総会屋錦城

「推測はできても理解できそうにない撓みのない一徹さであった」

 城山三郎氏が昭和33年下半期に直木賞を受賞した「総会屋錦城」。老練な総会屋の最期の戦いとその家族を描いている。
 新潮文庫の「総会屋錦城」には、表題作の他に、戦後間もない日本の社会を鮮やかに切り取った6編の作品が収められている。

総会屋錦城
城山 三郎
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城山三郎氏を悼んで

 作家、城山三郎氏が3月22日死去した。79歳だった。
 経済の側面から日本人の姿を浮き彫りにした小説からは、どれも懸命に生きる人々の気概が伝わり、多くの作品から感銘を受けた。
 「雄気堂々」では、幕末から明治にかけて激動の時代に活躍をした渋沢栄一の生き様が、徳川慶喜、大隈重信らとの交流と共に描かれ実に興味深く読めた。わきかえる時代の描写、スケールの大きさな人物像に圧倒された。
 田中正造の晩年と、公害の被害者の生き様を描いた「辛酸」は、苦境の中でも信念を貫く人々の姿が印象に残る重みのある作品であった。
 「もう、きみには頼まない」は、高度経済成長期に経団連会長をつとめた石坂泰三を描いた小説。文化の薫りを持ち、グローバルな視点で経済の舵取りをし、気骨と懐の深さをもった財界人の生涯に刺激を受けた。
 「黄金の日日」では、信長・秀吉と経済を基に対峙する堺の人々の誇りと気概にふれ、時代小説の新たな魅力を感じさせられた。
 「百戦百勝」は、相場の世界に生きる男をユーモアに溢れた筆致でつづり、痛快無比な作品だった。
 「落日燃ゆ」は、最も大事にしたい小説の一つ。戦争回避に努めながらも、東京裁判で絞首刑を宣告され、一切の弁明をしかなった元総理、外相、広田弘毅。その生き様には頭を垂れる思いであった。
 城山三郎氏の描く、大局を見据え懐深く存在感のある人物像に強く惹かれるのは、日本が小さく固まらず、より良い方向へ導いてくれるリーダーを渇望しているためかもしれない。
 凛然とした文体は、時に自然と姿勢を正さずにはおられないほどの静かな迫力があった。組織や社会の複雑さが対象であるにもかかわらず、読後は常に快さが残った。根底に人に対する暖かい眼差しがあるためであろう。
 ご冥福をお祈りいたします。
 

ハゲタカ 5

 ライブドア事件で、証券取引法違反罪に問われた前社長、堀江貴文被告に対して、東京地裁は懲役2年6月の実刑を3月16日に言い渡した。
 NHKのドラマ「ハゲタカ」第5回では、急速に発展を遂げたIT企業が、老舗の大手電機メーカーの再生に名乗りをあげる。よい技術を持ち、地道な取り組みを続けてきた会社が、単なる利ざや稼ぎのためだけに利用され、経営が翻弄される様が描かれていた。

NHKドラマ ハゲタカ

ハゲタカ 4

 NHKドラマ「ハゲタカ」第4回は、名門電機メーカーの再生をかけ、買収をはかる外資系ファンドと、企業再生家との熱い戦いを描いていた。菅原文太が演じる電機メーカー創業者が素晴しかった。家族的な経営が古くさく、終身雇用、家族主義といった経営を全て否定したら、日本の良さはどこにいってしまうのか。
 田中泯が演じる、現場で愚直にレンズを磨き続ける熟練技術者は存在感があった。このような人々をもっと大事にする姿勢こそ、日本が本来もっていた強みだったはずではないか。

NHKドラマ ハゲタカ

ハゲタカ 3

 NHKドラマ「ハゲタカ」第3回は、銀行と外資系ファンドとの企業再生主導権争いを、入札による緊迫した展開のうちに描く「終わりなき入札」。
 入札は、金額が全てを決する資本主義社会の構図を端的に表わしている。銀行員、ファンドマネージャー、経営者それぞれの苦悩と思いを通して、「再生」とは何かを熱く語る回であった。

NHKドラマ ハゲタカ

バブルへGO!!

 「バブルへGO!!~タイムマシンはドラム式~」 
いかにもB級映画の雰囲気漂うタイトルである。しかし、意外に凝った作りの映画であった。それもそのはず、手がけているのは、「私をスキーに連れてって」「メッセンジャー」のホイチョイ・プロダクションズ、脚本は「踊る大捜査線」の君塚良一である。
 日本経済の崩壊を阻止するため、ドラム型洗濯機のタイムマシンでバブルまっただ中の1990年・東京へ行く役を、広末涼子が爽やかに演じている。財務省官僚を阿部寛がコミカルに演じ、物語を盛り上げている。
 電通との協力で、当時を緻密に再現するこだわりが見られる。コンセプトが先行した映画なので深みはないが、とかく暗い話題が多い現代では、このような明るい映画を見るのもたまには良いだろう。
 数々の映画の美味しいシチュエーションを散りばめた、理屈抜きに楽しめる作品。

バブルへGO!! タイムマシンはドラム式 スタンダード・エディション [DVD]

ハゲタカ 2

 NHKのドラマ「ハゲタカ」第2話は、債務超過に陥っている玩具メーカーの買収をめぐる外資系ファンドと銀行の対立を描く。柴田恭兵演じる銀行員の苦悩が物語を深みのあるものにしていた。
 タイトルの「ゴールデン・パラシュート」というネーミングも凄い。経営陣が買収に応じる代わりに、多額の退職金を受け取る意味とのことだが。外資系ファンドの主人公がジュラルミン・ケースに詰めた札束を経営者に見せるシーンで象徴的に描いていた。それが会社にとって良いことかどうかは、単なる倫理の問題だけでは片付けられない。

NHKドラマ ハゲタカ

静かな生活

 大江健三郎原作、伊丹十三監督の「静かな生活」。大江健三郎氏の息子さんをモデルにした障害を持った作曲家「イ-ヨ-」とその家族をめぐるエピソ-ドをコラ-ジュにした作品。
 伊丹監督ならではの手法で、重いテ-マを軽妙に描いている。

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伊丹十三
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ハゲタカ

 外資系ファンドの買収を描く、NHKのドラマ「ハゲタカ」。第1回は、1998年にニューヨークのファンド・マネージャーが銀行の不良債権をまとめて買い叩く「バルクセール」が扱われた。
 日本経済が転換を迎えた背景を、大森南朋演じる辣腕ファンド・マネージャーと柴田恭兵演じる銀行員との対立を軸とした人間関係をからめて描く迫真のドラマ。
 緊迫感のあるシーンが多く、作り手の意気込みが伝わってくる。次回以降が楽しみだ。

NHKドラマ ハゲタカ

マネジメントの正体

 マネジメントの正体―組織マネジメントを成功させる63の「人の活かし方」を読む。採用、モチベーション、リーダーシップ、コミュニケーションなど、マネジメントの基本的な内容が具体例に基づいて平易に語られている。ごく当たり前と思える内容もあるが、目を開かれる記述も多い。あるいは、当たり前と思っていても、現実には意外と見落とされ実行されていないことが多いのかもしれない。
 「リーダーの有能さは、欠けている要素を見つけ出し、そのギャップを埋める能力に左右される。」
 本書に記されている一見「当たり前」のことを実行できる力がリーダーシップの根源ではないか。

マネジメントの正体―組織マネジメントを成功させる63の「人の活かし方」
スティーブン・P. ロビンズ Stephen P. Robbins 清川 幸美
4797320532

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