寛夫 V.ベレストフ
4834012204
あの森へ
クレア・A. ニヴォラ 柳田 邦男  
4566007901
ごんぎつね
新美 南吉 黒井 健
4039632702
だいじょうぶだよ、ゾウさん
ローレンス ブルギニョン
4894234386
でも すきだよ おばあちゃん
S. ローソン C. マガール 柳田 邦男 
4062830035

 「高度経済成長期のツケがまわってきたのか、躾などあたりまえのことが受け容れられない時代になっています。子育ては分析的にはいかないし、教育の問題はすぐに解決するものではないでしょう。ひとつ言えるのは、大人が心を耕さなければならないということです。」

 柳田氏の一言一言は、日本におけるノン・フィクションの分野を確立し、ジャーナリズムの精神を貫いた体験に裏打ちされ、実に説得力があった。
 「失望はしても、絶望はしない」
 氏は絵本を通し、柔和な表情の奥にある鋭い眼差しでメッセージを送り続けている。

Yanagida  講演の後に、ステージ上でサイン会が行われた。ホールの最後尾に達する長い列ができたにもかかわらず、氏はサインを求めるひとり一人の名前とメッセージを見事な筆跡で丁寧に記していた。その愚直なまでの真摯な姿に頭が下がった。

算数ドリル

 息子が小学4年生の算数文章題ドリルを終える。2桁・3桁の割り算、大きな数と概数、面積、三角形や円の作図、小数の加減、分数の基礎という内容。
 比較的問題数が少ないドリルであったので、ほぼ一ヶ月で終えることができた。今日は残った20ページを1日でこなした。全体の分量こそ多くないものの、1冊終えることには成就感があり、次の動機付けとなる。そのため、ドリルはあまりみっちりと詰まっていないほうが良いと感じる。
 次の小学5年生文章題は、小学校算数の天王山、「割合と百分率」を含む。

新課程 学力ドリル
算数文章題 小学4年生

岡 篤
4883133311

新課程 学力ドリル
算数文章題 小学5年生

桝谷 雄三
488313332X

福沢諭吉

 「おもえば、福沢諭吉こそ、民主主義の光をかかげた、明治の大きなともしびでありました。」

 息子の音読で、いつも感心するのは、伝記を書く人の文章のうまさだ。子ども向けであるから、できるだけやさしい言葉でわかりやすく書くことはもちろん、興味を惹きつつもその人のテーマをくっきりと浮き上がらせる内容にしなければならない。
 本書では、勉強嫌い、いたずら好きだった諭吉の子ども時代から始め、好奇心の豊かさからおこる様々なエピソードを盛り込み、物事の本質をすくい取っていく諭吉の姿を興味深く描いている。
 音読を聴いて心地よいリズムを感じた。心を動かす点で、「ペンは剣よりも強し」を体現した書。

福沢諭吉―ペンは剣よりも強し
高山 毅
406147510X

算数ドリル

 小学6年生の算数ドリルを、昨日長男が終える。休日を中心に取り組み、4ヶ月ほどかかった。1年生のドリルから通算すると、2年数ヶ月で算数の基礎事項は確認できた。
 小学4年生のドリルよりもやさしく感じた。分数の計算が中心だが、小学4・5年の割合の考えが身に付いていれば、特に難しいことはない。体積の計算も、面積の計算が確実に分かっていれば、その積み上げでありステップも高くない。
 単位あたりの量、速度、比例など、実生活でも重要となる内容は多い。いずれも、割合の概念が定着していることが前提となる。小学4年生の算数が重要であることを改めて実感した。
 今後は、小学4年生の文章題を進め、基礎を定着させ応用力を身につけさせたい。

新課程学力ドリル算数 小学6年生
金井 敬之
4883133133
新課程学力ドリル 算数文章題 小学4年生
岡 篤
4883133311

武田信玄

 「人は城 人は石垣 人は堀
  なさけは味方 あだは敵なり」

 野口英世の伝記の音読が終わった息子に、次は何を読みたいと聞いたら、「武田信玄」と答えた。同じシリーズの「豊臣秀吉」を読んで、戦国武将に興味を持ったようだ。
 信玄は、戦のみにあけくれる父親を追放し、治水や産業の育成にも意を用い、部下の言を用いて人望はことに厚かった。その家法「甲州法度」は、徳川の治世にも引き継がれた。
 優れた経営者であり、指導者であった信玄の偉大さを改めて感じさせてくれた。 

武田信玄―風林火山の旗風
木暮 正夫
4061475614

両さんの地図大達人

 「こち亀」の両さんの漫画と共に、地図について楽しく学べる学習コミック。地図記号や地形図、図法など、地図について様々な角度からの視点や知識が盛り込まれている。
 地図を学ぶことは、人に伝えるための表現形式を学ぶことに繋がる。地図は身近な題材だが、それを学習する意義はけっこう深いと考えさせられた。

こちら葛飾区亀有公園前派出所両さんの地図大達人
秋本 治 清水 靖夫
4083140054

野口英世

 長男に音読させている伝記のシリーズ、講談社火の鳥伝記文庫の第1巻が、野口英世。人気の高さがうかがえる。
 幼い頃の手のやけど、母の愛、たゆまぬ勉強と研究、支える人々との出会い、世界で認められる業績、悲劇的な最期、まさに伝記とするにふさわしい生涯である。
 この伝記は子ども向けではあるが、単に野口英世の生い立ちや功績を追うのみではなく、弱い面にもふれている。人に頼ることの多い生活、度重なる借金などについて記されている。だが、それによってこの偉人の業績が薄れるわけではない。完全ではないからこそ、そのひたむきさにより敬意がもてる。
 長男は読み終わった後、付記されている年表を見て、
「ベルが電話機を発明した年に野口英世は生まれたんだね。」
と言っていた。歴史の横糸を心の中に紡ぐ上でも、伝記は役に立つ。

野口英世―見えない人類の敵にいどむ
滑川 道夫
4061475010

学校教育再興フォーラム

 高崎市文化会館で行われた第1回学校教育再興フォーラムに参加する。

Forum01  最初の「教師上達論」は、優れた授業実践を行っている杉渕鉄良氏の、教師としての力量向上についての講義。毎日授業記録をつける、学級通信を毎年何百号も出す、教科書の2ページから毎日100問の問題を作るなど、求道的とも言える教師論を語っていた。
 量は質に変わるということには、大いにうなずけた。

Forum02  第2講義「家庭教育・学校教育に望むこと」は、不登校に体当たりで取り組んでいる長田百合子氏の熱気あふれる語り。自らいじめられ、非行に走った経験を持つ講師が、更正しその後多くの不登校やニートの若者と関わった話には、そのエネルギッシュなトークにより否応なく引き込まれた。

Forum03  野口芳宏氏の「国民に求められる教師像」は、教育の成立条件は「信」「敬」「慕」にあるとし、「源流浄化」-教師は教育の源流であり、それが澄んでいれば川下も澄んでいくと語られた。格調があり、襟を正す講義であった。

Forum04  陰山英男氏の「これからの日本の教育」は、中央教育審議会の議論の中心は学力であるとして、その方向性が語られた。中教審の議論は、全国の優れた実践をふまえ、現場の先生がしっかりやっているという前提で話をしているとのこと。
 脳の高い処理能力を高める教育の在り方、日本は世界で最もビデオやテレビを見る時間が長く、勉強時間が短い国という事実、英語教育の問題など、話題は多岐に渡った。
 氏が校長を勤めた土堂小学校の「早寝早起き朝御飯」「読み書き計算の徹底反復」「モジュール授業」など、学習活動のポイントを示したところで時間となってしまった。あまりに多くの背景をもつ講義であった。

 最後の教育オーディションでは、6つの教育実践のプレゼンテーションが行われた。発表内容も興味深かったが、野口氏や陰山氏などの講師のコメントもたいへん参考になった。

 午前9時から午後5時にわたるフォーラムであったが、時間の長さを全く感じさせない、極めて充実した内容であった。

第1回学校教育再興フォーラム群馬大会

ちびまる子ちゃんの四字熟語教室

 四字熟語220の解説に、ちびまる子ちゃんの4コマ漫画がついた楽しく読める本。小学生の長男が、たまに見ている。「誕生日のケーキには、ろうそくがないと画竜点睛を欠くよね。」などと口にする。
 子どもが四字熟語に関心を持ち、自然と言葉の豊かさに触れることのできる良書。

ちびまる子ちゃんの四字熟語教室
さくら ももこ 川嶋 優
4083140143

アクセスランキング

Ajax Amazon

  • Amazon.co.jpアソシエイト
  • UserLocal
  • Ajax Amazon
    with Ajax Amazon