文藝春秋増刊 「坂の上の雲」と司馬遼太郎

 文藝春秋増刊「坂の上の雲」と司馬遼太郎は、中身が濃い企画号。冒頭、日清・日露戦争当時の写真が眼を引く。特集「『坂の上の雲』を私はこう読んだ」では、塩川正十郎、寺島実郎、安藤忠雄、篠田正浩、武田鉄矢など、各界の人々がその思いを綴っている。いかに多くの層に影響を与えた作品であったかが伺える。
 司馬遼太郎自身が「坂の上の雲」について語った講演も実に興味深い。日清・日露戦争を検証した座談会、主要人物事典などを載せ、作品に描かれた時代を知る多くのきっかけを与えてくれる。

文藝春秋増刊 「坂の上の雲」と司馬遼太郎 [雑誌]
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胡蝶の夢 第4巻

 司馬遼太郎の「胡蝶の夢」では、蘭学の広がりが、江戸身分制社会を突き崩す一因となった様が丁寧に描かれている。しかしそれ以上に、松本良順、島倉伊之助、関寛斎、三人の生き方が印象的で、物語の終盤では、叙情の波が胸中におしよせてきた。
 「西洋医学」の徒の生涯をたどりながら、幕末から明治へのうねりと学問の有り様を、練達の筆で情感豊に浮かび上がらせた名作。

胡蝶の夢〈4〉 (新潮文庫)
4101152306

胡蝶の夢 第3巻

 「人間とは、生命を維持するだけの存在であるかどうか」

 一橋慶喜、近藤勇の主治医となった松本良順、語学の天才でありながら、人間関係の能力が欠如している島倉伊之助、医療と社会についての思索を深めていく関寛斎。長崎でポンペの元に学んだ三者の生き様を辿りながら、幕末の諸相を重層的に描く第3巻。

胡蝶の夢〈第3巻〉 (新潮文庫)
4101152292

胡蝶の夢 第2巻

 「医師にとって、病人という対象のみがあるのだ。階級や貧富の差別は、医師の関知するところではない。」

 1857年、長崎海軍伝習所で、医学の開講をしたポンペ。松本良順と共に医学伝習所で多くの医学者を育てていく。ここで、西洋医学の種がまかれると同時に、身分制度が固められている江戸幕府に、自由・平等の西洋思想を錐でもみ込むように穿つことになる。
 幕末の長崎を舞台に、日本における近代医学の黎明を描く、感動の巻。

胡蝶の夢 (第2巻) (新潮文庫)
4101152284

胡蝶の夢 第1巻

 「胡蝶の夢」は、幕末の蘭学者たちの姿を通し、江戸期の身分社会を越えていった人々を描く司馬遼太郎の小説。
 「坂の上の雲」は、冒頭に松山が舞台となっていたが、「胡蝶の夢」は、佐渡から始まる。この出だしがまた秀逸である。佐渡では、世界地図に造詣の深い人が描かれ、一地方から全てを見渡す物語の手法を象徴している。
 島倉伊之助という不思議な主人公を据え、松本良順との師弟関係を軸に、幕末の医療を浮かび上がらせていく巧さは、見事としか言いようがない。

胡蝶の夢〈第1巻〉 (新潮文庫)
4101152276

司馬遼太郎が語る 第8集

 「医学が変えた近代日本」という演題で、1988年に順天堂大学で行われた司馬遼太郎の講演。
 江戸時代に西洋から伝えられた医学は、「自由」「平等」という思想の種を宿し、幕末日本に大きな影響を与えた。ポンペや彼に学んだ松本良順、順天堂において医療技術を高めた佐藤舜海の話を交えた具体的な話はたいへん興味深い。
 また、医者は「患者の最後の友」であるべきという基本的な考えを歴史から指し示し、内容、気概ともに実に素晴しい講演。

司馬遼太郎が語る 8 医学が変えた近代 [新潮CD]

坂の上の雲 4

 NHKスペシャルドラマ「坂の上の雲」第4回は、「日清開戦」。モンゴルでロケを行った戦闘シーンは、圧巻の迫力。端役に至るまで主役級の俳優をあてる豪華な布陣、当時の様子を丁寧に再現した映像で、毎回あっという間に90分が過ぎる。

NHK 「坂の上の雲」

坂の上の雲 第1部―NHKスペシャルドラマ・ガイド
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坂の上の雲 3

 NHKスペシャルドラマ「坂の上の雲」第3回は、日本が清国との戦争に突入するまでの過程を、主人公3名の歩みと共に描く。家族とのふれあいと、歴史上の事件が交互に描写されていく。世界史のうねりを感じさせる回。
 エンド・ロールに流れる、久石 譲が作曲し、サラ・ブライトマンが歌うテーマ曲が、空の青さのように胸にしみ入る。

NHK 「坂の上の雲」

NHKスペシャルドラマ 「坂の上の雲」 オリジナル・サウンドトラック
久石譲
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井上靖 「孔子」を語る

 井上靖が、長編小説「孔子」を完成後に行った講演のCDを聴く。平易な言葉で、孔子の生涯やその思想の一端を、暖かみのある言葉で語っている。また、構想20年、孔子の実像に迫ろうとする熱意と、小説に書きたい思いが伝わってくる。
 この講演を行ったときの年齢が82歳と知り、たいへん驚く。食道を取る手術をした後でも、中国の地に長旅をし、孔子の思想を少しでも理解しようとする姿勢に心打たれる。

「孔子」を語る―付/インタヴュー「孔子の詞について」 (新潮CD 講演)
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坂の上の雲 2

 NHKスペシャル・ドラマ「坂の上の雲」第2回では、松山出身の秋山好古、真之、正岡子規。3名がそれぞれの道を歩み出す姿を描く。
 好古が入学する陸軍大学校における、ドイツ陸軍の参謀将校メッケル少佐とのやりとりと、旧松山藩主久松家の若殿に従ってフランスに留学するよう家令から頼まれるシーンが素晴しかった。緊迫感と潔さが見事に表現されていた。明治のおおらかさを含んだ気風の中、自らの役割をつかみ取っていこうとする真剣な若者の姿がまぶしく印象に残る回であった。

NHK 「坂の上の雲」

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