山本周五郎 ちゃん
山本周五郎の小説「ちゃん」を、名古屋章が朗読したCDを聴く。腕は良いが、仕事に恵まれない職人重吉を思う家族や知人たちを通し、下町の人情を細やかに綴った名編。名古屋章の暖かみのある語りが江戸の情緒と心の機微を豊かに表現している。
山本周五郎の小説「ちゃん」を、名古屋章が朗読したCDを聴く。腕は良いが、仕事に恵まれない職人重吉を思う家族や知人たちを通し、下町の人情を細やかに綴った名編。名古屋章の暖かみのある語りが江戸の情緒と心の機微を豊かに表現している。
劇場版名探偵コナン「ベイカー街の亡霊」は、野沢尚が脚本を手がけた。シャーロック・ホームズゆかりの英国を舞台にするために、何度も想を練り、脚本を書き直したとのこと。物語がしっかりとした映画に仕上がっている。
野沢尚は、「破線のマリス」で第43回江戸川乱歩賞を受賞するなど、推理小説作家としても活躍していた。本格推理小説の祖とも言えるコナン・ドイルが生んだ、ホームズにちなんだ作品を創ることには、思い入れもあったのではないか。この映画では、ドイルへのオマージュのように、ホームズ・シリーズゆかりの登場人物や地名がたくさん登場する。
「青い鳥」「眠れる森」「緋色の記憶」など、多くの優れた作品を生み出した野沢尚は、NHKスペシャル・ドラマ「坂の上の雲」の初稿を残して自殺してしまう。作品は高く評価され、今後も期待がされていたのに、なぜ死を遂げたのかは余人の知るところではない。しかし、きっちりと構成された職人芸的で、しかもなお透明感と奥行きのある作品世界は、今後も生き続けるであろう。
遠藤周作の芥川賞受賞作品「白い人」を、平幹二朗が朗読したCDを聴く。ナチスの侵攻前後のリヨンを舞台に、放蕩な父と敬虔なプロテスタントを母に持つ主人公の独白を通じて、悪意と神の存在との相克を描いた作品。
CD3枚組で、3時間近い朗読であるが、一時も飽きることはなかった。重みのある声で、人の深奥に踏み込む作品世界を明確な輪郭を伴って語っている。
松本清張の短編小説「愛犬」「足袋」を、山崎努が朗読したCDを聴く。淡々とした語りだが、構成のしっかりとしたストーリーに引き込まれる。
名優の朗読に、センスのないヘタな音楽はいらないと感じる。余分な音楽を付けず、ただただ朗読をじっくりと聴かせてほしい。
「私心を去って自分をむなしくしておかなければ人は集まらない。人が集まることによって智恵と力が持ち寄られてくる。」
司馬遼太郎の「竜馬がゆく」は、明治維新の成立に影響を与えた坂本竜馬の生涯を、鮮やかに描いた小説。
「筆者は、この人物を通して、幕末の青春群像をかいている。坂本竜馬をえらんだのは、日本史が所有している「青春」のなかで、世界のどの民族の前に出しても十分に共感をよぶに足る青春は、坂本竜馬のそれしかない、という気持ちでかいている。」
あとがきに書かれたように、著者の思い入れが強く感じられる作品であり、表現も生き生きとしている。混沌に満ちた幕末の世で、心地よく吹く風のように生き、多くの人々に影響を与えた竜馬の姿が実に魅力的である。
「世界の海援隊でもやる」
海の彼方に思いを馳せつつ、周りの人々を大切にし、大きな仕事をなす姿は、ひとつの理想のリーダー像である。
2010年、視野の広さと懐の深さがより必要と感じる今、最初に掲げたい作品。
1日1作。毎日ひとつ何かを紹介する試みを続け、4年5ヶ月になった。2009年に記した中での、ベストを振り返る。
小説 : 宮城谷昌光 「楽毅」
「楽毅」は、内容の濃密さと、巻が進むにつれて深みが増していく凄さに感嘆した作品。
他にも 「赤ひげ診療譚」、 「胡蝶の夢」、 「箱根の坂」 など、ベストに掲げたい小説はいくつもあった
数学書 : 「素数に憑かれた人たち」
リーマン予想を、数学の近代史とからめながら解説した、奥行きのある本。
クラシック : ムラヴィンスキー指揮「チャイコフスキー交響曲第5番」
ムラヴィンスキー指揮のチャイコフスキー交響曲4番、5番、6番は、底知れぬ深淵をたたえた演奏。
ドラマ : 「坂の上の雲」
日本映像界の悲願が達成された。明治期の日本をじっくりと描く。来年の第二部、再来年の第三部にも期待。
邦画 : 「沈まぬ太陽」
覚悟を据えて映像化した制作者に敬意をこめて掲げたい。
洋画 : 「WALL・E/ウォーリー」
台詞なしで雄弁に語る前半と、賑やかに展開される後半の対比が興味深かった。
レミーのおいしいレストラン、ルイスと未来泥棒、ファインディング・ニモなど、ディズニー・アニメの良作に多く出会えた。
コミック : 「キャプテン」
何十年ぶりかに読んだが、名作は色あせない。アニメもたいへん良い出来映えであった。
アニメ : 「プラネテス」
原作も素晴しいが、内容をふくらませ見事なまとまりをもったストーリーと映像美に結実させたアニメスタッフの力量に感服。
教育: 「高校生のための現代数学講座」
東京大学玉原国際セミナーハウスでの体験は、今後も大きな財産になるだろう。真剣な眼差しの高校生、若き教員の取組み、献身的な大学の先生方の姿勢は印象に残り続けるだろう。
科学:「スーパーカミオカンデ」
飛騨のスーパーカミオカンデを見学できたことは、今年最も実りあるイベントであった。子どもたちにも本物を見せることができて本当に良かった。
2009年は、科学と社会を共に見据える体験が多くできた。2010年の新たな出会いに期待したい。
歴史のうねりの中で、人々が自らの役割を意識し、突き進んだ「明治」時代を描く「坂の上の雲」。第1部の最後となる第5話では、日清戦争後の19世紀末、秋山兄弟や正岡子規の姿を通して、時代の空気を感じさせる。
アメリカで海軍の研究を進める秋山真之、ロシアに留学し、その国力を目の当たりにする広瀬武夫、陸軍乗馬学校で騎兵隊を育てる秋山好古。日本の将来を背負った若者たちの凛とした言動が心地よい。
旅をする正岡子規の姿が、日本の美しい風景と共に印象に残った。軍部の様子の合間に描かれる、叙情に満ちた子規庵での語らいの場面が、物語に絶妙の味わいを加えている。
明治時代の日本人の矜持と志、品格、懐の広さ。その美質をあますところなく映像化し、観る者に勇気を与えてくれるドラマとなっている。次回放送は1年後だが、その間の長さが気にならないのは、作品の持つスケールの大きさゆえだろう。
文藝春秋増刊「坂の上の雲」と司馬遼太郎は、中身が濃い企画号。冒頭、日清・日露戦争当時の写真が眼を引く。特集「『坂の上の雲』を私はこう読んだ」では、塩川正十郎、寺島実郎、安藤忠雄、篠田正浩、武田鉄矢など、各界の人々がその思いを綴っている。いかに多くの層に影響を与えた作品であったかが伺える。
司馬遼太郎自身が「坂の上の雲」について語った講演も実に興味深い。日清・日露戦争を検証した座談会、主要人物事典などを載せ、作品に描かれた時代を知る多くのきっかけを与えてくれる。
司馬遼太郎の「胡蝶の夢」では、蘭学の広がりが、江戸身分制社会を突き崩す一因となった様が丁寧に描かれている。しかしそれ以上に、松本良順、島倉伊之助、関寛斎、三人の生き方が印象的で、物語の終盤では、叙情の波が胸中におしよせてきた。
「西洋医学」の徒の生涯をたどりながら、幕末から明治へのうねりと学問の有り様を、練達の筆で情感豊に浮かび上がらせた名作。
「人間とは、生命を維持するだけの存在であるかどうか」
一橋慶喜、近藤勇の主治医となった松本良順、語学の天才でありながら、人間関係の能力が欠如している島倉伊之助、医療と社会についての思索を深めていく関寛斎。長崎でポンペの元に学んだ三者の生き様を辿りながら、幕末の諸相を重層的に描く第3巻。
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